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ピンポーン♪ 視覚障害者の安全と安心を守る音


 駅などの公共施設内でよく耳にする”ピンポーン”という音は、どのような目的があるのか。実は視覚障害者に対し、現在の位置、行きたい場所までの距離や方向、トイレ・エスカレーターなどの設備の状況を、音によって案内する「音案内」というものだ。

音案内の歴史

 “ピンポーン”の音案内が使われ始めたのは、昭和51年頃からである。当初は、視覚障害者に関連する施設の入口や点字図書館など、周辺への設置にとどまっていたが、徐々に不特定多数の人が利用する駅等の公共空間へと広がっていった。

音案内の問題

 普及してきた音案内だが、音の種類によっては、周囲の壁や天井などに反響し、どこで鳴っているのか分かりづらく、特定の騒音下で聞こえにくいといった難点があった。そこで音量を上げると、今度は音がうるさいとの苦情につながるという問題もあった。

問題の解決のために

 そこで、音響学の分野で知られる“ヒトの耳で音の位置を知るメカニズム”を調べ、さらに公共空間のような騒がしくて音が響く場所を実験室内に再現して、音の位置がきちんと分かるための条件などを調査した。これらを基に、音案内に必要な仕様をまとめ、国内規格である日本工業規格(JIS T0902)として制定した。

日本発「聞き取りやすい音」の国際規格が発行

 このJISを基に、日本が国際規格の提案を行い、2016年3月に国際規格(ISO 19029)が発行された。音案内は、視覚障害者・高齢者にとって、安全な移動の助けとなる。周囲の環境も配慮した日本生まれの「聞き取りやすい音」が、今後、国際規格の発行をきっかけに世界中に普及していくことが期待される。

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