統計は語る

3月の鉱工業生産 2か月ぶりの前月比上昇

四半期ベースでも上昇、基調判断は据え置き

3月生産は2か月ぶりの前月比上昇

 2021年3月の鉱工業生産は、季節調整済指数97.7、前月比2.2%の上昇となった。

 なお、鉱工業指数は2月確報の公表において年間補正を行い、前年2020年1月以降の公表値は見直されており、鉱工業指数をご覧になる際は注意していただきたい。

 3月当初の企業の生産計画に含まれる傾向的なバイアスを補正した試算値では、前月比マイナス1.4%の低下(90%レンジではマイナス3.1%~0.3%の間)となったが、実際の3月の生産は、試算値を大きく上回る上昇だった。福島県沖地震の影響からの挽回生産や、需要が好調であったことなどで、3月当初の生産計画が見直されたことが、例年の傾向を超える上昇となった背景にあると考えられる。

 生産は、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年2月から5月まで大幅に低下した後、6月以降は一転、回復基調が続いている。2021年2月は前月比で低下したが、3月は再び上昇した。

 ただ、3月の生産水準は、感染症拡大前の2020年1月(指数値99.1)と比べると未だ低く、今後も回復が期待される。

 なお、四半期ベースでは、2021年第1四半期の指数値は96.7となり、前期比3.0%の上昇と、3期連続の上昇となった。

9業種が前月比上昇、6業種が前月比低下

 3月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、9業種が前月比上昇、6業種が前月比低下という結果となった。

 3月は、電気・情報通信機械工業、汎用・業務用機械工業、生産用機械工業は低下に寄与したものの、自動車工業、無機・有機化学工業、プラスチック製品工業等が上昇に寄与した。

 主な上昇寄与業種についてみてみると、まず、上昇寄与の最も大きかった自動車工業は、前月比7.5%の上昇で、4か月ぶりの上昇。普通乗用車、自動車用エンジン等が上昇要因となっている。2月の福島県沖地震の影響で生じた部品供給不足の解消や海外向けの需要増があった一方、半導体不足の影響は3月は小さかったことで、生産増となったと考えられる。

 上昇寄与2位の無機・有機化学工業は、前月比6.5%の上昇で、2か月ぶりの上昇。エチレンやポリエチレン、合成ゴム等が上昇要因となっている。福島県沖地震の影響があった工場での生産回復や、需要の増加などが背景にあったようだ。

 上昇寄与3位のプラスチック製品工業は、前月比2.7%の上昇で、2か月ぶりの上昇。プラスチック製機械器具部品やプラスチック製容器(中空成形以外)等が上昇要因となっている。自動車関連需要や、コンテナ・パレットといった輸送関連需要の増加等が背景にあったようだ。

出荷は2か月ぶりの上昇

 3月の鉱工業出荷は、季節調整済指数95.2、前月比0.8%と、2か月ぶりの上昇となった。

 業種別にみると、全体15業種のうち、9業種が上昇、5業種が低下、1業種が横ばいとなった。

 上昇寄与業種としては、寄与度の大きい順に、自動車工業、無機・有機化学工業、鉄鋼・非鉄金属工業等となっている。上昇寄与1位・2位の業種については、生産と同様となっている。

 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比3.1%の上昇、最終需要財の出荷は前月比マイナス2.3%の低下だった。

 最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、まず消費財については、前月比2.6%と、2か月ぶりの上昇となった。そのうち耐久消費財の出荷については、前月比5.1%と、2か月ぶりの上昇。非耐久消費財の出荷は前月比0.8%と、4か月連続の上昇となった。

 一方、設備投資に使われる財である資本財(除.輸送機械)の出荷は、前月比マイナス5.4%の低下となり、2か月連続の低下となった。

 また、建設財は、前月比1.8%と、2か月ぶりの上昇となった。

在庫は3か月ぶりの上昇

 3月の鉱工業在庫は、季節調整済指数94.5、前月比0.1%と、3か月ぶりの上昇となった。在庫は上昇したとはいえ、今基準内で2番目に低い水準となっている。

 業種別にみると、15業種のうち、9業種が上昇、5業種が低下、1業種が横ばいとなった。上昇寄与が大きかった業種としては、自動車工業、汎用・業務用機械工業、電気・情報通信機械工業等が挙げられる。

 在庫循環図をみると、2021年第1四半期は意図せざる在庫減局面にあり、在庫調整が着実に進んでいる様子がみられる。

3月の生産の基調判断は、「持ち直している」を据え置き

 3月の鉱工業生産は、前月比2.2%の上昇となった。生産は、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年2月から5月まで低下が続いた後、6月以降は一転、回復傾向が続いている。2021年2月は低下したものの、3月は再び上昇となった。

 この背景には、2月に発生した福島県沖地震の影響による生産減からの回復があったことや、需要が好調であったこと、また半導体不足の影響が3月は小さかったことなどにより、自動車工業や無機・有機化学工業等の業種で生産が増加したことが挙げられる。

 一方、先行きに関しては、企業の生産計画では4月は大幅な上昇、5月は低下となっている。生産は上下の振れはありつつも、均してみれば回復傾向は続いているものと考えられる。

 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の3月の基調判断については、「生産は持ち直している」を据え置く。他方で、先行きに関しては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による内外経済の下振れリスクや、半導体不足による影響などサプライチェーンの状況にも引き続き注意する必要がある。4月以降の生産の動向についても十分注意してみていきたいと考えている。

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