統計は語る

おうち飲みしていましたか?

2023年5月8日に新型コロナウイルス感染症(以降、新型コロナ)の感染症法における位置付けが2類相当から5類に移行し、経済活動も徐々に新型コロナ前にもどりつつある。今回は、これまでの3年間で、大きな影響を受けていると言われる一つの事例として飲食関連をあげてみる。

飲食店でも業態により大きな差が現れた

第3次産業活動指数から、飲食店、飲食サービス業の活動を見ると、「飲食店」を構成する4つの業態と持ち帰り弁当や宅配ピザなどの「飲食サービス業」に大きな差が見られる。グラフの左は、2013年から2022年まで暦年で示している。2019年までは「パブレストラン、居酒屋」は概して低下傾向にあり、「ファーストフード店」は上昇トレンドに見える。「飲食サービス」は、ほぼ横ばいに見える。「食堂、レストラン、専門店」と「喫茶店」は緩やかに上昇している。グラフの右は、2019年以降を四半期で示している。いずれの業態も新型コロナの影響で2020年第Ⅰ期に大きな下落を示しているが、その後の回復に大きな違いが見えた。「ファーストフード店」は、2020年第Ⅳ期頃から新型コロナ前の水準に回復しているが、「パブレストラン、居酒屋」は、人数や酒類の提供について制限を受けた影響もあり、他の業態と大きく差が広がりながら2023年第Ⅰ期では、2019年第Ⅳ期と比べても90%程度まで回復している。

家計の支出にも大きな影響がみえる

家計の支出を家計調査から見ると、外食のうち食事代は、2019年1年間の支出(以下同様)138,988円から2020年105,992円と32,996円(23.7%)減少していた。飲酒代は2019年19,891円から2020年9,403円と10,488円(52.7%)減少している。2019年10月には消費税率が10%となったが、税率変更の影響より遙かに大きな影響がみえた。2023年1月から4月までの月平均での食事代は11,028円で2019年の月平均 11,582円に近づいたが、飲酒代は、70%程度までしか回復していないようだ。

いわゆる「おうち飲み」も節約?

コロナ過の中で「おうち飲み」が話題になったが、その傾向を見てみる。家計調査では、「酒類」として調査があり、2019年間支出額が40,721円から2020年間46,276円と5,555円(13.6%)増加している。外食代のうち飲酒代の落ち込みほどではないが、消費税率の変更を上回る伸びを示している。ただし、増加の寄与が大きい酒類は、「発泡酒・ビール風アルコール飲料」と「チューハイ・カクテル」を合わせると2,630円増加しており、約半分を占めた。「おうち飲み」も比較的、値段が安い酒類を選択しているように、節約志向が見える。改めて2000年以降の動向をみると、酒税の変化からより安い酒類が選択されるように構成が変化している。2023年10月にも酒税の変更があるので、コロナ過とは別の動きが表れる可能性がある。

外食(食事)は8月、飲酒は12月が多い

2020年以降の外食代のうち食事代と飲酒代について月々の支出を2000年から2019年までの20年平均と比較して変化がないかを見てみる。2020年から2022年の3年間は複雑に変動しているが、2023年に入り、元の20年平均の動きと水準に戻りつつある。食事代については、20年平均をわずかながら上回っている。食事代が多い月は8月のようだ。お盆の影響もあるが、暑いため自宅で調理したくなくなるのと冷たい食事を好むようだ。飲酒代の12月と1月は言わずと知れている忘年会・新年会である。

このように家計における外食代の支出が徐々に新型コロナ前の水準に戻りつつある一方で、厚生労働省の「一般職業紹介状況」から飲食業界に従事する職業の新規有効求人倍率をみると、2023年4月では、調理人が3.5倍、ホールスタッフが4.6倍であった。パートタイムに絞ると調理人が3.3倍、ホールスタッフが6.1倍とかなりの人手不足と姿がうかがえる。飲食業界は、食材高だけでなく、人材の確保という大きな試練が続いているようだ。

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