統計は語る

8月のサービス産業活動 3か月連続で前月比上昇

基調判断も上方修正


 本年8月のサービス産業(第3次産業)活動指数は、指数値95.1、前月比0.8%と3か月連続の上昇となった。
 サービス産業活動は本年5月まで、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大し、緊急事態宣言が発出されたこともあり、大幅な低下が続いていた。その後、緊急事態宣言の解除などもあり、6月以降、上昇に転じている。6月に前月比9.0%と大きく戻した後、7月は前月比0.1%と、横ばいに近い小幅な上昇にとどまったが、8月は前月比0.8%と再び大きめの上昇となった。
 ただ、活動水準に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響が現れる前の本年1月以前と比べると、依然低い水準にとどまっている。

小売業、電気・ガスなど上昇

 8月の業種別の動きをみると、11業種中、6業種が前月比上昇、5業種が前月比低下という結果となった。
8月は、情報通信業、「金融業, 保険業」、卸売業などは低下したものの、小売業、電気・ガス・熱供給・水道業、不動産業などが上昇したことにより、第3次産業全体としては上昇することとなった。

 小売業に関しては、8月は前月比3.9%と、2か月ぶりの上昇となった。内訳業種をみると、織物・衣服・身の回り品小売業、飲食料品小売業、などもあり、いずれも大きく落ち込んでいたが、8月は一転、好天の日が多かったこともあり、7月の低下からの戻りでの上昇と考えられる。また、外食から内食へのシフトなど、対面型サービスなどからモノへの需要のシフトの影響も一部みられる。
 電気・ガス・熱供給・水道業は、前月比12.3%と、2か月ぶりの上昇となり、上昇幅も今基準内で最大となった。内訳業種では特に電気業が寄与した。7月は先にも述べた豪雨の影響もあり、気温も平年比で低くなっていたところから、8月は一転、厳しい暑さが続いたため、冷房需要が大幅に増加するなどの影響があったと考えられる。
 不動産業は、前月比3.7%と、4か月連続の上昇となった。特に「建物売買業, 土地売買業」や「不動産代理業・仲介業」が上昇した。不動産取引に関しては、5月まで感染症の影響でマンション分譲業やマンション売買仲介等で活動水準が大きく落ち込んでいたが、6月以降、そこからの戻りが続いていることや、事業者がお盆休み期間中も販売活動を積極的に行っていたことなどが上昇要因として考えられる。

「対個人」「対事業所」ともに回復基調

 サービス産業活動指数は、大きく「広義対個人サービス」と「広義対事業所サービス」に分けることができる。
 8月の対個人サービス活動指数は、指数値93.9、前月比1.5%と2か月ぶりの上昇だった。対事業所サービス活動指数は、指数値96.6、前月比0.2%と3か月連続の上昇だった。感染症の影響により、対個人サービス、対事業所サービスともに本年2月以降、5月まで低下が続いていたが、6月以降、両者とも回復に向かいつつある様子がみられる。

「非製造業依存型事業所向け」は3か月ぶり低下

 対事業所サービスは、製造業の取引先が多いか、そうでないかによって、製造業依存型と非製造業依存型に分けることができ、それぞれの指数も計算している。
 8月は、製造業依存型事業所向けサービスは前月比0.2%と3か月連続の上昇だった。非製造業依存型事業所向けサービスは前月比マイナス0.1%と、3か月ぶりの低下となった。

「し好的個人向け」は戻り遅く

 対個人サービスは、生活必需的な性質で変動が相対的に少ないと考えられる非選択的サービスと、選択性が高く所得環境や経済情勢等の影響を受けやすいと考えられるし好的サービスに分けられ、それぞれの指数も計算している。
 それぞれの動向についてみてみると、8月は非選択的個人向けサービスは前月比2.1%と3か月連続の上昇だった。し好的個人向けサービスは前月比0.6%と2か月ぶりの上昇だった。
 非選択的個人向けサービスについては、指数値101.6まで上昇し、感染症の影響が現れる前の本年1月の水準(指数値101.6)まで活動水準が戻ってきている。他方、し好的個人向けサービスについては、感染症の感染拡大防止策で社会経済活動が抑制されていたことにより、5月まで大幅低下した後、6月以降、活動水準を戻してきてはいるものの、いまだ十分な戻りではない。

基調判断「持ち直しの動き」

 本年8月のサービス産業活動指数は、前月比0.8%と、3か月連続の前月比上昇となった。サービス産業活動は、5月までの活動水準の大幅な低下から一転、6月は大幅に上昇し、7月は微増、8月はやや大きめの上昇と、上昇が続いている。
 この背景には、5月まで新型コロナウイルス感染症対策として緊急事態宣言が発出されるなど、社会経済活動が大幅に抑制されていたところから、6月は社会経済活動のレベルが引き上げられたことで大幅上昇し、その後も、7月の豪雨、8月の好天といった天候要因による振れや、8月は感染症の感染再拡大による帰省などの自粛、東京都などでの飲食店の営業時間短縮などの低下要因もあったものの、総じていえば、7月、8月と、サービス産業は活動水準を回復させつつある動きにあるものと考えられる。
 こうした状況を踏まえ、サービス産業(第3次産業)活動指数の8月の基調判断については、7月までの「底打ちの動き」から「持ち直しの動き」へと、上方修正した。
 9月以降についても、社会経済活動レベルの段階的引き上げなどによるさらなる上昇が期待されるが、他方、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の影響なども注意する必要がある。このため、サービス産業活動の先行きについては、引き続き注視していきたい。

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参考図表集

『就職にも使える! 第3次産業活動指数』(マンガ)