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CXって何?~知っておきたい経済の基礎知識

2024年6月、経済産業省はグローバル競争時代において日本企業が求められるCX(コーポレート・トランスフォーメーション)について報告書をまとめました。そもそも「CX」とは何か、解説します。

CXとは

CXとは、コーポレート・トランスフォーメーションの略。日本語では企業変革を意味します。経済産業省の報告書では、特に地域や事業の多角化度が進み、経営の複雑性が高い企業において必要となる変革を指しています。企業のパーパス・コアバリューを組織設計の思想の幹とし、その上でファイナンス機能、HR機能、DX機能という資源配分の中心となる3つの機能の役割を定義し直すことにフォーカスしています。

CXはなぜ必要か~Why CX?

この20年間、主要な製造業大手の海外売上比率は3割から5割に増え、従業員の6割が海外現地法人に所属するなど、ビジネスの最前線はグローバルに拡大している一方で、経営の複雑性は増し、利益率は米欧企業に後れを取っています。

日本を中心とした、阿吽の呼吸で集団的に意思決定を行う経営手法を、海外の現地法人に横展開するのは難しく、従来型の日本的経営のままでは、企業グループとしての一体的な経営を実現することは困難です。日本人/外国人の隔たりなく、優秀な人材を惹き付け、多様性を育み、イノベーションを創出していくためには、従来の日本型の企業経営システムそのもの、いわばOS(コンピュータに必要不可欠な基本ソフトウェア)の変革を更に推し進めていくことが必要です。

主要製造業企業の海外売上比率×営業利益率。日本の主要メーカーは海外売上比率50%超がほとんどだが、海外売上比率が高くなると利益率のばらつきが大きくなる傾向にある。海外市場獲得を利益につなげられている企業とそうでない企業の差が拡大している。(SPEEDAから経済産業省作成。‘経済産業省グローバル競争力強化に向けたCX研究会 報告書’より)

CXをどう進めるか~How CX?

まず、組織の幹となるパーバス・コアバリューを持ち、組織に浸透させることが重要です。企業の存在理由と価値観・信条は、自社と他社の違いを説明する最大の差別化要因です。これらは、海外現地法人を含め“ワンカンパニー としていくための最も基本的な原動力となるだけでなく、グローバルでの人材獲得競争の求心力の源泉になります。

その上で、組織のコア機能であるファイナンス機能、HR機能、DX機能の変革を進めることが必要です。

ファイナンス機能は、財務統制や過去の実績報告にとどまらず、ビジネスパートナーとしての価値創造や未来予測に基づく経営意思決定への貢献まで、担うべき役割が拡大しています。経営企画部門と経理財務部門のようなコーポレート内での分断、コーポレートのファイナンス組織・事業部門間の分断、グループ企業内での仕組みの分断を乗り越え、データに基づく経営を実践するために、グローバルで横串を通した共通基盤を整備することが求められています。

HR機能は、国や人種の違いを超えて、組織のパーパスとバリューを軸に多様な人材を惹き付け、イノベーションを生み出す組織へと企業を導く上で、重要な使命を担っています。コーポレートのHR組織・事業部人事間での分断、グループ企業内におけるHRの仕組みの分断を乗り越え、日本企業では曖昧にされがちなポストの責任と権限、業績目標と評価基準を明確に言語化し、報酬体系・水準を透明化することが求められています。

DX機能は、組織全体のビジネスプロセスの革新をリードし、デジタルを通じて新たな価値を創出する役割を担っています。ビジネスプロセスの分断、コーポレートのDX機能・事業部門間の分断、グループ企業内のシステムの分断を乗り越え、全社的なDXを推進することが求められています。

CXは日本の強みを利益へとつなげる処方箋

CXは、経営資源の可視化とデータに基づく予測をもとに、機動的に再配分を行う仕組みを作るためのアクションであり、日本の持ち前の現場力や優れた製品・サービスが持つ付加価値を利益に変えていくための有力な処方箋です。経営と現場をシームレスにつなぐ仕組みができれば、日本企業の潜在能力が解放され、その競争力が飛躍的に高まる可能性もあります。CXを梃子(てこ)に、日本企業のグローバル競争力が本質的に向上することを期待しています。

製造産業局 総務課/製造産業戦略企画室

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