統計は語る

“爆買い”再び?

訪日外国人の買物代指数が過去最高に


 訪日外国人の消費金額を、消費者物価指数を用いて実質指数化し、訪日外国人の国内での旅行消費の動向を指標化した「訪日外国人消費指数(TCI)」のうち、買物代指数の平成29年第3四半期の結果を紹介する。

4期連続で前期比上昇

 「爆買い」の影響により平成27年には大きな上昇をみせた買物代指数は、28年に入ってからは3期連続の低下となり、ようやく同年第4四半期に再び大幅な上昇に転じた。そこから翌29年第3四半期は前期比プラス8.0%と4期連続の上昇となった。

 29年第1、第2四半期の小幅な上昇に比べて、第3四半期の買物代指数はその上昇角度を拡大させ、指数値は504.0と、爆買いブーム下にあった27年第4四半期の指数値483.4を超え、過去最高記録をたたき出した。

 29年第3四半期の買物代指数の動きについて、「アジア」と「欧米」からの訪日客別に確認してみる。

 アジア指数は、指数値566.2、前期比プラス8.8%と4期連続の上昇となった。全体指数同様、27年第4四半期の指数値を超え、当期は過去最高の指数値だ。

 欧米指数は、指数値222.3、同マイナス3.6%と3期ぶりの低下となった。29年に入って好調に推移していた欧米指数だが、当期は一服といった様相だった。

                  

訪日外国人消費が落ち込み緩和

 続いて、国内の小売業活動に対する買物代指数の寄与(影響度)はどのようになっているかみてみよう。

 28年第3四半期以降、4期連続で上昇していた小売業活動だが、29年第3四半期は6期ぶりの低下となった。これに対する買物代指数の寄与は、小売業指数の前期比マイナス0.2%の低下に対し、プラス0.10%ポイントと上昇に寄与している。今期は、国内居住者の小売需要の不振を、訪日外国人の買物支出が補ってくれ、小売全体の前期比低下幅を緩和してくれたことになる。

 「爆買い」と言われた27年頃は、国内居住者の前期比低下が大きかった一方で、訪日客の買物支出が伸びており、否応なく訪日客の支出行動に目がいった。逆に、28年から29年前半は居住者の買物支出が伸びていたこともあり、訪日外国人の支出の寄与は目立たなかった。しかし、29年第3四半期は、国内居住者の買物支出が前期比マイナス寄与になったこともあり、その分、改めて訪日外国人の皆さんの買物支出への視線が熱くなるかもしれない。

             

「アジア」の寄与が大きい

 訪日外国人全体の買物代指数の変動に対する、「アジア」と「欧米」からのお客様の買物支出の影響度(寄与)をみてみよう。

 29年第3四半期の訪日外国人全体の買物代指数の前期比プラス8.0%に対し、アジア指数はプラス7.44%ポイントの上昇寄与、一方、欧米指数はマイナス0.24%ポイントの低下寄与となった。

 29年第1、第2四半期は、アジア指数と欧米指数の買物代指数への寄与には大きな差がみられなかったが、過去最高の指数値を更新した第3四半期の買物代指数の上昇には、アジアからのお客様の買物支出の拡大が大きく影響した。

                  

 こうみてくると、29年第3四半期の小売活動においては、国内居住者のマイナスを、訪日客、特にアジアからのお客様の買物支出のプラスがカバーしてくれていたという構造になる。さすがに、「過去最高となった買物代指数だけあるな」という感じだろうか。平成27年の爆買いの再来となるのだろうか、気になるところだ。
関連情報
ミニ経済分析「2017年第3四半期の訪日外国人消費指数の動きと上位5カ国・地域からの訪日客の消費動向」