統計は語る

日系サービス企業の海外展開、意外に大きい南半球地域の構成比 

オセアニアやアフリカの存在感に注目


グローバル化の進展が著しい昨今、日系企業の活動は日本国内にとどまらず、幅広く世界中で展開されており、国内外の企業活動の動向を把握する重要性はますます高まっている。
海外事業基本活動調査を用いて、日系の非製造業を営む海外現地法人の活動を指標化したサービス産業海外拠点活動指数を試算している。今回は、その立地地域別の動きのうち、特に南半球地域という、あまり普段論じられることの少ない地域における日系非製造業現地法人の動向に着目してみたい。

6%超える水準を維持

サービス産業海外拠点活動指数を地域別にわけ、2015年度の構成比をみると、基準年となる2010年度との比較でも、構成比の絶対値(2010年度:52.5% → 2015年度:62.5%)で見ても、北米の一極優位は揺るがない状況だ。
そんな中、意外だと思われるかも知れないが、中南米、オセアニア、アフリカといった南半球に位置する3地域の構成比が無視できないことが分かった。
2010年度では、オセアニアが4.7%、中南米は3.4%、アフリカは2.7%と、この3地域の合計は全体の10%を超えていた。2015年度には、北米に立地する非製造業日系現地法人の活動が活発化したため、これら地域の構成比も低下したが、それでも6%を超える構成比を維持している。

動きには違いも

それでは、南半球に位置する3地域(中南米、オセアニア、アフリカ)の活動指数は、それぞれどのように推移しているのだろうか。
まず、中南米をみると3地域の中では最も安定した推移だったといえる。ただし、2015年度は前年度比マイナス53.2%と、リーマンショックの影響で急降下となった2009年度の前年度比マイナス33.7%をはるかに上回る非常に大きな低下幅となった。
次に、好調な推移が続いているオセアニアは、3地域の中では最も高い指数水準を維持しており、この5年間の伸びが大きくなっている。ただ、2015年度については6年ぶりに前年度比が低下し、一服感が見られる。
最後に、アフリカはこれら3地域の中では最も低調な推移で、この5年間の伸びに勢いがない。2008年度以降、大きな変化はありませんが、一貫して緩やかな低下基調が続いている状況である。

仕向先別傾向は

では、これら3地域の活動指数の仕向先別(日本向け販売取引、現地販売、第三国向け販売取引)の動きを確認してみたい。なお、非製造業には、卸売業を含んでおり、卸売業の販売取引には、貿易取引を含んでいる。
まず、仕向先別の2015年度の構成比を確認する。
日系非製造業の世界平均と構成比を比較すると南半球3地域では、日本向け販売取引の比率が少し高くなっている。
また、中南米とオセアニアの現地、第三国向けの構成比は世界平均と変わりない。
一方、アフリカのそれらの構成比では、現地向けと第三国向けが逆転している。アフリカの非製造業現地法人は、立地国だけのビジネスをしているというよりも、アフリカ地域の拠点としての広域ビジネスの割合が強いと考えられる。

2015年度の仕向先別販売取引の前年度比を確認すると、3地域とも、全体の低下幅よりも第三国向け販売取引の低下幅が大きくなっている。第三国向け販売取引のウェイトが3分の1程度、アフリカに至っては、半分を超えているので2015年度の低下については、3地域いずれも第三国向け販売取引が主要因となっていることが分かる。
特に、中南米については、第三国向け販売が7割の低下となっており、これが、2015年度の中南米の日系非製造業現地法人の活動急落の要因となっていた。
このように、「海外事業活動基本調査」から日系非製造業現地法人の動向を、地域ごとに確認することもできる。今回は、南半球に位置する3地域(中南米、オセアニア、アフリカ)の動向を確認してみた。
2018年2月19日には、GDPに占める割合が最も大きい第3次産業(サービス産業)について、日系企業の海外拠点(現地法人)活動の動向を把握するため、「海外事業活動基本調査」を用いたミニ経済分析『「日系サービス(非製造)産業の海外展開把握の試み」;拠点(現地法人)経由のサービス産業活動指数の試作』を公表した。
地域別の指数推移も掲載しているので、こちらもあわせてご覧頂きたい。

関連情報

日系非製造業の現地法人の活動において、南半球3地域の存在感が意外と大きい;地域別「サービス産業海外拠点活動指数」の特徴ある3地域の動き

<ミニ経済分析「サービス産業海外拠点活動指数」のページ>