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ビジネスと人権

責任ある企業行動に向けて

 6月13日に採択されたG7首脳声明にも盛り込まれた、「ビジネスと人権」の問題。サプライチェーン上における、(ILO中核的労働基準に基づく)強制労働・児童労働など人権侵害のリスクのある商品やサービスの取引・利用を規制することにより、人権侵害の根絶を目指す国際的な動きが高まっています。環境や人権に配慮した調達ガイドラインを策定し、自社内にとどまらず取引先にも遵守を求めるグローバル企業も増えており、日本企業にも、強制労働や人権侵害を防ぐ取組が求められています。また、いわゆる「ESG投資」の「S(社会)」に区分される重要な要素の一つであり、機関投資家による資金の呼び込みの観点からもその重要性は増しています。

(G7首脳声明抜粋)

国際機関によるフレームワーク

 第二次世界大戦後、人々の生活向上や雇用創出等における企業の役割の重要性が認識される一方で、企業活動が社会にもたらす負の影響についても関心が高まり、特にグローバルな活動を行う企業に対して責任ある行動が強く求められるようになりました。

 2011年に、国際連合の人権理事会で(全会一致で)支持された「ビジネスと人権に関する指導原則」(国連指導原則)では、国家の人権保護の義務とともに、企業には、その事業に関連する活動(取引先も含める)において人権を尊重する責任があることを明記し、その責任を実現する具体的方法として「人権デュー・ディリジェンス(人権DD)」(事業活動に伴う人権侵害リスクの把握・予防・軽減策を講じること)の実施も規定されました。

 OECDでは、多国籍企業に対して責任ある行動を自主的にとるよう勧告する「多国籍企業行動指針」を策定し、そのガイドラインとして、「責任ある企業行動のためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス」を提示しています。衣類・履物、鉱物等の一部セクターでは、産業特有のリスクを踏まえた詳細な手引書も公開しています。また、ILOでは、「多国籍企業宣言」を策定し、多国籍企業に対して、労働者の権利を尊重し、労働における基本的原則及び権利の実現に貢献すべきと、呼びかけています。

国内外の動き

 人権問題を事業のリスクや経営上対処すべき課題として捉え、欧米諸国では、企業による人権DDの実施・開示の義務付けや、人権侵害が懸念される商品への政府による輸出入規制導入の動きが加速しています。

 日本政府でも、2020年10月、国連指導原則等を実施するための、「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP)を策定しました。これに基づき、日本企業の人権DDの促進を行っています。加えて、中小企業への情報提供などを行う予定です。

 日本企業でも、「人権方針」の策定、社内の人権問題への取組のみならず、取引先からの調達活動に関する「調達方針」の中で人権への配慮を掲げる等、それぞれの実態に応じた取組が行われています。

 各国政府による取組を含め、詳細は経済産業省HPをご覧ください。

経済産業省 通商戦略室

 
【関連情報】

経済産業省HP(ビジネスと人権)