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企業経営に求められるサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)


 2014年の「伊藤レポート」では、イノベーション創出力を持つ日本企業の持続的な企業価値向上の促進のためには、企業と投資家の対話が鍵となると指摘された。2017年には対話の共通言語として、「価値協創ガイダンス」を策定し、対話を通じた中長期的な企業価値向上を後押ししてきた。

日本企業の現在地

 伊藤レポート公表後、資本効率性に関する企業の意識や投資家との対話の取組は向上している。一方で、日本企業のROEは、欧米企業とは依然として差がある。また、経常利益が増加した企業においても、中長期的な企業価値向上に必要な無形資産投資に対する経営資源の配分は相対的に小さい。

中長期の持続的な企業価値向上に対する課題

 こうした背景には、企業と投資家の対話が、いまだ中長期的な企業価値向上につながる質の高いものとなっていないという課題がある。特に、技術革新の変化等の不確実性の高まりや、ESG等の社会のサステナビリティ要請の高まりを背景に、①多角化経営や②新規事業創出に向けた種植え、③社会的価値と経済的価値の両立といったテーマにおいて、企業と投資家の認識のギャップが根強い。

SXによる問題解決を

 こうした課題を踏まえ、中長期的な企業価値向上を実現するためには、経営・対話の前提となる時間軸を伸ばした上で、企業のサステナビリティ(稼ぐ力の強化・持続化)と社会のサステナビリティ(長期の社会課題解決)を同期化し、長期の時間軸を踏まえて社会課題を企業経営に取り込んでいく、また、不確実性に備えて投資家との継続的な対話によってレジリエンスを強化する「SX(サステナビリティートランスフォーメーション)」の取組が必要である。

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