政策特集「はばたく中小企業・小規模事業者」と描く未来 vol.5

さらなる飛躍をどう後押し 支援機関が語るコロナ禍のサポート

中小企業基盤整備機構関東本部 押田誠一郎企業支援部長


 「はばたく中小企業・小規模事業者」のさらなる飛躍を後押しするのが支援機関の役割である。地域密着で、あるいは伴走型で企業の成長ステージや直面する課題に応じたきめの細かい支援策を講じてきた支援機関だが、その活動にも新型コロナウイルスの感染拡大が影を落としている。コロナ禍にある企業とどう向き合うのか。現状および今後の支援への思いを中小企業基盤整備機構関東本部の押田誠一郎企業支援部長に語ってもらった。

さまざまな手法を模索

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、企業を直接訪問することが困難ないま、皆さんが直面するさまざまな問題にどう応えるか。2020年は試行錯誤を重ねた一年でした。私が所属する中小機構の関東本部は年間およそ200社以上の支援に携わっていますが、経済情勢が刻一刻と変化する時だからこそ、サポートの手を緩めてはならない。こう考え、昨年夏には静岡および山梨エリアに1名、新潟および長野エリアに1名の担当者を長期間出張させ、ここから近隣地域の企業を訪問するサテライト体制の構築やオンライン相談の拡充にも取り組んできました。

東京・虎ノ門にある中小機構本部


 多くの企業がコロナ禍のまっただ中にあるのはまぎれもない事実ですが、同じ業種でもターゲットとする顧客層や市場によって実情が異なる点に目配りをする必要を痛感しています。インバウンド需要の消失や移動自粛に伴い宿泊や外食産業の苦境が取り沙汰されますが、これら産業には、さらに多くの業種が関わりを持っており、それぞれが苦境を乗り越え、「ウィズ・コロナ」「アフター・コロナ」を見据えた戦略を打ち出さなければなりません。土産や贈答用がメインの菓子メーカーなら、日常遣いや「おひとりさま」といった顧客を獲得するための商品や製法の開発、販路開拓に取り組むことで活路が拓けるかもしれない。私たちは新たなビジネスモデルを打ち出すうえで有効な支援メニューを用意し、企業に伴走して支援していく必要性をあらためて感じています。

DXとどう向き合う

 これまでのビジネスモデルや業務の進め方を見直し、新たな価値を創造する上でデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が叫ばれています。もちろんDXにまつわる支援は重要との認識を持っていますが、個人的にはDXという言葉ばかりが先行し、中小企業にはその意義が分かりにくくなっているような気がします。私たちの支援現場では、あえて「DX」を前面に打ち出さず、生産性改善やIT化といった観点から各社の取り組みを後押しするケースもあります。DXはハードルが高いと感じていてもデジタル技術の活用に可能性を感じている企業は決して少なくなく、例えば中小機構が昨年本格的にスタートした
IT経営簡易診断は、コロナ禍にもかかわらず、むしろコロナ禍だからこそかもしれませんが、多くの問い合わせを頂いています。これは専門家との面談を通して、経営や業務上の課題を全体最適の視点から整理し、IT活用の可能性を無料で提案するものです。2019年3月に運用開始、同年12月にサイトリニューアルした支援メニューここからアプリは、業種や目的に合わせた最適なアプリを探すことができるサービスです。販路拡大や新たな決済手段の導入など実例を紹介していることも、IT活用に踏み出すきっかけとなっているのかもしれません。
 AI(人工知能)の活用も同様です。すべての企業がAIから独自開発するわけではありません。多くはAI機能を搭載したシステムをカスタマイズして導入しています。業務効率化や利便性の向上につながるシステムをストレスなく使いこなすことができるよう、最新の情報提供も重要な役割であり、それが中小企業に対するDX支援につながると考えます。

必要な情報をタイムリーに

 中小企業に限らず、世界の企業を取り巻く環境はこの1年で激変しました。そして、いまなお、その先を展望できない日々が続きます。だからこそ、これまでの手法にとらわれず私たち自身も変化をいとわず、必要な情報をタイムリーに提供する役割が問われていると受け止めています(談)。