統計は語る

米国向け出荷好調は続くのか

乗用車生産 国内回帰の可能性どう響く


 国内の鉱工業製品に対する外需(輸出向け)の動きをとらえる「鉱工業出荷内訳表」の輸出向け出荷指数をみてみると、下のグラフのとおり、2016年後半以降は堅調に推移してきたものの、2018年後半からは低下傾向となっている。
 最新の2019年第2四半期をみても、輸出向け出荷は、欧州向け、ASEAN向け、その他の地域向けの低下から前期比マイナス0.5%と2期連続の低下となってしまった。米国向け、中国向け、韓国向けは上昇となったが、中国向け、韓国向けは前期の大幅減の反動増という面があるようにみえる。
 こうしてみると、3期連続の上昇となった米国向けだけが好調を維持しているようにみえる。トレンドでみても米国向け出荷のみが、2017年以降、上昇傾向を維持している。背景としては、世界の主要地域の中で米国のみが景気の回復が着実に続いていることもあるが、今回は、好調な米国向け出荷について、要因を確認してみる。

輸送機械工業、生産用機械工業がけん引

 米国向け出荷の業種別の動きをみてみると、やはりというか輸送機械工業が3期連続の上昇に大きく寄与しているようである。ただ、一般的な傾向としては、米国向け出荷のウエイトの5割程度を占める輸送機械工業の変動がほぼ米国向け輸出の変動となることが多いが、今期第2四半期に関しては生産用機械工業の上昇寄与が最も大きく、また他の業種も健闘している一方、輸送機械工業の上昇寄与は低下しており、状況は少し違うようだ。

急上昇の要因は

 まずは輸送機械工業、その中でも自動車工業の主要品目である「乗用車」「車体・自動車部品」の動きを確認してみる。

 自動車の海外生産の拡大などの影響があるのかもしれないが、近年の指数水準は車体・自動車部品は高く、ウエイトの最も大きい乗用車は低いため、輸送機械工業の指数値も100を下回ることが多いという状況が続いていた。しかし2018年第4四半期より乗用車が3期連続で上昇し、これが輸送機械工業の急上昇の要因となったようである。
 では、米国自動車市場が好調なのだろうか。
 まず、米国の新車販売台数をみてみると、2019年1-6月累計で前年同期比マイナス2.0%減(マークラインズ調べ、速報値)で、日本の主要メーカーの新車販売台数は、これよりもやや低いマイナス3.5%減だった。
 日本国内で生産された乗用車の米国向け出荷は上昇しているものの、米国自動車市場の動向をトータルでみれば、本年は、高水準ながらも前年よりは良くない状況といったところかもしれない。
 一方、日系自動車メーカーの四輪車の海外生産統計(一般社団法人日本自動車工業会、一部会員メーカー台数を含まない)について米国をみてみると、2019年第1四半期の前年同期比はマイナス5.0%減となっている。
 このことから、乗用車の日本からの米国向け出荷の上昇は、米国市場への供給の一部が、現地生産から国内生産に変わったことによる可能性も考えられる。
 このため、今後も乗用車の米国向け出荷の好調が続くかは、注意してみておいた方がよいようにも思われる。
 次に、生産用機械工業についてみてみる。米国向け出荷が5期連続の上昇となった生産用機械工業だが、半導体製造装置が特に上昇に寄与しているようである。

 半導体製造装置については、日本からの全世界への輸出はメモリー向けの半導体投資の減少の影響などから2018年後半より低下傾向にあるが、米国向け出荷は4期連続の上昇となっている。半導体に関してはCPU不足という話もあることから、米国向け出荷の上昇はロジック向けの半導体投資拡大によるものかもしれない。
 まとめると、鉱工業全体の米国向け出荷はこのところ上昇傾向で推移しているが、その構成品目をみると、乗用車に加え、直近では半導体製造装置などの米国向け輸出も好調なことが要因としてある。先行きについては、米国の景気回復が続いていることを背景に、今後も持ち直していくことが期待される。
 ただ、米国の自動車市場は昨年と比べるとやや弱く、また今後の米国経済に関しては、通商問題の動向や今後の政策の動向等にも留意してみる必要があるだろう。

【関連情報】

鉱工業出荷内訳表のページ