統計は語る

北米の日本車販売がなぜ落ち込んだ?


 2017年第3四半期のグローバル出荷指数の動きの中で特徴的だったのは、北米地域の現地法人の出荷指数が、2四半期連続で前期比マイナスとなった点だ。このため、同期の北米出荷指数は、3四半期ぶりに前年水準割れとなっていた。

 2017年の北米地域の日系製造業現地法人の活動では、何が生じていたのだろうか。

北米の輸送機械工業は2期連続の低下

 2017年Ⅲ期のグローバル出荷指数(季節調整済)は、指数値109.5、前期比0.7%の上昇となった。2016年第Ⅰ期以降、日系製造業の活動は継続して安定した上昇の動きを見せている。

 この中で、特徴的な動きを見せたのは、北米地域の海外出荷指数、特に、日系製造業の中心となる輸送機械工業の北米地域の海外出荷指数だ。北米地域の日系現地法人の活動量は、2017年Ⅲ期に2期連続の前期比マイナスを記録し、前年同期比もマイナスとなった。このうち、ウェイトの半分以上を占める輸送機械工業の2017年Ⅲ期の活動も2期連続の前期比マイナスで、同年Ⅰ期から8%以上も低下している。

                  

 活動が前期比マイナスとなること自体は、2015年Ⅳ期から3四半期連続の低下ということもあったので、絶無ということではないが、2017年Ⅱ・Ⅲ期のそれは、下げ幅が大きく、それまでの推移とは様相を異にしている。

アメリカ市場への総供給も低下

 日系の輸送機械工業からアメリカ市場向けに出荷されるものは、現地生産分だけではない。日本からの出荷、北米地域内他国からの出荷、世界の他地域からの出荷がある。これらを合計して、日系輸送機械工業のアメリカ市場への総供給を計算することができる。

               

 この総供給の推移をみると、やはり2017年Ⅱ・Ⅲ期の値は、2期連続で低下している。現地生産分のみならず、日本からの輸出を含めて、アメリカ市場向けの日系輸送機械工業の出荷(総供給)の調子が良くなかったようだ。

 ちなみに、日系の輸送機械工業のアメリカ市場向け総供給の構造をみると、やはり3分の2は現地生産(2017年Ⅲ期で63.3%)となっている。日本から、そして北米地域の他国、そしてそれ以外の世界からの供給が1割前後ずつという構造だ。総供給に占める割合では、やはり現地生産の占める割合が大きくなっている。

            

海外出荷全体はアジアの力でプラスを維持

 このようにアメリカ市場向けの輸送機械工業の出荷は、現地生産分を含めて2期連続の前期比低下だ。しかし、輸送機械工業自体のグローバル出荷、そして、海外出荷は前期比上昇を維持している。

 2017年Ⅲ期の輸送機械工業の海外出荷指数は指数値155.6で、前期比4.1%だった。2017年Ⅱ期に大きく前期比を低下させていたが、その低下分を補う以上の上昇をⅢ期にみせ、輸送機械工業の海外出荷の指数値は過去最高を更新した。

 輸送機械工業の地域別寄与を見ると、ASEAN、そしてその他地域の海外出荷の上昇寄与が大きくなっている。その他地域の中では、NIES3の輸送機械工業の現地法人の出荷の伸び率が大きくなっていた。

            

 アメリカ自動車市場における2017年の新車販売台数は前年割れとなっていた。特に、ガソリン価格安定により、必ずしも日本企業が得意ではないピックアップトラックなどの車種が人気であったため、日本ブランド車は相対的に不調だったそうだ。

 一方、ASEAN主要国の新車販売は2年連続で拡大しているそうだ(約340万台)。この辺りの地域別の新車市場の勢いの差は、日系輸送機械工業の地域別海外出荷の動きに明瞭に現れたと言えるだろう。

 今後ともアメリカ市場が日系の輸送機械工業のグローバルな活動にとって重要であるであろうことは論を待たないが、アジアにおける活動、特に成長著しいASEANの自動車市場向けのワールドワイドな活動の重要性も増していくのではないだろうか。

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