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「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」改訂 チェックすべき3つのポイント

 「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会などの立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みです。経済産業省では、日本企業のコーポレートガバナンスの取組の深化を促す観点から、「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」を2017年に策定しています。

 ガイドラインでは、企業がコーポレートガバナンスの原則を実践するにあたって考えるべき内容を、コーポレートガバナンス・コードと整合性を保ちつつ示すことでこれを補完するとともに、「稼ぐ力」を強化するために有意義と考えられる具体的な行動を取りまとめています。
 今般、日本企業の「稼ぐ力」の低迷や、その背景にある環境変化などを踏まえ、改訂を行いました。

 これまでのコーポレートガバナンス改革では、経営力向上につながったという声も、現状では必ずしもそうではないという声も聞かれます。こうした状況も踏まえて、本改訂では、コーポレートガバナンス改革が企業価値の向上に寄与し、会社の持続的な成長を生み出す具体的な経路を示しました。加えて、改革の効果をより高め、日本企業の価値向上を実現するため、「取締役会の役割・機能の向上」、「社外取締役の資質・評価の在り方」、「経営陣のリーダーシップ強化のための環境整備」の3つのポイントに沿った整理を行いました。

ポイント①取締役会の役割・機能の向上

 コーポレートガバナンス改革の核となるのは、経営を監督する取締役会の機能強化です。社外取締役の増員や機関設計の変更を行う企業は増え、取締役会の監督機能が重視されてきていますが、「監督」とは、単に執行にブレーキをかけることや、不祥事を自ら発見することだけを指すものではありません。適切なリスクテイクや社内の経営改革を後押しし、「リスクテイクをしないことのリスク」を提起することも重要な役割に含まれます。このように、取締役会が形式化せず、本来の役割・機能を果たしているかという観点を含め、取締役会を適切に機能させるための留意点をまとめています。

ポイント②社外取締役の資質・評価の在り方

 社長やCEOの選解任に責任をもって関与し、社内にはない幅広い視点や洞察を持ち込む社外取締役は、コーポレートガバナンス改革において重要な役割を果たす存在です。コーポレートガバナンス改革を実質化させるために、社外取締役には、研修などを通じた自己研鑽の努力が期待されており、ガイドラインでは、企業は、研修の機会の提供・斡旋や費用の支援を行うべきだとしています。このほか、社外取締役の評価について、社外取締役である指名委員長等が主導し相互評価を実施するなど、ベストプラクティスを整理しています。

ポイント③経営陣のリーダーシップ強化のための環境整備

 経営を監督する取締役の在り方だけでなく、企業経営の舵取りを行う社長・CEO自身の経営力の強化も、企業価値の向上に欠かせないポイントの1つです。そのためには、リスクテイクができ、しがらみにとらわれない大胆な経営改革ができる社長・CEOを指名するための仕組みが機能することが前提です。また、リーダーシップを発揮して経営改革を推進するための社内の仕組みとして、例えば、社長・CEOを中心とするトップマネジメントチームの組成や適切な権限委譲、次世代の社長・CEOを支える幹部候補の育成などの具体的な取り組みを挙げ、これらの取り組みについてベストプラクティスを整理しています。

おわりに

 どのようなガバナンスを選択し、経営に活かすかは、企業にとって競争戦略の軸の1つです。それぞれの企業が本ガイドラインを活用し、各社にとって最適なコーポレート・ガバナンス・システムの構築・運用を行い、中長期的に企業価値を向上させていくことを期待しています。

 経済産業政策局 産業組織課

【関連情報】

「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」を改訂しました(2022年7月19日 経済産業省ニュースリリース)

エグゼクティブ・サマリー -CGSガイドライン改訂について-

コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)

指名委員会・報酬委員会及び後継者計画活用に関する指針- コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)別冊 -