統計は語る

軽乗用車販売 コロナ禍で急落後、各社とも早期に回復

2020年の首位争いはスズキに軍配

 経済産業省では、国内で生産された鉱工業製品の出荷動向を知る指標として「鉱工業出荷指数」を作成し、毎月公表している。鉱工業全体のうち、自動車工業が占める割合は16%と非常に高く、毎月の生産・出荷動向には自動車が大きく影響する。とくに変動を大きく左右するのは輸出向けが最も多い普通乗用車だが、一方で軽乗用車は国内生産分の大半が国内販売になるため、海外要因による影響をあまり受けない製品のひとつとなる。

 今回は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、大きく落ち込んだ軽乗用車の販売動向にスポットライトを当てた。

2020年5月を底に大きく落ち込んだ自動車工業

 2020年の鉱工業出荷指数は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で前年比マイナス10.6%と大きく落ち込み、5月の指数値は75.9と2015年基準の最低値を記録した。また、内訳の自動車工業に関しても同様で、2020年の出荷指数は前年比マイナス18.0%、5月の指数値47.6となり、そのうち乗用車は、同マイナス18.7%、48.1とともに2015年基準最大の下落幅と最低の指数値を更新した。

 乗用車は、普通乗用車、小型乗用車、軽乗用車に区分され、そのうち出荷動向に大きく寄与するのは、最もウェイトが大きい普通乗用車だが、全ての指数が新型コロナウイルスの影響で5月を底に大きく落ち込んでいるものの、軽乗用車の出荷動向は、他と比べても回復が早かったことが分かる。

国内生産のほとんどが国内向け出荷になる軽乗用車

 輸出割合の推移をみると、毎年8割近くが輸出向けの普通乗用車に対し、軽乗用車は1%未満となっている。国内販売が生産に大きく影響していることが伺える。

 2020年における鉱工業製品の国内出荷と輸出の状況をみると、国内・輸出ともに5月に大きく落ち込んだ後、回復に転じているが、6月から9月までは、国内出荷が輸出の水準を上回っている。国内出荷が輸出よりも先行して回復していたため、国内販売中心の軽乗用車の回復が、輸出中心の普通乗用車よりも早かったと考えられる。

各社とも回復が早く、コロナ禍前の水準を超えて推移

 新車販売(登録台数)をメーカー別にみると、2020年は5月が底になる中、日産のみが、他社と比べ5月の落ち込みが小さく、4月が底になっている。3月末にフルモデルチェンジ発売された日産の新型車の販売が好調だったことが、このような動きにつながったものと考えられる。

 なお、大手4社の販売台数はコロナ以前の水準への回復も早く、足下でも販売堅調が続いており、とくに2020年下期はスズキの販売がずっと好調だった。

軽乗用車販売台数の年間首位争いで、2020年はスズキに軍配

 軽乗用車の年間販売台数の推移をみると、ダイハツとスズキのデッドヒートが続いている。両社ともに2020年は減ったが、スズキが2014年以来、6年ぶりに首位へ返り咲いた結果になった。

 2020年のコロナ禍では、首都圏などで軽乗用車の需要が高まったが、購入に当たっては、燃費性能なども重視されたようだ。スズキ、ダイハツの2020年の都道府県別での軽乗用車の販売状況を見ると、ほとんどの都道府県で前年比減少となり、その減少幅は、ダイハツの方が大きくなっているが、特徴的なこととして、東京ではスズキは前年比増、ダイハツは前年比減と明暗が分かれている点が挙げられる。

 スズキは、ハイブリッド車を販売しており、2020年の国内販売の5割以上がハイブリッド車となっている一方、ダイハツではハイブリッド車の販売は行っていない。今回、首都圏など比較的燃費が悪くなりやすい地域での需要が高かったことから、燃費性能の良いハイブリッド車を販売するスズキに軍配が上がったとも考えられる。

 6月1日に全軽自協から5月分の軽乗用車販売台数データが公表されたが、前年同月比プラス88.8%で、消費増税で大きく販売を落とした反動の2020年10月以来、8か月連続上昇となっており、2020年5月がコロナ禍における販売のボトムだったことから、足下でも大幅な反動増になっている。

 当面はしばらくこの動きが続くと考えられるが、これからダイハツをはじめとした他社の巻き返しなど、軽乗用車全体の国内販売動向が注目される。