統計は語る

7月の鉱工業生産は、電子部品・デバイス工業等が低下したものの、自動車工業等が上昇し、2か月連続の上昇

7月生産は2か月連続の前月比上昇

 2022年7月の鉱工業生産は、季節調整済指数97.1、前月比1.0%と、2か月連続の上昇となった。

 これまでの生産の動向については、2022年1月に、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症急拡大などの影響を受けて低下したが、2月と3月は、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症拡大等の影響が緩和したことなどを受けて、上昇した。

 その後、4月と5月は、中国でのロックダウン等の影響を受けて低下したが、6月に、中国でのロックダウン等の解除などを受けて上昇に転じ、7月は、部材供給不足の影響が緩和したことなどから、2か月連続で上昇した。

6業種が前月比上昇、8業種が前月比低下、1業種が横ばい

 7月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、6業種が前月比上昇、8業種が前月比低下、1業種が横ばいという結果だった。

 7月は、需要の減少などを受けて、電子部品・デバイス工業等が低下したが、部材供給不足の影響が緩和したことなどを受けて、自動車工業等が上昇したことから、全体として上昇した。

 主な上昇寄与業種についてみると、上昇寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や小型乗用車等が主な上昇要因となっている。これらについては、いずれも部材供給不足の影響が緩和したことなどを受けて、上昇したものと考えられる。

 他方で、低下寄与度の大きかった電子部品・デバイス工業は、モス型半導体集積回路(メモリ)等が主な低下要因となっている。これについては、幅広い用途での需要の減少などにより、低下したと考えられる。

出荷は2か月連続の上昇

 7月の鉱工業出荷は、季節調整済指数95.2、前月比1.6%と、2か月連続の上昇となった。

 業種別にみると、全体15業種のうち、5業種が上昇、10業種が低下となった。

 7月は、部材供給不足の影響が緩和したことなどを受けて、自動車工業等が上昇したことから、全体として上昇した。

 上昇寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や普通トラック等が主な上昇要因となっている。これらについては、いずれも生産と同様に、部材供給不足の影響が緩和したことなどを受けて、上昇したものと考えられる。

 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、非耐久消費財が前月比1.2%の低下、建設財が同3.1%の低下、生産財が同0.1%の低下となる一方で、資本財(除.輸送機械)が同6.8%の上昇、耐久消費財が同8.0%の上昇となった。特に、資本財(除.輸送機械)や耐久消費財が、部材供給不足の影響の緩和などを受けて、堅調であったことがうかがえる。

在庫は横ばい

 7月の鉱工業在庫は、季節調整済指数99.6と、横ばいとなった。

 業種別にみると、15業種のうち、9業種が上昇、6業種が低下となった。

 上昇業種では、生産用機械工業の寄与が大きくなっている。生産用機械工業については、部材供給不足の影響の緩和などから生産を上昇させるとともに、在庫も上昇させたものと思われる。

 一方、低下業種の中では、特に、自動車工業の寄与が大きくなっている。自動車工業では、部材供給不足の影響の緩和などにより、出荷が堅調であったことなどを受けて、在庫が低下したものと思われる。

在庫率は2か月ぶりの上昇

 7月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数119.8、前月比1.6%と、2か月ぶりの上昇となった。

 業種別にみると、15業種のうち、9業種が上昇、6業種が低下となった。

 在庫循環図をみると、2021年第3四半期までは、「在庫積み増し局面」にあったが、第4四半期には、「在庫積み上がり局面」に達しており、2022年第3四半期(速)まで継続している。これまでの部材供給不足などによる生産減少の影響が含まれているが、概ね「在庫積み上がり局面」に差し掛かっているものと考えられる。

7月の生産の基調判断は、「一進一退」に据え置き

 7月の鉱工業生産は、前月比1.0%の上昇となった。

 生産は、2022年1月に、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症急拡大などの影響を受けて低下したが、2月と3月は、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症拡大の影響が緩和したことなどを受けて、2か月連続で上昇した。

 こうした中、4月と5月は、中国でのロックダウン等の影響を受けて低下したが、6月に、中国でのロックダウン等の解除などを受けて上昇に転じ、7月は、部材供給不足の影響が緩和したことなどから、2か月連続で上昇した。

 また、先行きに関しては、企業の生産計画では、8月と9月はともに上昇となっているものの、8月の補正値は前月比0.6%の低下を見込んでおり、ならしてみると一進一退の状況にあると考えている。

 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の7月の基調判断については、「一進一退」に据え置く。
なお、今後は、引き続き、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や、部材供給不足の影響、物価上昇の影響などについて、注視していく。

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参考図表集
マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」