統計は語る

2020年12月のサービス産業 「対個人向け」に弱さで2か月連続低下

緊急事態宣言再び発出でさらに下振れ懸念も


 2020年12月のサービス産業(第3次産業)活動指数は、指数値97.8、前月比マイナス0.4%と2か月連続の低下となった。
 サービス産業活動は、昨年、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大し、昨春には緊急事態宣言が発出されたこともあり、昨年5月まで大幅な低下が続いていた。その後、緊急事態宣言の解除などもあり、6月以降、5か月連続で上昇が続いたが、11月、12月は連続低下となった。
 ただ、四半期では、2020年10-12月期は前期比2.8%の上昇となっており、短期的なトレンドを示す後方3か月移動平均値も前月比上昇となっている。
 活動水準に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響が現れる前の昨年1月(指数値101.9)以前と比べると、いまだ低い水準だが、昨年5月までの大幅低下からは4分の3近く回復した水準にあり、3月(指数値97.3)を上回っている。

生活娯楽関連や金融業、保険業など低下

 2020年12月の業種別の動きをみると、11業種中、6業種が前月比低下、4業種が前月比上昇、1業種が横ばいという結果となった。
 12月は、「医療, 福祉」、卸売業、「電気・ガス・熱供給・水道業」などは上昇したものの、生活娯楽関連サービス、「金融業, 保険業」、「運輸業, 郵便業」などが低下したことにより、サービス産業全体としては低下することとなった。

 生活娯楽関連サービスに関しては、12月は前月比マイナス5.5%と、4か月ぶりの低下となった。内訳業種では「飲食店, 飲食サービス業」や宿泊業がともに前月比マイナス10%を超える大幅な低下となった。感染症の急拡大により、12月は「飲食店, 飲食サービス業」では、外出や会食の自粛要請、営業時間短縮要請、一部都道府県でのGo Toイート事業の一時停止などがあったことや、宿泊業でもGo Toトラベル事業の一時停止、帰省の自粛要請などがあったことが要因として考えられる。
 「金融業, 保険業」に関しては、12月は前月比マイナス3.9%と、5か月ぶりの低下となった。内訳業種をみると、「銀行業・協同組織金融業」などが低下しているが、元々「金融業, 保険業」はこのところ高水準が続いており、そこからの反動減とも考えられる。
 「運輸業, 郵便業」は、前月比マイナス2.7%と、3か月連続の低下となった。内訳業種では鉄道業、郵便業(信書便事業を含む)などが低下に寄与した。鉄道業に関しては、感染症の急拡大により、帰省や外出の自粛要請があったことや、Go Toトラベル事業の一時停止、大雪の影響などが要因として考えられる。郵便業に関しては、年賀郵便物の減少をはじめ、郵便引受数が全般的に振るわなかったようだ。

「対事業所」は連続上昇に一服感

 サービス産業活動指数は、大きく「広義対個人サービス」と「広義対事業所サービス」に分けることができる。
 12月の対個人サービス活動指数は、指数値96.3、前月比マイナス0.6%と2か月連続の低下だった。対事業所サービス活動指数は、指数値98.0、前月比マイナス1.1%と7か月ぶりの低下だった。
 対個人サービスについては、12月も感染症の拡大が続いたことを背景に、連続低下となり、弱さが感じられる。
 対事業所サービスについては、やや大きめの低下となったが、6月以降連続上昇が続いていたところからの一服とも考えられる。

「非製造業依存型事業所向け」は4か月ぶりの低下

 対事業所サービスは、製造業の取引先が多いか、そうでないかによって、製造業依存型と非製造業依存型に分けることができ、それぞれの指数も計算している。
 12月は、製造業依存型事業所向けサービスは前月比マイナス0.4%と2か月ぶりの低下だった。非製造業依存型事業所向けサービスは前月比マイナス1.5%と4か月ぶりの低下だった。

「非選択的」「し好的個人向け」は2か月連続で

 対個人サービスは、生活必需的な性質で変動が相対的に少ないと考えられる非選択的サービスと、選択性が高く所得環境や経済情勢等の影響を受けやすいと考えられるし好的サービスに分けられ、それぞれの指数も計算している。
 それぞれの動向についてみてみると、12月は非選択的個人向けサービスは前月比マイナス0.2%と2か月連続の低下だった。し好的個人向けサービスは前月比マイナス1.4%と2か月連続の低下だった。

基調判断は下方修正

 2020年12月のサービス産業活動指数は、前月比マイナス0.4%と、2か月連続の前月比低下となった。連続低下とはなったものの、四半期でみれば7-9月期に続いて2期連続での上昇となっており、また短期的トレンドを示す後方3か月移動平均値も上昇は続いている。活動水準も、昨年5月までの活動水準や7-9月期の活動水準と比べれば、12月は回復している状況だ。
 ただ他方、12月は、感染症の拡大を受け、Go To事業など各種の需要喚起策の一時停止や、会食・帰省等の自粛要請、飲食店の営業時間短縮要請などもあったことで、広義対個人サービス活動は2か月連続で低下し、財(モノ)以外の弱さが感じられる。
 こうした状況を踏まえ、サービス産業(第3次産業)活動指数の2020年12月の基調判断については、前月の「持ち直しているものの、一部に足踏みがみられる」から「持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」へと下方修正した。
 なお、先行きについては、感染症の拡大が続いたことにより、本年1月には緊急事態宣言が再び発出されたことで、サービス産業活動はさら下振れする可能性は否めない。このため、サービス産業活動の先行きについては、引き続き注視していきたい。

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参考図表集

『就職にも使える! 第3次産業活動指数』(マンガ)