統計は語る

2019年11月の全産業活動指数 前月比上昇も戻りは鈍く

今後の回復に期待

 
 2019年11月の全産業活動指数は、指数値103.9、前月比は0.9%の上昇となった。前月比の上昇幅でみれば、11月は比較的大きめの上昇といえるが、10月が今基準内(2008年1月~)では、東日本大震災の被災月である2011年3月に次ぐ第2位に位置する、マイナス5%近い大幅低下だったことを踏まえれば、戻し幅としての期待値を下回っている、といえる。また、指数値が複数月にわたり連続して104台に届かないのは、緩やかながらも上昇期にあった2017年3月以来のことである。

特殊要因で大幅低下の10月だったが

 このところの動きを振り返ると、今年9月までの3か月間は前月比マイナスなしという順調な動きをみせており、かつ9月の前月比は今基準内第2位となる大幅上昇をみせていた。10月は消費税率改定もあったが、この上昇基調からの反落に加え、自然災害の影響も重なり、今基準内第2位となる前月比大幅低下だった。
 前月比の「振れ」が大きかった9月、10月をならした平均指数値が105.6、8月単月の指数値106.2、あるいは直近の不確実性の偏りが少ない6~8月の3か月平均値106.1と比べれば、11月の指数値103.9は大きく低下している。特に10月の低下分には、スポット的な自然災害の影響なども含まれており、11月以降の復旧需要などを考慮すると、11月時点の前月比の上昇度合いは物足りない感じは否めず12月以降、全産業活動のさらなる復調に期待したい。
 傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、2019年4月からの上昇傾向から7月に低下方向に転じ、一時的に上昇した9月以降、ここ2か月は低下方向への勢いを増している様相がみてとれる。

サービス産業活動が全体をけん引

 11月の結果を産業別にみると、鉱工業生産は前月比マイナス1.0%と2か月連続の低下だったが、サービス産業活動は前月比1.3%と2か月ぶりの上昇、建設業活動は前月比0.1%と6か月ぶりの上昇とはいえほぼ横ばい、と内訳3産業の動きは、上昇、低下、横ばいと三者三様だった。全産業活動全体を上昇方向に導いたのは、サービス産業活動の大きめの前月比上昇ということになる。
 ただ、11月のサービス産業活動は、先に公表された「第3次産業活動指数」によれば、幅広い分野の業種が前月比上昇とはいえ、10月の低調な動きからの戻し幅としては大きくない、としている。

建設業活動は前月比微増だが

 11月の建設業活動は、前月比0.1%と6か月ぶりの上昇、指数値は108.7となった。
 10月までは、2017年6~10月にかけての連続低下以来となる前月比5か月連続低下を続けていたが、11月は6か月ぶりの上昇と連続低下に歯止めがかかった。前月比上昇幅は最小限なものとなってはいるが、弱さがみられる基調の底が近いことに期待したいところである。指数値は、3か月連続で110台を割り込むなど、2019年内で最も低い水準での推移が続いている。
 最近の傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、7月に低下方向に転じ、以降、強い風速での低下方向への動きが続いていることが確認できる。
 これらから判断すると、11月時点の建設業活動全体の基調は、引き続き「弱さがみられる」と評価すべきだろう。

 建設業活動の内訳をみると、民間発注工事が前月比マイナス0.7%と6か月連続の低下、公共工事が前月比0.5%と2か月連続の上昇と、動きは相反するものだった。民間発注工事の不調を公共工事がカバーする様相がうかがえる。
 民間発注工事は、11月に至っても改善の兆しはみられなかった。4月以降の8か月で7回に及ぶ前月比低下となり、ここ3か月ほど大幅低下が続き低調な住宅建築工事、7か月連続低下中の非住宅建築工事、一進一退ながらも活動量が復調しない土木工事と、民間発注工事全体に弱さが継続している。
 他方、このところ決して良い動きとはいえなかった公共工事には、前月比連続上昇と明るい兆しをみせている。建設工事は引き続き低調ものの、ウエイトの大きい土木工事が、第3四半期値を若干上回る活動量を示すなど、底固めともみられる動きをみせている。

基調判断は「足踏みがみられる」

 2019年11月の内訳3産業は、三者三様の動きをみせた。各指数の基調判断は、鉱工業生産は「弱含み」、サービス産業活動は「足踏みがみられる」と判断を据え置いている。建設業活動も「弱さがみられる」という状況からの改善には至らなかった。
 全産業活動全体では、11月は前月比大きめの上昇も、低調だった10月からの流れでみれば、戻し幅としては十分とはいえないものだった。3か月移動平均で測る「すう勢」も、引き続き低下方向の動きにある。ただ、最近の動きには、消費税率改定や自然災害といったイレギュラーな要素を含んでおり、現時点ではこれら要素が与える変動の不確実性は否めない。これら要因による活動量の低下に関しては、今後の回復に期待したいところだ。よって、引き続き、来月12月以降の動きを慎重に見極める必要がだろう。
 このように、11月の動きは上昇だったものの、10月からの戻し幅の大きさ、及び趨勢の弱さなどを踏まえ、2019年11月時点の全産業活動の基調は、引き続き「足踏みがみられる」としている。

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