夢の新素材カーボンナノチューブ ついに実用化へ
1991年に日本で発見されたカーボンナノチューブ(CNT)は、軽量、高強度かつ高伝導率・高熱伝導率などの優れた特長を持つことから夢の新素材として期待され、長年に渡り研究が行われてきた。このたび、産業技術総合研究所(産総研)では共同研究先の日本ゼオン、サンアローとともに、NEDOプロジェクトの成果を用い、画期的な生産方法であるスーパーグロース法で合成されたCNTを用いて、配管や容器のシール部材として使われるOリングの実用化(2018年10月から製品販売開始)に成功した。
画期的な生産方法
これまで単層のCNTは合成効率が高くなく量産が困難であり、実用に向けた製品開発は進展していなかったが、産総研では2004年にスーパーグロース法という従来の数百倍の成長効率の画期的な生産方法を確立し、量産化に向けた課題を克服した。
産官学連携の成果
産総研はさらに産官学連携を進め、量産技術を開発するため実証プラントを建設し2009年には約1万7000倍の生産能力を達成し、CNTの応用製品の事業化をサポートしてきた。産総研で確立したスーパーグロース法で生産したCNTは、従来方法に比べて生産量が増大しただけではなく、高品質かつ扱いやすいものになったため、企業においても本格的な開発段階に乗せることができた。2015年には連携企業で量産工場を建設し、稼働も開始している。
スーパーグロース法によるCNTを用いた製品化第一号
このスーパーグロース法によるCNTを用い、配管や容器のシール部材として使われる「Oリング」にCNTを応用させ、市販品と同じ材料と比較して3.5倍の耐久時間を有するなど、長寿命・高耐熱・高耐圧といった優れた性能を持つ製品第一号が世に出るに至った。これにより、該当部品の交換頻度の引き下げや、管理コストの削減が実現する。今後もエネルギー、エレクトロニクス、機能材料などの多岐にわたる分野での応用に期待したい。
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