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IoTは食品ロスを減らせるか?


 「つくる責任、つかう責任」―。生産と消費の無駄をなくすことは、SDGsの1つにも数えられる重要なテーマ。課題解決には私たち1人1人の購買・消費行動が試されます。国内では、賞味・消費期限切れなどによって企業や家庭で廃棄される食品は年間570万トンにも上る中、電子タグやスマホアプリといったIoTの力で私たちの行動を少しだけ変え、社会をより持続可能にする、そんな実験が始まっています。

食品の鮮度が見える

 2021年に経済産業省が行った実験では、青果物などの生産者が、電子タグを商品に貼り付け、温湿度ロガーとあわせて梱包して出荷。ネットスーパーでの販売を経て家庭で消費されるまで、商品がたどる過程をトレースします。
 電子タグと温湿度ロガーの情報があれば、商品の鮮度が一目瞭然。鮮度に応じた価格設定が可能になり、「今週いつ食べられるかわからないから長持ちする鮮度の高いもの、その日に食べきるものは鮮度が低くても価格の低いものを」といったように、鮮度と価格のバランスを踏まえた購買行動につながりました。鮮度の低いものも購入された結果、スーパーの売り上げも向上しました。

冷蔵庫の中も見える

 電子タグと温湿度ロガーで取得した情報は、商品の購入時に消費者のスマホアプリとも連動。冷蔵庫の中の食材の有無と鮮度を知らせます。買い物の前に冷蔵庫を覗かなくても、「この食材は使わなきゃ」と気づいたり、明日明後日のレシピまで考えるようになった、という声も。

「もったいない」を超えて

 食品ロス削減は、私たち消費者の誰もが当事者として関わっていくべき課題。「もったいない」という啓発に賛同する方だけでなく、より多様な価値観を持つ消費者が一緒に取り組める仕組みはないか。これが、2022年1月に始まった次の実証実験のテーマです。
 青果物の産地出荷時に付けられた電子タグに、作り手のこだわりやおすすめレシピなど、店頭では得られにくかった情報を埋め込むことで、店頭のディスプレイや電子チラシを通じ、消費者がより多様な情報をもとに商品を選べる仕組みに。雪の下で育った今年の野菜は特に甘くて美味しいよ!なんて言われたら、思わず買ってしまいそうですよね。
 店頭では、賞味・消費期限に応じた、より細かな価格設定により、消費のスタイルに合った買い方を。期限情報のデータ化は、割引シールを貼る店舗スタッフの労力軽減など、店舗の在庫管理も効率化します。
 家庭では、スマホアプリが、冷蔵庫の残り物を使った栄養バランスのとれたレシピや足りない食材の提案、クーポンの配信をしてくれます。

 食品ロスを減らして、よりおいしく、お得に、健康に。
 IoTがそんな社会を実現する日も遠くないかもしれません。
 

経済産業省 消費・流通経済課

 
 
【関連情報】

◆令和3年度プレスリリース

IoT技術を活用した食品ロス削減に関する実証実験を行います(経済産業省)

フードチェーン3領域における食品ロス削減の実証実験について(株式会社日本総合研究所他)

◆令和2年度プレスリリース

電子タグ(RFID)を活用した食品ロス削減に関する実証実験を行います(経済産業省)

「鮮度の可視化と個別追跡管理」による食品ロス削減の実証実験について(株式会社日本総合研究所他)