企業の生産マインドに変化?新型コロナ感染再拡大への懸念
「2020年12月の生産予測調査」から探る
経済産業省では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べている。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査している。
今回は、昨年12月初旬に調査した12月と本年1月の生産計画の状況と、12月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介する。
昨年12月の生産計画とその補正値
昨年12月の生産計画は、季節調整済指数で前月比マイナス1.1%の低下を見込むという結果になった。この計画どおりに生産されれば、昨年12月の鉱工業生産の実績は、2か月連続の前月比低下となる。
本年1月の生産計画は、この12月の計画から7.1%の上昇という計画になっている。
なお、今回の調査結果については、昨年12月当初の生産計画に基づくものであるため、12月上旬以降の新型コロナウイルス感染症などをめぐる情勢変化の影響は十分には織り込まれていない。そのことに留意して今回の調査結果をみる必要がある。
毎月、生産計画に対して生産実績は下振れする傾向にある。そこで、調査月の生産計画については、生産実績との間で生じる「ずれ」を統計的に推計し、補正計算を行っている。今回、昨年12月の見通しについて計算したところ、12月は、前月比マイナス2.3%程度の低下になるという結果だった。
生産計画の伸びを当てはめた鉱工業生産のグラフ
生産計画の伸びを1月までの鉱工業生産指数に当てはめてグラフ化すると下のようになる。
昨年11月の鉱工業生産指数実績(確報)は94.7であるため、調査結果の伸び率マイナス1.1%をそのまま当てはめれば、昨年12月の指数水準は93.7となる見込みである。
さらに、本年1月の生産計画は、前月比7.1%上昇の見込みであることから、仮に12月の生産が計画通りであったとすると、1月の指数水準は100.4となる。
ただし、生産計画に対し生産実績は下振れするという傾向的なバイアスがあるため、このバイアスを過去の傾向に基づき補正すると、昨年12月の伸び率はマイナス2.3%程度となり、この場合、12月の指数水準は92.5と見込まれる。
また、本年1月の生産計画も同様のバイアスがあることを考えると、1月の指数水準は、調査結果より低下することが考えられる。
なお、冒頭述べたように、今回の調査結果には昨年12月上旬以降の情勢変化の影響は十分には織り込まれていない。このため、最近の感染症拡大の影響などにより、上の過去の傾向より生産が下振れするリスクに十分注意する必要がある。
生産計画の強気と弱気
生産計画を、前年同月の実績と比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかを判断する一つの目安となる。
昨年12月の生産計画を原指数で見ると、前年同月実績比プラス0.4%となり、11か月ぶりに前年同月実績を上回った。
生産計画は、昨年2月以降続いていた前年同月比マイナスが、今回、前年同月比プラスに転じたことから、企業の生産マインドは改善の動きにあると考えられる。
また、1か月前時点で調べた生産計画が、生産開始直前に調べた生産計画と比べ、どの程度変動したかを示す数値が予測修正率となる。
昨年12月の予測修正率はプラス0.7%と、2か月ぶりの上方修正となり、この数値からも、企業の生産マインドは改善の動きにあるものと考えられる。
生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでいる。この指標は、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量るために活用している。
この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向がみられている。
一方、予測指数の昨年12月調査結果では、アニマルスピリッツ指標は8.7と5か月連続でプラスとなった。月々の上下動をならしたトレンドでも大きくプラスとなっており、生産マインドには依然改善がみられる。
昨年12月調査では、強気の割合は1.2ポイントの低下となったことにより、アニマルスピリッツ指標は前月から低下となった。ただし、強気の割合は33.0、弱気の割合は24.3と、5か月連続で強気が弱気を上回り、アニマルスピリッツ指標はプラスとなっている。
6月以降、国内外での経済活動の回復が進んできていることで、需要も回復がみられ、企業の生産マインドもより改善したものと考えられる。
昨年12月の調査結果では、前年同月実績比はプラスに転じ、予測修正率やアニマルスピリッツ指標もプラスとなっていることから、企業の生産マインドは改善の動きが続いているとみられる結果となった。
他方で、今回の調査実施以降も、感染症は内外で再拡大し、本年1月にはわが国でも緊急事態宣言が再び発出されるなどの事態が生じている。こうした影響により、足下では企業の生産マインドにも変化が生じている可能性がある。生産の先行きや企業のマインドに関しては、本年1月以降の調査でも注意深くみていく必要がある。
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