6月のサービス産業活動 低落基調から一転 大幅上昇に
外出自粛要請や営業時間短縮などの緩和の進展で
本年6月のサービス産業(第3次産業)活動指数は、指数値93.9、前月比7.9%と5か月ぶりの上昇となった。
サービス産業活動は本年2月以降、低下が続き、特に3月以降は新型コロナウイルス感染症の影響が拡大したことで、大幅な低下が続いていたが、6月は一転、大幅な上昇に転じた。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、2月下旬以降、各種の自粛要請などが行われ、特に4月から5月までは、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発出されたことにより、社会経済活動のレベルはかなり抑制されていた。しかし5月中旬以降、この緊急事態宣言も地域ごとに解除が進み、5月25日には首都圏を含む全地域で解除され、6月以降も各種の自粛要請や休業要請などの緩和が進むなど、社会経済活動のレベルも段階的に引き上げられていった。こうしたことから、サービス産業活動は、5月までの低落基調から一転、6月は大幅な回復を見せたものと考えられる。ただ、6月の指数値93.9は、今基準内でも本年5月、4月に続く3番目に低い水準にあり、活動水準としてはいまだかなり低い状況にある。
四半期ベースでみても、本年第2四半期は、前期比マイナス9.9%と大幅な低下となり、今基準内最大の低下幅となった。指数水準90.2も、今基準内で群を抜いて低い最低水準となっている。
小売業の上昇幅は最大に
6月の業種別の動きをみると、11業種すべてが前月比上昇という結果となった。
特に上昇寄与が大きかった業種は、生活娯楽関連サービス、小売業、「運輸業,郵便業」が挙げられる。
生活娯楽関連サービスに関しては、6月は前月比35.5%と、2か月連続の上昇となり、上昇幅は今基準内で最大となった。内訳業種をみると、特に「飲食店, 飲食サービス業」、娯楽業が上昇している。緊急事態宣言が5月中に解除され、6月は事業者側の休業要請や営業時間短縮要請も緩和の動きが進んだとともに、顧客側の外出自粛要請も緩和され、これらサービスの利用が進んだことが上昇の要因として考えられる。ただ生活娯楽関連サービスの指数値は67.2と、水準は依然低い状況にある。
小売業は、前月比13.9%と、2か月連続の上昇となり、上昇幅は今基準内で最大となった。指数値は100.6となり、本年3月の水準を上回っている。内訳業種では特に織物・衣服・身の回り品小売業や自動車小売業、機械器具小売業の上昇寄与が大きくなった。これまで買い控えられていた織物・衣服・身の回り品や自動車、家電製品などの販売が、外出自粛要請や営業時間短縮などの緩和の進展もあり5月より回復したことや、定額給付金の支給による影響もあったようだ。
「運輸業,郵便業」は、前月比10.1%と、5か月ぶりの上昇となった。特に旅客運送業や運輸施設提供業が大きく上昇した。緊急事態宣言も解除されたことや、6月には都道府県を越えた移動の自粛要請も緩和されたことで、旅客運送業すべてが上昇したことや、運輸施設提供業も利用者数が5月より回復したことが上昇要因として考えられる。ただ「運輸業,郵便業」の指数値は88.4と、水準は依然低い状況にある。
「対個人」向けが先行回復
サービス産業活動指数は、大きく「広義対個人サービス」と「広義対事業所サービス」に分けることができる。
6月の対個人サービス活動指数は、指数値92.3、前月比12.3%と5か月ぶりの上昇だった。対事業所サービス活動指数は、指数値95.5、前月比5.1%と5か月ぶりの上昇だった。本年2月以降、対個人サービス、対事業所サービスともに低下が続いていたが、6月はともに上昇となった。両者の動きを比べてみると、対個人サービスの方が対事業所サービスより5月の低下幅は小さく、6月の上昇幅は大きくなっており、前者の方が先んじて回復している様子がみられる。
「対事業所向け」はいずれも上昇
対事業所サービスは、製造業の取引先が多いか、そうでないかによって、製造業依存型と非製造業依存型に分けることができ、それぞれの指数も計算している。
6月は、製造業依存型事業所向けサービスは前月比3.7%と4か月ぶりの上昇だった。また、非製造業依存型事業所向けサービスは前月比5.5%と、5か月ぶりの上昇となった。
「し好的個人向け」も大幅上昇
対個人サービスは、生活必需的な性質で変動が相対的に少ないと考えられる非選択的サービスと、選択性が高く所得環境や経済情勢などの影響を受けやすいと考えられるし好的サービスに分けられ、それぞれの指数も計算している。
それぞれの動向についてみてみると、6月は非選択的個人向けサービスは前月比1.5%と4か月ぶりの上昇だった。一方、し好的個人向けサービスは前月比27.8%と5か月ぶりの上昇だった。
5月まで低水準で抑制されていたし好的個人向けサービスは、緊急事態宣言の解除や、各種要請などの緩和が進んだことから、6月は、大幅に上昇することとなった。ただ、指数値は依然低水準にとどまっている。
基調判断を上方修正
本年6月のサービス産業活動指数は、前月比7.9%と、5か月ぶりの前月比上昇となった。サービス産業活動は、2月から感染症の影響が現れ始め、特に3月以降、活動水準の大幅な低下が続いていたが、6月は一転、大幅に上昇した。
この背景には、5月までに緊急事態宣言が全地域で解除され、6月は各種の自粛要請なども緩和されたことにより、社会経済活動のレベルが5月より引き上げられてきたことがある。これにより、5月まで極めて低い水準に抑制されてきたサービス産業活動も、6月には大幅な上昇に転じ、5月までの低落基調には一旦底打ちの様子がみられる。
こうした状況を踏まえ、サービス産業(第3次産業)活動指数の6月の基調判断については、「底打ちの動き」と上方修正したいと考える。
先行きに関しては、7月は6月よりさらに社会経済活動のレベルは引き上げられており、サービス産業活動も上昇が期待されるところである。ただ他方で、ここ最近は感染症の感染者数は再び増加しており、その影響も懸念されることから今後の動向を引き続き注視していきたい。
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