統計は語る

2021年上期の「小売業」販売動向を振り返る

 経済産業省の「商業動態統計調査」では、指標から財における個人消費の動向を供給側から直接把握することができる。

 2021年上期の小売業販売動向について、この指標を用いて業種別、業態別販売額の変動要因等を分析した「2021年上期小売業販売を振り返る」スライド資料より、主な図表を紹介し、2021年上期の小売業販売について振り返る。

※各スライド資料はクリックで拡大表示します

 2021年上期の商業販売額は前年同期比4.8%増加し、約267兆円だった。うち約7割を占める卸売業は前年同期比5.3%増加、約3割を占める小売業は同3.4%増加した。

 小売業について業態別にみると、百貨店、コンビニエンスストア、家電大型専門店では前年同期より販売額が増加し、スーパー、ドラッグストア、ホームセンターでは減少した。

業種別では自動車小売業、燃料小売業等が主に数量要因で増加

 下のグラフは、小売業販売額への業種別寄与度の推移。2021年上期のみでみると、小売業販売額は4年ぶりに大幅減少した前年同期から増加に転じたが、増加に最も寄与したのは自動車小売業、次いで燃料小売業だった。この他、2020年の大幅減少に最も寄与した各種商品小売業もその反動で増加となった。

 スライド資料では、業種別に販売額の変動要因を数量と価格に分解したグラフを掲載している(下グラフは抜粋)。自動車小売業、機械器具小売業などの耐久消費財は、前々年10月からの消費税率引き上げに伴う反動で、前年10月以降増加傾向で推移しており、2021年上期も引き続き数量要因により増加傾向で推移した。これは、2021年上期の第1回目緊急事態宣言下での外出自粛や、生産調整が行われた影響で大きく落ち込んだ反動も加わったことによる増加とみられる。

大きな需要変化のあった2020年からの反動も

 スライド資料では、百貨店、スーパー、コンビニエンスストアについて、事業所数と1事業所当たり販売額の要因分解のグラフを掲載しており(下グラフは抜粋)、それぞれの業態の出店戦略をうかがいながら販売額の推移をみることができる。

 スーパーは、緩やかな出店数の増加が続いている。コロナ禍2年目に入り、引き続き内食需要のため飲食料品の好調が続いているが、2021年上期販売額は前年同期比で減少に転じた。前年はコロナ禍に伴う内食需要が急拡大したため〝特需〟の1年となり、店舗当たり販売額、販売額伸び率とも大幅な増加に転じたが、その反動による減少とみられる。

 コンビニエンスストアと百貨店は、コロナ禍で前年苦境が続いた業態のひとつだった。コンビニエンスストアは、2015年以降店舗当たり販売額増による拡大戦略に舵を切ったことから、出店抑制が続いている。前年は店舗当たり販売額が大幅に減少し、調査開始(1998年)以降増加が続いていた販売額伸び率が初めて減少となったが、2021年上期増加に転じた。消費者の外出自粛やテレワーク継続の影響により「ファーストフード及び日配食品」等は減少したが、前年10月からのたばこ税増税などに伴いまとめ買いされたたばこが無くなり、2021年10月からの増税を前に新たな需要増などで「非食品」が増加したことが考えられる。

 店舗集約が続く百貨店は、事業所当たり販売額が大幅増加し、2021年上期販売額は前年同期比で増加に転じた。商品別では「身の回り品」や貴金属や宝石など高額商品を含む「その他の商品」が増加に寄与し、2021年上期もインバウンド消費減少、営業短縮や外出自粛等の影響が続いたものの、前年の記録的な落ち込みの反動による増加がみられた。

 

勢いが続く家電大型専門店

 コロナ禍で販売額が減少する業態が多い中、専門量販店3業態(家電大型専門店、ドラッグストア、ホームセンター)は前年、好調の1年となった。

 2021年上期の家電大型専門店の販売額は前年同期比3.2%増加、好調が続いている。特別定額給付金効果などで前年の販売が好調だった6月を除き、増加傾向で推移した。商品別では、通信家電や生活家電が増加に寄与しており、これは、テレワークやリモート学習の増加、自宅で過ごす時間の増加によるパソコンやゲーム機などの情報家電の需要が一段落したことが考えられる。

 2021年上期の小売業販売は、記録的な落ち込みを見せた前年からの反動もみられたが、コロナ禍で分かれた業態間の好不調が続く結果となった。

 この他にも、「2021年上期小売業を振り返る」スライド資料では、今回紹介しきれなかったグラフや詳細を多数掲載している。

ミニ経済分析「2021年上期小売業販売を振り返る」