統計は語る

暮らしに欠かせない電池 生産指数にみる「主役」の変遷

成長著しいリチウムイオン蓄電池


 日々の生活で使う家電のリモコンやスマートフォン、いざという時のための懐中電灯や病院などの非常用電源、おもちゃの自動車から本物の自動車までと、身近なところから非常時まで、私たちの生活のあちらこちらで「電池」が使われている。今回はこの「電池」の国内生産の状況についてみていこう。

繰り返し使える「蓄電池」の生産割合が年々増大

 2000年以降の「電池」の生産金額をみてみると、2000年が8500億円弱と最も高く、その後、やや水準を下げ推移してきたが、2008年には再び8000億円を超えた。しかしリーマン・ショックのあった翌2009年、やや大きめの減少をみせた後、小幅な増減をしながらも再び上昇傾向で推移し、2017年以降は3年連続で8000億円を超える水準で推移している。

 電池には使い捨ての「乾電池(一次電池)」と、充電し繰り返し使える「蓄電池(二次電池)」があるが、それぞれの生産金額が電池全体に占める割合をみてみると、2002年までは「乾電池」が23%前後、「蓄電池」(鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、リチウムイオン蓄電池の合計)が77%前後という構成比だった。
 2003年以降、「蓄電池」の占める割合が徐々に増え、2012年には初めて90%を超え、直近の2019年には92%を超えるまでに増加している。「乾電池」の割合は8%を切った。
 また、この「蓄電池」の中でも、「アルカリ蓄電池」と「リチウムイオン蓄電池」の割合が増加しており、この二つが近年の蓄電池の生産上昇をけん引している。

生産指数でみる、近年の電池の動き

 鉱工業指数では「電池」のほか、その内訳品目として、「乾電池」と、「蓄電池」である「鉛蓄電池」、「アルカリ蓄電池」、「リチウムイオン蓄電池」の合計4系列で指数を作成・公表している。では、指数で「乾電池」と「蓄電池」それぞれの近年の生産動向についてみてみよう。
 本年第2四半期に新型コロナウイルス感染症の影響で大きく低下したのはどの品目にも共通だが、乾電池と鉛蓄電池については、2013年第1四半期から2020年第1四半期まで、上下動はあるものの比較的安定した動きをみせている。
 一方、リチウムイオン蓄電池は、2013年当初は指数値60以下と低い水準からのスタートだったが、その後ぐんぐんと伸びていき、一時的な低下がみられた時があったものの、2018年第1四半期には160目前まで指数水準を上昇させ、大きな伸びをみせた。ただその後、生産は一旦低下し、それまでの上昇ペースに陰りがみられる。
 また、アルカリ蓄電池については、2013年以降、一旦低下したものの、2015年を底に上昇に転じ、以来、2019年までは上昇傾向が続いていた。

生産金額大きい「車載用」

リチウムイオン蓄電池については、軽くて大きな電力を持つという特性から、近年著しい成長をみせている。この普及によりビデオカメラや携帯電話の小型化・軽量化も進んだが、近年の生産金額を「車載用」と「その他」に分けて比べてみると、「車載用」の生産金額が大きく、増加傾向にあったことが分かる。ただ2019年は、車載用も生産金額は減少した。

 リチウムイオン蓄電池(車載用)については、自動車のEV化が世界的に進むなかで、輸出がその生産増加をけん引していた。ただ、近年は輸出に落ち込みもみられる。詳しくはひと言解説「社会に貢献するリチウムイオン蓄電池;その国内生産の動向」で解説しているのでご覧頂きたい。

ニッケル・水素電池が再び堅調なアルカリ蓄電池

 他方、アルカリ蓄電池については、主なものとしてニッケル・水素電池がある。リチウムイオン蓄電池の方がエネルギー密度は高く、より小型化・軽量化が可能であるものの、ニッケル・水素電池も、高容量で長い期間にわたって使うことができ、安価に製造できることから、電子機器の小型化にも貢献してきた。小型や中型のものはビデオカメラやノート型パソコン、電動アシスト自転車、ハイブリッド車などに、大型のものになると、UPS(無停電電源装置)や病院、工場などの非常用電源にも使われている。乾電池型の蓄電池も、ニッケル・水素電池が主流のようだ。
 ニッケル・水素電池に関しては、リチウムイオン蓄電池へのシフトなどもみられるものの、ハイブリッド車需要も根強く、近年は再び生産が堅調に推移していた。

 このように、電池と言っても、近年は充電し繰り返し使える蓄電池が、一層さまざまな場面で用いられるようになっている。日々使う身近な電子機器や携帯電話から、「自動車」という大きなものを動かすための電池に至るまで、形も大きさも性能もさまざまだが、そのたゆまぬ発明や実用化によって、私達の生活が快適になったことは確実である。
 これからも私たちの生活を支えてくれる、なくてはならないアイテムのひとつであることは確かなのではないだろうか。