統計は語る

4月の鉱工業生産 2か月連続の前月比上昇も基調判断は据え置き

4月生産は2か月連続の前月比上昇

 2021年4月の鉱工業生産は、季節調整済指数99.6、前月比2.5%と、2か月連続の上昇となった。

 これまでの生産については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、2020年2月から5月まで大幅に低下した後、6月以降は一転、回復基調が続いてる。2021年2月は一時的に低下としたが、3月は再び上昇し、4月も連続での上昇となった。

 その結果、2021年4月の生産水準は、感染症拡大前の2020年1月(指数値99.1)を上回り、消費税率引き上げ前の2019年9月(指数値102.4)以来の水準にまで回復した。

12業種が前月比上昇、3業種が前月比低下

 4月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、12業種が前月比上昇、3業種が前月比低下という結果だった。

 4月は、半導体不足の影響などを受けて、自動車工業等が低下に寄与したものの、内外での設備投資の回復やIT関連需要の増加などから、汎用・業務用機械工業、電気・情報通信機械工業、生産用機械工業等が上昇に寄与した。

 主な上昇寄与業種についてみると、まず、上昇寄与の最も大きかった汎用・業務用機械工業は、前月比16.1%の上昇で、2か月ぶりの上昇だった。一般用蒸気タービン、空気圧機器、ポンプ等が上昇要因となっている。海外需要の高まりを受けて、生産増になったと考えられる。

 上昇寄与2位の電気・情報通信機械工業は、前月比10.9%の上昇で、3か月ぶりの上昇となった。無線通信機器や電池等が主な上昇要因となっている。国内向け情報通信設備の需要増加や、海外向け車載用電池の需要増加などが背景にあったと考えられる。

 上昇寄与3位の生産用機械工業は、前月比7.8%の上昇で、2か月ぶりの上昇となった。半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置や建設・鉱山機械等が上昇要因となっている。世界的な半導体関連の製造設備需要の増加や、海外向け建設・鉱山関連機械の需要増加などが背景にあったと考えられる。

出荷は2か月連続の上昇

 4月の鉱工業出荷は、季節調整済指数97.3、前月比2.6%と、2か月連続での上昇となった。

 業種別にみると、全体15業種のうち、11業種が上昇、4業種が低下となった。

 上昇寄与業種としては、寄与度の大きい順に、電気・情報通信機械工業、生産用機械工業、汎用・業務用機械工業等となっている。上昇寄与1~3位の業種については、生産と同様となっている。

 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、資本財(除.輸送機械)が前月比15.2%と大幅な上昇であったとことに加え、建設財は2.7%の上昇、非耐久消費財は1.4%の上昇、生産財は1.1%の上昇と、耐久消費財を除き、上昇となった。

 特に、資本財(除.輸送機械)では、海外での設備投資需要の高まりなどを受けて、大幅な上昇となった。

在庫は2か月ぶりの低下

 4月の鉱工業在庫は、季節調整済指数94.7、前月比マイナス0.1%と、2か月ぶりの低下となった。今基準内で2番目に低い水準となっている。

 業種別にみると、15業種のうち、12業種が低下、3業種が上昇となった。

在庫率は3か月ぶりの低下

 4月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数108.0、前月比マイナス1.8%と、3か月ぶりの低下となった。2019年5月以来の低い水準となっている。

 業種別にみると、15業種のうち、11業種が低下、4業種が上昇となった。

 特に、電気・情報通信機械工業は、低下寄与が大きくなっている。

 在庫循環図をみると、2020年第4四半期と2021年第1四半期は、「意図せざる在庫減局面」にあり、景況感の改善を眺めつつ、2021年第2四半期には、「在庫積み増し局面」に向かう動きにあると考えられる。

 ただし、生産前年同期比(横軸)については、2020年の生産水準が、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく低下していることから、その点には留意が必要と考えている。

4月の生産の基調判断は、「持ち直している」に据え置き

 4月の鉱工業生産は、前月比2.5%の上昇となった。生産は、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年2月から5月まで低下が続いた後、6月以降は一転、回復傾向が続いている。2021年2月は一時的に低下したものの、3月は再び上昇となり、4月も上昇が継続した。

 この背景には、世界的な半導体不足の影響などから、4月の生産は、自動車工業等で低下したものの、半導体関連の製造設備需要の増加に加えて、他の設備投資の回復やIT関連需要の増加が継続したことなどから、電気・情報通信機械工業や生産用機械工業、汎用・業務機械工業等で上昇したことがあると考えられる。

 一方、先行きに関しては、企業の生産計画では5月は低下、6月が上昇となっています。生産は、上下の振れはありつつも、均してみれば引き続き回復傾向にあると考えている。

 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の4月の基調判断については、「生産は持ち直している」に据え置く。

 他方、先行きは、半導体不足による影響や、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済の下振れリスクなどについて、引き続き注視していく必要がある。

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