8月の鉱工業生産は、石油・石炭製品工業などが上昇、自動車工業などが低下。基調判断は、「一進一退」に据え置き
8月生産は前月比横ばい
2023年8月の鉱工業生産は、季節調整済指数103.8、前月比横ばいとなった。
これまでの生産の動向については、2月から4月にかけて、部材供給不足の影響緩和などを受けて、自動車工業などが上昇したことなどから、全体として上昇した。
その後、5月は、それまでの上昇の反動に加えて、部材供給不足の影響などを受けて低下したものの、6月は、堅調な自動車工業の影響などを受けて上昇し、7月は、生産用機械工業の受注減少などの影響により低下するなど、一進一退の動きとなっていた。
こうした中、8月は、石油・石炭製品工業などが上昇する一方で、自動車工業などが低下したことなどから、全体として横ばいとなった。
5業種が前月比上昇、10業種が同低下
8月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、5業種が上昇、10業種が低下という結果だった。
8月は、石油・石炭製品工業などが上昇する一方で、自動車工業などが低下したことなどから、全体として横ばいとなった。
上昇寄与度の最も大きかった石油・石炭製品工業は、ガソリンや灯油などが主な上昇要因となっている。ガソリンや灯油については、生産設備の定期修理の完了などを受けて、上昇したものと考えられる。
一方で、低下寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車やシャシー・車体部品などが主な低下要因となっている。普通乗用車については、工場の稼働停止などを受けて、低下したものと考えられる。
出荷は2か月ぶりの上昇
8月の鉱工業出荷は、季節調整済指数103.2、前月比0.1%と、2か月ぶりの上昇となった。
業種別にみると、全体15業種のうち、7業種が上昇、7業種が低下、1業種が横ばいとなった。
8月は、電気・情報通信機械工業などの業種が上昇したことなどから、全体として上昇した。
上昇寄与度の最も大きかった電気・情報通信機械工業は、セパレート形エアコンや自動車用電気照明器具などが主な上昇要因となっている。セパレート形エアコンについては、気温が高かった影響などを受けて、自動車用電気照明器具については、自動車の販売の好調などを受けて、上昇したものと考えられる。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、建設財が前月比マイナス1.7%、非耐久消費財が同マイナス0.4%と低下する一方で、耐久消費財が同3.9%、生産財が同0.6%、資本財(除.輸送機械)が同1.5%と上昇した。
在庫は4か月ぶりの低下
8月の鉱工業在庫は、季節調整済指数104.6、前月比マイナス1.7%と、4か月ぶりの低下となった。
業種別にみると、15業種のうち、10業種が低下、5業種が上昇となった。
寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や普通トラックなどが主な低下要因となっている。
在庫率は2か月ぶりの低下
8月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数104.6、前月比マイナス1.7%と、2か月ぶりの低下となった。
業種別にみると、15業種のうち、9業種が低下、6業種が上昇となった。
在庫循環図をみると、2021年第3四半期までは、「在庫積み増し局面」にあったが、第4四半期には、「在庫積み上がり局面」に達しており、2023年第3四半期(速)まで継続している。これまでの部材供給不足などによる生産減少の影響などが含まれているが、概ね「在庫積み上がり局面」に位置しているものと考えられる。
8月の生産の基調判断は、「一進一退」に据え置き
8月の鉱工業生産は、前月比横ばいとなった。
これまでの生産は、2月から4月にかけて、部材供給不足の影響が緩和されたことなどを受けて、自動車工業を中心に上昇していた。
その後、5月は、これまでの上昇の反動などを受けて低下したものの、6月は、堅調な自動車工業などの影響で上昇し、7月は、生産用機械工業の受注減少などの影響により低下するなど、一進一退の動きとなっていた。
そうした中、8月は、石油・石炭製品工業などが上昇する一方で、自動車工業などが低下したことなどから、全体として横ばいとなった。
また、先行きに関しては、企業の生産計画では、9月と10月はともに上昇となっており、9月の補正値は前月比3.7%の上昇を見込んでいるものの、10月については、上昇が6業種、低下が5業種となっており、生産計画が生産実績よりも上振れする傾向も考慮すると、一進一退の状況にあると考えられる。
こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の8月の基調判断については、「一進一退」に据え置く。
なお、今後は、世界経済の下振れや物価上昇の影響などについて、注視していく。