統計は語る

データにみる酒類ニーズの多様化


 暦の上では秋に入ったが、まだまだ暑い盛り、冷たいお酒が美味しい季節である。近頃、昔に比べお酒の種類もさまざまなものを目にするようになったが、最近はどんなお酒が人気なのだろうか。

清涼飲料に次ぐ伸び

 2018年、フード・ビジネス・インデックス(FBI)の3業態(製造・流通・サービス)の1つである食料品工業の生産上昇をけん引したのは清涼飲料だったが、酒類も清涼飲料に次いで食料品工業の中でも伸びがみられる。
 巷では酒離れなどとも言われていますが、酒類全体の生産が増えてきているのだろうか。

※鉱工業指数の基準改定が行われたため、2018年のデータと2017年以前のデータの比較に当たっては、注意が必要(参考 )。

リキュール、スピリッツ類伸長

 国内製造分の酒類の課税数量の推移を見てみると、酒類全体では、10年前の2008年度と比べると約6%低下した。
 品目ごとに見ると、この10年間でビールや発泡酒、清酒、焼酎が低下している。
 他方で、伸びている品目もある。チューハイや新ジャンル飲料などが含まれるリキュール類は約1.8倍、カクテルの材料に使われるスピリッツ類は約3.6倍、また、ハイボールが人気のウイスキー類も約2.3倍にまで伸びた。そのおかげで、2018年度の酒類全体は3年ぶりに前年比0.8%と上昇に転じている。
 低下している品目もあるものの、消費者の様々なニーズに対応し、企業が新しい商品や飲み方を提案することで、酒類の生産も上昇に転じたのかもしれない。

清酒は輸出単価も上昇

 一方で、日本産酒類の輸出金額を見ると、2018年は約618億円となり、7年連続で過去最高を記録している。中でも清酒やウイスキーの輸出金額が最も大きく、成長を続けている(図3)。
 実は、数量ベースでみると輸出量が最も大きいのはビールである(図4)。しかし金額ベースでみると、清酒やウイスキーはビールより輸出金額では大きいことがわかる(図3)。

 清酒は輸出額、輸出量ともに伸びているが、実は輸出単価も上昇しており、2008年から2018年で約37%上昇した(貿易統計より試算)。海外でもすでに「SAKE」として親しまれるようになってきた清酒だが、今後ますます日本の匠の味が海外で味わわれるようになるかもしれない。
 また、日本のウイスキーも、今や世界にその品質が認められ、2015年にはビールの輸出額を抜き、清酒に次ぐ地位を占めるようになった。輸出単価は2008年から2018年で約75%上昇した(貿易統計より試算)。
 このように日本の酒類の輸出は近年成長を続けている。とはいえいまだ国内販売量の2%程度にすぎない。まだまだ海外市場には大きなポテンシャルがあるのではないだろうか。お酒と合わせて、日本の酒器や食文化など、関連市場にも期待が持てるところである。