世界レベルのシール印刷技術、お客様へのソリューション提供で飛躍を図る
丸信 福岡県久留米市
商社機能に加え、メーカー業にも乗り出す
1968(昭和43)年の創業で、もともとは全国有数の椎茸問屋の木箱製造を専門に手掛けていた。現在のようにシール印刷や紙箱印刷、食品業界向けソリューションの提供を展開するにいたった経緯について、平木洋二・代表取締役社長は、こう説明する。
「木箱製造そのものは当初好調だったのですが、やはりそれだけでは会社としての成長がむずかしいということで、新規事業を検討した末に、メーカーから仕入れた包装資材をスーパーマーケットや食料品店などに納める商社としての業務を始めました。ただ、メーカーから同じものを仕入れて販売しているだけでは、競合他社との差別化が図れないことからメーカー業への進出を考え、1970年代になって色々な商品にシールが貼られるようになったことに目をつけ、シール印刷を始めたのです。それが軌道に乗ったあとの1990(平成2)年に、経営が苦しくなった印刷会社を引き継ぐ形で、紙箱印刷を始めました」
メインの事業となるシール印刷では、デザインの良しあしが重要視されることから、デザイン部門に、芸術系大学の学生を積極的に採用。一方で、品質を保証する技術力の面においては、印刷技術の高さを競う世界ラベルコンテストの2019年大会において、最高賞の「Best of the Best」を受賞したのに加え、今年秋に開催が予定されている技能五輪国際大会の印刷部門の日本代表に、社員の甲斐田光さんが選ばれるなど、第三者機関から高く評価されている。
人材採用、コンサル導入でソリューション事業を強化
全体の売り上げでは現在、商社としての包装資材の卸販売が約50%、シール印刷が約30%、紙箱印刷が17、8%という比率だが、これら従来からの事業に加え、最近力を入れているのが、ソリューション事業だ。
「シールやパッケージをお客様にご提供する過程で、製品はできたけれど、どうやって販売すればよいか、わからないとか、マーケティングやブランディングのことがよくわからない、といった声をよく聞きます。そうしたお客様の悩み事を解決することで、さらにお役に立ちたいと考え、10年ほど前から事業化しました。
実際には、その事業のための採用とか、コンサルタントに加わってもらうとか、さらには外部講師を招いての社員教育を行うなど、さまざまな手を打ってきました。これまで、求人情報サイトの代理店として、食品流通会社の採用をお手伝いしたり、国際的な衛生管理規格であるHACCP(ハサップ)認証取得に向けてのサポートをしたり、着実に実績を重ねています」(平木社長)
企業保育で地域の問題解決に貢献
地域の社会問題解決にも積極的に取り組んでおり、2018年11月には、「丸信インターナショナル保育園」を開園させた。現在、定員の30人はほぼいっぱいで、ネイティブの職員が英語で保育を行うと同時に、病児保育も手掛けている。
「地域の貧困問題の解決のために、シングルマザーのお子さんに食事を提供し、勉強を教えているNPOを支援したり、代表の方からお話を聞いたりしているうちに、シングルマザーの貧困の原因の一つに、病児保育の受け皿がないことに気がついたのです。受け皿がないために、仕事を休んだりしなくてはならない。私どもは地方に立地する企業なので、採用が容易ではありません。自分たちのためにも、地域のためにも、住みやすい町でないと、持続可能性を実現できないと思い、企業保育に取り組むことにしました」(平木社長)
「スコープ2」レベルでのカーボン・オフセットも実現
同時に、環境対策への取り組みにも力を入れており、電力会社との契約を再生エネルギー由来のものに変更したのに加え、印刷物を乾かす際に使うUVランプをLEDランプに交換、節電機能を備えた機械も導入した。それでもCO2をゼロにできない部分については、地元・久留米市の森林育成プロジェクトに資金を拠出し、企業の直接排出分だけでなく間接排出も含めた、環境省の定める「スコープ1」「スコープ2」でのカーボン・オフセットを昨年度までに実現した。
今年より、よりよい製品、サービスを次の年に提供したい
創業者の孫で、3代目にあたる平木社長は、首都圏の理科系大学で物理学を専攻し、エンジニアを目指していたものの、「高い学費を出してもらったのだから恩返ししよう」と思い、跡を継ぐことにしたという。卒業後、4年間の保険会社勤務で実務の経験を積んだあと、丸信に入社。13年前に社長に就任した。この先の丸信について、平木社長は、次のように話す。
「売り上げといった数字とは別に、毎年目標として掲げているのは、今年より、よりよい製品、サービスを次の年にお客様にご提供するということです。東京と千葉に拠点はあるものの、その先にも拠点を設け、全国展開をしていきたいです。それだけの競争力はあると思っています。東京、大阪といった大消費地に1日で製品を供給できるところに製造拠点がないと太刀打ちできないので、シールや紙器を作っている企業とご縁があれば、アライアンスを組んでいければとも考えています。
それとソリューションの部分を、本業にしている企業に負けないくらい、さらに磨きをかけていきたいですね。先行き不透明な時代で、急激な経済成長もそう期待できない中、いろいろな問題に直面するお客様から、お声がけをいただいた時に、『こんな解決策があったのか。丸信に頼んでよかった』と喜んでもらえる企業になりたいと思っています」
【企業情報】
▽所在地=福岡県久留米市山川市ノ上町7-20 ▽代表取締役社長 平木洋二氏 ▽売上高=103億3300万円(2022年2月期) ▽創業=1968(昭和43)年