行政で広がる「デザイン思考」
近年、耳にする機会が増えている「デザイン思考」。ビジネスの文脈で使われることの多い言葉ですが、実は海外や国内の行政においてもデザイン思考をはじめとするデザイン手法の導入が広まりつつあることをご存じでしょうか。
デザイン思考が必要とされる背景
製品やサービスを使うユーザーを起点とするリサーチやプロトタイピング、異なる立場にある人々との共創といった特徴を持つデザイン思考。経済や社会、価値観や技術が大きく変化している中で、行政としても、提供する制度やサービスを人間性の観点から改善・創出していくことや、中長期的なビジョンを行政内外の多様な人々と共創することが求められています。
行政で進む政策×デザイン
早くから取り組みを推進してきた英国では、デザイン原則に基づく政府ポータルサイトの見直しや、当事者に徹底的に寄り添ったホームレス化防止策の立案など、具体的な成果を生み出しています。同様の動きは、デンマークや米国、台湾など、各国・地域で見られます。
日本でも、行政分野におけるデザイン思考の導入を推進する気運が高まっています。政府は、デジタル・ガバメント実行計画に基づき「サービスデザイン思考※」の導入を推進。自治体では、滋賀県や福井県などがデザイン思考を実践する組織を立ち上げ、取り組みを進めています。経済産業省では、今年「Policy Design School」を立ち上げ、職員がデザイン思考などを学ぶ機会を提供し、民間人材との共創を通じた政策立案プロセスを試行します。
※サービスデザイン思考・・・サービスの受け手側の立場を考慮した調査・分析から得られる利用者の「本質的なニーズ」に基づき、サービス・業務を試行錯誤しながら設計・開発する思考法。
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「デザイン思考」で未来を生み出す
「デザイン思考」のプロセスに正解はなく、まずは外部のユーザー視点から考えることもあれば、自分自身の内側に目を向けることから始める場合もあります。
「自分は何を成し遂げたいのか、それはなぜか」
「自分は誰の生活に課題を感じ、どんな常識を覆したいのか」
「実現したい未来に向けて、自分ができることは何か」
そのような問いを起点として、異なる立場の人々と議論し、新たな価値を生み出せるのも「デザイン思考」の側面です。社会が大きく変化する中、ビジネスでも、行政でも、未来をデザインする力が、今後より一層求められてくるのではないでしょうか。
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