統計は語る

四半期ベースでは大幅上昇の全産業活動指数

2018年10-12月期 リーマン・ショック後初の106台に


  2018年12月の全産業活動指数は、前月比マイナス0.4%と2か月連続の低下、指数値は105.8となった。10月は前月比2.2%と、今基準内(2008年1月~)では2番目となる極めて大きな伸びだった。これを踏まえれば、ここ2か月の動きは前月比連続低下だが、この間の低下分は10月の大幅上昇分の半分に満たないものであり、上昇の勢いは減衰したとはいえ、全産業ベースの活動自体は引き続き堅調だったといえるだろう。
 下の図で傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、7月以降は低落傾向にあったが、10月の好調な動きにより上昇に転じ、以降、一定度の活動水準を維持した11月、12月の動きにより速いテンポで復調、高い活動域にあることがみてとれる。

 第4四半期(10~12月期)では、前期比1.0%と2期ぶりの上昇、荒天等に見舞われた影響もあり低調だった第3四半期の低下分を補う以上の上昇幅となった。指数値は106.2と、リーマンショック以降では初めてとなる106台の水準に復帰した。
 2018年通年では、前年比1.0%と7年連続の上昇、指数値は今基準内では最高位となる105.6に到達している。

鉱工業生産とサービスは連続低下ながらも

 12月の結果を産業別にみると、3活動すべてが低下となった。弱含みで推移している建設業活動は前月比マイナス2.1%の低下と再び低下に転じた。鉱工業生産は前月比マイナス0.1%、サービス産業活動は前月比マイナス0.3%といずれも連続低下だった、10月の大幅上昇分からみればここ2か月分の低下幅は小さいものであった。
 なお、全産業活動の12月前月比マイナス0.4%のうち、サービス産業活動のインパクトがこの半分超を占めている。

 第4四半期(10~12月期)では、建設業活動は2期連続の前期比低下だったが、鉱工業生産とサービス産業活動はともに2期ぶりの上昇で、第3四半期の低下分を上回る大きな上昇幅だった。特にサービス産業活動は、今基準内最高位の指数水準を記録し、全産業活動の前期比1.0%の上昇幅のうち8割程度のインパクトと、全体の上昇に大きく寄与した。

牽引役となった卸売業の動向は

 ここ2か月の全産業活動は前月比連続低下だったが、第4四半期でみれば、前期比大幅上昇で、指数値はリーマンショック後では初となる106台の水準に達するなど好調だった。この上昇に最も寄与したのはサービス産業活動であり、なかでも卸売業の活発な活動が強く影響した。また、前期第3四半期の全産業活動は低下だったが、この動きに最も寄与したのは低調なサービス産業活動であり、このうち卸売業の不調が大きく響いた。

 この直近2期の全産業活動の上昇・低下の動きに大きなインパクトを与えた卸売業について、このところの輸出入動向とあわせてみてみよう。
 平成26年商業統計表によれば、法人組織の卸売事業所の年間商品販売額に占める直接輸入仕入分の割合は8.4%、直接輸出販売分の割合は4.9%となっている。水際で自ら直接に輸出入する割合は商品販売額全体の13%程度ということになるが、中間卸売業者が企業間を仲介して取扱う輸出入品の国内流通分を考慮すると、もう少し大きな割合となると考えれる。
 以下のグラフは、先に公表された「第3次産業活動指数」のうち卸売業活動の季節調整済指数と、「貿易統計(財務省)」の輸出数量指数、輸入数量指数(ともに総合)を、独自に季節調整を施して試算した同指数、さらにこの輸出、輸入の両季節調整済指数を、前記の直接輸出と直接輸入の割合を重みとして加重平均した、卸売業直接輸出入数量指数(試算値)である。

 これをみると、卸売業活動指数と卸売業直接輸出入数量指数(試算値)の後方3か月移動平均値(各色点線プロット)において、①2017年後半からの上昇局面、②2018年年央からの低落期、③同年10月以降の上昇期と、動きが近しいものとなっている。
 卸売業活動指数の動きを、国産品の国内流通分は考慮せず、輸出と輸入に特化してあわせてみれば、①2017年後半の卸売業活動の上昇局面においては、輸出品・輸入品取引ともに順調、②2018年年央から秋口にかけての卸売業活動の低調期においては、輸出取引の不調、③同年秋口以降の卸売業活動の復調期においては、順調な輸入品取引、輸出品取引の若干の持ち直し、などということも推測の一つとして成り立つのかもしれない。

基調判断は据え置き

 2018年12月の内訳3活動は、内訳3活動すべて低下だった。ただ、鉱工業生産とサービス産業活動は2か月連続の低下とはいえ、10月の大幅上昇分からみればここ2か月通しての低下分は決して大きなものではなく、結果、第4四半期は大幅上昇で、低調だった第3四半期から復調している。
 各指数の基調判断は、鉱工業生産は「緩やかに持ち直している」、サービス産業活動は「持ち直しの動き」と、ともに10月に上方修正した判断を据え置いている。他方、建設業活動は、12月の前月比は11月の上昇幅以上の低下幅で、依然として「弱含みの動き」にあるといえる。

 全産業活動全体では、12月は11月に続く前月比低下と、好調だった10月に比べれば足踏み感は否めないが、指数値でみれば、活動が活発だった第2四半期と同等の水準域を維持している。また、第4四半期は前期比大幅上昇で、リーマンショック後では初めて106台の高水準に復帰している。このほか、3か月移動平均で測る「すう勢」も、上昇方向にある。
 よって、2018年12月の全産業活動は、「緩やかな持ち直しの動き」とし、基調判断は据え置いている。

【関連情報】
2018年12月の全産業活動は前月比連続低下も、第4四半期は大幅上昇、リーマンショック以降で初となる106台の指数水準に復帰。基調判断は「緩やかな持ち直しの動き」に据え置き。

全産業活動指数 調査結果概要