統計は語る

宣言解除で大幅回復?遊園地・テーマパークの統計を読む

 経済産業省では、第3次産業に属する業種の生産活動を総合的に捉える指標として、第3次産業活動指数(以下、「3次指数」)を作成し、毎月公表している。3次指数総合(全体)のうち、娯楽業が占める割合(ウエイト)は2%で毎月の動向に与える影響は非常に小さい。ただ、2020年は新型コロナウイルス感染症拡大で大幅な低下となり、全体のマイナスに寄与した業種の一つだ。

 今回は、コロナ禍に入場者数の激減で大きく落ち込んだ遊園地・テーマパークの足下の状況をみる。

コロナの影響で2020年に大きく落ち込んだ娯楽業

 2020年の3次指数は、コロナ感染症拡大の影響で前年比マイナス6.9%と大きく落ち込んだ。5月の指数値86.7は、2015年基準で最低を記録し、特に内訳の娯楽業で大幅な低下が目立った。2020年は同マイナス26.6%、5月の指数値は37.9と2015年基準最大の下落幅・最低値で、全体の低下に大きく貢献した。

 娯楽業の内訳では、コロナ禍でもインターネット投票で売り上げを増やした「競輪・競馬等の競走場,競技団(同プラス8.8%)」を除く5業種全てが低下した。特に各施設の入場制限で入場者数が激減した「劇場・興行団(同マイナス64.5%)」、「遊園地・テーマパーク(同マイナス60.5%)」、「映画館(同マイナス53.1%)」などの大幅な低下が目立つ。

 娯楽業の大幅低下には、ウエイトが最も大きい「パチンコホール」も影響しているが、コロナが流行する以前から低下傾向にあった。

2020年以降、月別の娯楽業内訳の動向は、コロナの影響で一時は大きく落ち込んだものの回復が早い「スポーツ施設提供業」や、大ヒット作品(鬼滅の刃)の公開で10月に大きく上昇した「映画館」などが堅調に推移した。一方で、「劇場・興行団」や「遊園地・テーマパーク」などは、緊急事態宣言で入場制限などの制約を受けたため回復が弱く、足下でも低調だ。

入場者数の増減に大きく左右される遊園地・テーマパークの売上高

 遊園地・テーマパーク指数は、元データである「特定サービス産業動態統計調査」でコロナ禍の入場料や売上高の推移をみると、入場者数の増減に大きく左右されることが分かる。

 入場料と売上高をそれぞれ入場者数で割った一人当たりの推移をみると、一回目の緊急事態宣言下では入場数の減少に合わせてともに大幅減少した。特に「食堂・売店売上高」の落ち込みが大きかったことが分かる。

 入場者数制限に加え、開館時間の短縮や感染症拡大予防などで個人消費にも行動制約が生じ、購買意欲が減少したためと思われる。

2020年の遊園地入場料は2019年の三分の一まで減少

「家計調査」(総務省)の「遊園地入場・乗物代(年額)の推移」をみると、年額は2010年以降上昇傾向にある。2019年までの9年間で1.5倍まで増加したが、2020年はコロナの影響を受け1/3まで急落した。

2020年の遊園地入場料は3月以降、大幅減。2021年は反動増だが平年水準の回復には程遠い

例年、入場料・乗物代の支出ピークは夏休みの8月であり、3月の春休みや5月のGWにも増える傾向にある。2019年は年間を通じて2010~2018年の平均値に比べて高水準となった。

一方、コロナ禍の2020年は、一回目の緊急事態宣言中の4月を底に大幅に減少し、年間を通して低水準で推移した。2021年は前年の反動から3月以降、6か月連続で増加したが、平年水準には及ばず最大の需要期である8月は連日、全国的に感染者数が急激に拡大したため、支出の回復幅が小さくなった。

入場者の増加がカギ、10月以降の大幅増に期待

 10月1日、全国的に緊急事態宣言やまん延防止等特別措置が解除された。それまで5,000人だった入場数制限が1万人までになるなど、各施設の入場者数は大幅に増加した。3次指数の「遊園地・テーマパーク」は、入場者数を指数化しているため、宣言解除による入場者上限の緩和で大幅な上昇になる。これに伴い、各種売上高も大幅な増加が期待される。