60秒早わかり解説

電子レシートが資産価値を持つ時代へ

個人起点のデータ流通市場に可能性


 個人データを自己管理できるデータポータビリティ。私たちにとって、具体的にどのようなメリットがあるのだろうか。

電子レシート実験

 今年3月、福岡県にある実際の店舗において、電子レシートのアプリを使った実験を行った。600人弱の来店客にアプリを配って、実際に手元で操作してもらった。

「購入履歴をいただけませんか?」

 参加するユーザーには、様々な企業からオファーが寄せられる。その日に買った生鮮食料品のリストを、電子レシートアプリを通じて提供することで、素敵なレシピを勧められることもある。また、アンケートに答えることで、特別なポイントがもらえるかもしれない。

不安感を、安心・納得に変えられるか

 こうしたサービスに漠然とした不安を持つ方は多いだろう。しかし、この実験のポイントは、自分に関係する情報は、自分で管理した方が安心できるということに気づいてもらうことだ。ユーザーの抵抗感をなくすため、アプリを工夫して、名前や年齢などの提供範囲を簡単に設定できるようにもした。もちろん、特典が一切不要、という人は「情報をまったく提供しない」という設定もできる。

 その結果、買物に利用できるポイントを対価として、7割弱の実験参加者が住所や電話番号等を含む個人情報と購買履歴データを全て第三者へ提供することを選択した。購買履歴データなどを自分自身で管理し、プライバシー管理ツールが完備された環境が整えば、魅力的な対価を用意することで、個人を起点としたデータ流通市場が整備できる可能性が示された。

捨てられていたレシートが資産に

 今回は1つの店舗だけでの電子レシートの実験となった。アプリの使い勝手や、特典に応じてどこまでデータ提供に納得してもらえるか、などを細かく分析。この実験が今後の国内標準につながれば、消費者ひとりひとりが自分の個人データを、価値のある資産として、自分で管理しやすくなると期待している。

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買物レシートの電子化を通じたデータ利活用に関する実験を行いました~安心・納得してパーソナルデータを管理・提供できる環境整備を目指します~