9月鉱工業生産:3か月連続の低下も基調判断は据え置き
9月生産は3か月連続の前月比低下
2021年9月の鉱工業生産は、季節調整済指数89.5、前月比マイナス5.4%と、3か月連続の低下となった。
これまでの生産については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、2020年2月から5月にかけて急速に低下した後、6月以降は一転、回復基調が続いた。半導体不足などの影響から、2021年5月に大幅に低下したものの、6月は再び上昇に転じた。7月以降は再び低下し、9月は半導体不足に加えて、アジアでの感染症拡大に伴う部材供給不足などの影響により3か月連続の低下となった。
その結果、2021年9月の生産水準は、2020年8月(指数値88.3)以来の水準となった。
11業種が前月比低下、4業種が前月比上昇
9月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち11業種が前月比低下、4業種が前月比上昇という結果だった。
9月は、自動車工業を中心に、汎用・業務用機械工業をはじめ多くの業種が低下したことから、全体として低下した。
主な低下寄与業種についてみると、低下寄与の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や駆動伝導・操縦装置部品、自動車用エンジンなどが主な低下要因となっている。長引く半導体不足に加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けたアジア各国での経済活動制限などによる部材供給不足の影響などで7月から3か月連続で低下したものと考えられる。
また、低下寄与2位の汎用・業務用機械工業についても、3か月連続の低下となった。コンベヤや圧縮機などが低下要因となっている。コンベヤは国内向けの減少、圧縮機は海外向け納期の延期や前月からの反動減などにより、低下したと考えられる。
出荷は3か月連続の低下
9月の鉱工業出荷は、季節調整済指数86.5、前月比マイナス6.2%と、3か月連続の低下となった。
業種別にみると、全体15業種のうち、11業種が低下、4業種が上昇となった。
9月は、自動車工業を中心に、電気・情報通信機械工業を始めとした多くの業種が低下したことから、全体として低下した。
主な低下寄与業種についてみると、低下寄与の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や駆動伝導・操縦装置部品、小型乗用などが主な低下要因となっている。生産と同様に、長引く半導体不足に加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けたアジア各国での経済活動制限などによる部材供給不足の影響絵で、3か月連続で低下したものと考えられる。
また、低下寄与2位の電気・情報通信機械工業は、3か月連続の低下となった。リチウムイオン蓄電池やノート型パソコン、自動車用電気照明器具などが低下要因となっている。リチウムイオン蓄電池は、海外向けの減少などにより低下したものと考えられる。また、ノート型パソコンについては、世界的な半導体不足の影響などを受け、低下したものと考えられる。自動車用電気照明器具については、自動車工業と同様の理由で低下したものと考えられる。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、非耐久消費財が前月比0.7%の上昇、建設財が同1.4%の上昇であった。一方で、生産財が同6.3%の低下、耐久消費財が同32.8%の低下、資本財(除.輸送機械)が同4.7%の低下となった。特に耐久消費財は、普通乗用車などの大幅な低下を受けて、急速に低下した。
在庫は3か月ぶりの上昇
9月の鉱工業在庫は、季節調整済指数98.4、前月比3.7%と3か月ぶりの上昇となった。
業種別にみると、15業種のうち14業種が上昇、1業種が低下となった。
上昇寄与業種の中では、特に、電気・情報通信機械工業の低下寄与が大きくなっている。電気・情報通信機械工業では、生産が増加したものの、出荷は大幅に低下したことから、在庫が増加したと思われる。
在庫率は3か月連続の上昇
9月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数120.4、前月比5.9%と3か月連続の上昇となった。
業種別にみると、15業種のうち14業種が上昇、1業種が低下となった。
特に、自動車工業や電気・情報通信機械工業の上昇寄与が大きくなっている。
在庫循環図をみると、2020年第4四半期と2021年第1四半期は、「意図せざる在庫減局面」にあり、2021年第2四半期には、「在庫積み増し局面」に達し、第3四半期(速)も継続している。
ただし、生産前年同期比(横軸)については、2020年の生産水準が、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく低下していることから、その点には留意が必要と考えられる。
9月の生産の基調判断は、「足踏みをしている」で据え置き
9月の鉱工業生産は、前月比5.4%の低下となった。生産は、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年2月から5月まで低下が続いた後、6月以降は一転、回復傾向が続いていた。半導体不足などの影響から、2021年5月に大幅に低下したものの、6月は再び上昇に転じた。しかし、7月以降は再び低下し、9月は3か月連続での低下となった。
この背景として、9月の生産は、長引く半導体不足に加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けたアジア各国での経済活動制限等による部材供給不足の影響などから、自動車工業などで低下したことが考えられる。
一方、先行きに関して、企業の生産計画では10月と11月はともに上昇となっており、10月の補正値では前月比2.4%の上昇と予測している。均してみると、引き続き足踏み状態にあると考えられる。
こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の9月の基調判断については、「足踏みをしている」に据え置く。
なお、今後も変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や、半導体不足などの部材調達の困難化などの影響について、引き続き注視していく必要がある。
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