統計は語る

インバウンドに潤う宿泊業

訪日外国人の宿泊料金指数は3四半期連続で上昇


 訪日外国人の消費金額を、消費者物価指数を用いて実質指数化し、訪日外国人の国内での旅行消費の動向を指標化した「訪日外国人消費指数(TCI)」のうち、宿泊料金指数の平成29年第3四半期の結果を紹介する。

3四半期連続で前期比アップ

 平成26年後半から堅調に推移してきた訪日外国人の宿泊料金指数は、28年第3、第4四半期に2期連続の低下をみせたが、その後は再び上昇。29年第3四半期は前期比プラス13.6%と、3期連続の上昇となった。29年に入ってからの宿泊料金指数の伸びは著しく、第3四半期の指数値は314.1と300台に突入し、過去最高値を更新した。

 29年第3四半期の買物代指数の動きについて、「アジア」と「欧米」からの訪日客ごとに確認してみる。

 アジア指数は、指数値346.2、前期比プラス18.1%と3期連続の上昇となった。全体指数同様、当期は過去最高の指数値だ。

 欧米指数は、指数値170.5、同マイナス7.8%と4期ぶりの低下となった。29年第2四半期まで3期連続の上昇と好調に推移していた欧米指数だが、当期はその勢いが途切れてしまった。

                

訪日客需要が下支え

 続いて、国内の宿泊業の前期比変動に対する宿泊料金指数の寄与(影響度)はどのようになっているか、みてみよう。

 訪日外国人の宿泊料金指数は、28年後半に国内宿泊業の変動に対しマイナス寄与をみせることもあったが、それ以外の時期はおおむね、前期比プラス寄与で推移している。29年第3四半期は国内宿泊業指数の前期比マイナス5.2%低下に対し、訪日外国人の宿泊料金指数はプラス2.39%ポイントと上昇に大きく寄与した。当期は、訪日外国人の宿泊支出の伸びが、国内居住者の宿泊利用の低下による宿泊業の不振を、プラスにするほどではないにしても、相当程度カバーしてくれていたことになる。29年に入って、訪日外国人の宿泊需要は、国内宿泊業に対し大きな影響力を持っていたようだ。

                   

アジア客の大きな伸びがけん引

 訪日外国人全体の宿泊料金指数の変動に対する、「アジア」と「欧米」からの訪日客ごとの影響度(寄与)をみてみよう。

 29年第3四半期の訪日外国人全体の宿泊料金指数の前期比プラス13.6%に対し、アジア指数はプラス10.65%ポイントの上昇寄与、一方、欧米指数はマイナス1.28%ポイントの低下寄与となった。28年第4四半期以降、好調に推移していた欧米指数は、当期は一転、前期比マイナスに逆戻りしてしまった。欧米からのお客様による低下寄与幅を、アジアからのお客様の上昇寄与が大きく上回って、当期の宿泊料金指数は上昇することになった。

                  

 29年第3四半期の国内宿泊業の動向では、日本居住者の宿泊需要が前期比で大きく低下していた。29年8月は悪天候によって日本人の旅行需要は減退していた(第3四半期の観光関連産業活動指数は前期比マイナス1.8%と4期ぶりの低下)。併せて、欧米からの訪日客の宿泊支出の低下にも見舞われた。これらの結果、宿泊業活動指数は大きな前期比低下となった。

 この状況の元、アジアからの訪日客の大きな前期比プラスが、宿泊業の落ち込みを緩和してくれていた。アジアからのお客様のニーズに、宿泊という面でも対応することの需要性を再認識させられる結果ではないだろうか。
関連情報
ミニ経済分析「2017年第3四半期の訪日外国人消費指数の動きと上位5カ国・地域からの訪日客の消費動向」