統計は語る

給湯機の生産・出荷・在庫の動向;部材不足の影響はどの程度解消されたのか?

2021年夏頃から2022年春まで大きな話題となった、「給湯機不足」について、これまでの動向を振り返りつつ、最近の状況を確認する。

給湯機は、熱源により、主に、石油、ガス、電気の3タイプに分かれる。キッチン専用の湯沸器なども含まれており、複数回答といったデータの制約があるものの、令和2年度の家庭部門のCO2排出実態統計調査の結果を見てみると、全国レベルでは、ガスを熱源とするものが、全世帯の約7割を占めており、電気、石油の順となっている。他方で、地域別に比較してみると、寒冷地では、石油を熱源とするものの割合が高く、北海道では、石油とガスが同程度となっている。

今回は、給湯器のうち石油とガスを熱源とするものに焦点をあてて確認していく。

石油給湯機の生産・出荷・在庫の動向-石油温水給湯暖房機-

まず、北海道や東北、北陸地方などで多く使用されている石油を熱源とする「石油温水給湯暖房機」について、国内の生産・出荷・在庫の動向を生産動態統計の計数を指数化し、季節調整処理を行ったデータで確認すると、2020年4月頃から本格化した新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、ほとんどなかったか、非常に限定的であったことが分かる。

一方で、2021年9月頃のアジアを中心とした新型コロナウイルス感染症の再拡大などによる部材供給不足の影響については、対照的に、鉱工業全体と比べても、非常に大きかったものと見受けられる。
しかしながら、その後、部材供給不足の緩和などを受けて、生産が急回復しており、足下まで比較的高い水準で推移している。生産水準に比べると出荷が相対的に低くなっているが、これは、ガスや電気などの他の熱源による給湯機へシフト化しつつあることや、製品ごとの需要の差異などが影響していると考えられる。

生産・出荷・在庫の動向-ガス温水給湯暖房機・風呂がま-

次に、「ガス温水給湯暖房機・風呂がま」について、国内の生産・出荷の動向を鉱工業生産・出荷指数で確認すると、2020年4月頃から本格化した新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、鉱工業全体と比べると相対的に小さかったことが分かる。
しかしながら、2021年9月頃のアジアを中心とした新型コロナウイルス感染症の再拡大などによる部材供給不足の影響については、対照的に、鉱工業全体と比べて相対的に大きかったように見受けられる。2021年12月には、生産が64.8、出荷が58.7と、2013年以降(現行の指数基準[2015年基準]で比較可能な範囲)で最低水準を記録している。
その後、2022年1月以降は、部材供給不足の緩和などを受けて、急回復している。2021年9月から2022年2月までの半年間と、2022年3月から8月までの半年間を比較してみると、前者の生産平均が72.7、出荷平均が76.1であったのに対して、後者の生産平均が132.9、出荷平均が136.6であり、その挽回生産による急回復の状況が分かる。
また、2021年9月から2022年8月までの1年間の生産平均が102.8、出荷平均が106.4であった一方で、新型コロナウイルス感染症の影響がなかった2019年の1年間の生産平均が102.2、出荷平均が100.9であったことから、同期間で均してみると、コロナ禍前と概ね同水準の生産実績、それ以上の出荷実績を挙げていたと考えられる。
さらに、在庫の動向を鉱工業在庫指数で見てみると、2021年9月頃のアジアを中心とした新型コロナウイルス感染症の再拡大などによる部材供給不足の影響を受けて、生産が大幅に低下したことから、在庫水準も低下していた。
しかしながら、その後の挽回生産を受けて、在庫も一時的に上昇したが、出荷の上昇幅が生産の上昇幅よりも大きかったことから、再び低下し、足下でも依然として低い在庫水準となっている。
以上のことから、2021年9月頃にアジアを中心とした新型コロナウイルス感染症の再拡大などによる部材供給不足による生産水準低下の直接的な影響は、コロナ禍前までと概ね同程度まで緩和されてきたと考えられる。
むしろ、こうした供給側の要因で生じた消費者の手元に届くまでの納期の長期化に加えて、エネルギー価格の上昇などを受けた高効率な設備に対する買い替え需要などが相俟って、これまで設備が故障するタイミングで発生していた更新需要が、不具合の発生前に顕在化してきているのではないかと推察される。
また、新設住宅での新規需要についても、設備が設置されていないと実際の新居での生活が困難であることから、発注の早期化が促進されているのではないかと思われる。
したがって、当面は、顕在化する更新需要や新規需要が比較的高い水準で推移していくと考えられ、引き続き、生産・出荷・在庫の動向を注視していく必要がある。

生産・出荷・在庫の動向 -ガス湯沸器-

次に、「ガス湯沸器」について、国内の生産・出荷の動向を鉱工業生産・出荷指数で確認すると、「ガス温水給湯暖房機・風呂がま」と同様に、2020年4月頃から本格化した新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、鉱工業全体と比べると相対的に小さかったことが分かる。
また、2021年9月頃のアジアを中心とした新型コロナウイルス感染症の再拡大などによる部材供給不足の影響については、鉱工業全体と比べて相対的に大きかったように見受けられるが、「ガス温水給湯暖房機・風呂がま」と比べると、その影響は小さかったようである。
そのため、2022年1月以降の部材供給不足の緩和などを受けて急回復した後も、足下まで在庫水準が落ち着いた動きとなっており、「ガス温水給湯暖房機・風呂がま」と同様に、一定の更新需要などが顕在化してきている可能性はあるが、再び部材調達が深刻化するなどの状況変化が無ければ、当面は安定的に推移するのではないかと思われる。

今回は、石油とガスを熱源とする給湯機に焦点をあてて、その生産・出荷・在庫の動向について、最新の状況を確認してきた。その結果、「石油温水給湯暖房機」や「ガス湯沸器」については、2021年9月以降の部材供給不足の影響から概ね脱却しつつあると考えられる。しかしながら、「ガス温水給湯暖房・風呂がま」については、2021年9月以降の部材供給不足時の大幅な減産の直接的な影響を、その後の挽回生産で概ね取り戻したように見受けられるものの、これまでの潜在的な更新需要などの顕在化等により、未だ在庫水準が低く、引き続き需給バランスが不安定化しやすい状況にあるのではないかと推察される。


(注1)「給湯器」と「給湯機」の表記について
一般的に、「給湯器」と「給湯機」の表記の使い分けは、構造が比較的単純なものを「給湯器」、構造が複雑な機構を有するものを「給湯機」と称しているケースが多いと考えられるが、ここでは基本的に統計ごとの表記をそのまま採用しており、それ以外の部分は給湯機と表記している。
(注2)「ガス給湯器」について
「ガス湯沸器」とは、器具内に水を供給することでガスにより加熱され連続的に湯を取り出す給湯専用器具(貯湯タイプを含む)である。
また、「ガス温水給湯暖房機・風呂がま」とは、暖房回路と給湯回路をもつガス湯沸器である「ガス温水給湯暖房機」と、ガスにより風呂を沸かす器具(風呂専用とシャワーも使用可能なタイプ、洗面や台所などにも給湯可能なタイプ)の「ガス風呂がま」である。
(本解説に関する注意事項)
本解説は、公に入手可能で、経済産業省経済解析室が信頼できると判断した情報を用いて作成している。ただし、使用した情報を全て、個別に検証しているものではないため、これらの情報が全て、完全かつ正確であることを保証するものではない。
また、本解説は、統計等の利活用促進を目的に、経済解析室の分析、見解を示したものであり、経済産業省を代表した見解ではない。

給湯機の生産・出荷・在庫の動向;部材不足の影響はどの程度解消されたのか?