統計は語る

8月の鉱工業生産 3か月連続の前月比上昇もさらなる回復に期待

先行きも強気の生産計画


 本年8月の鉱工業生産は、季節調整済指数88.7、前月比1.7%と、3か月連続の前月比上昇となった。8月当初の企業の生産計画では前月比4.0%上昇となっていたが、実際の8月の生産も、企業の生産計画ほどではなかったものの、上昇となった。
 生産は、2月以降新型コロナウイルス感染症の影響が現れ、5月まで4か月連続での低下となり、指数水準も大幅に低下していたが、6月以降、上昇が続いている。ただ、生産水準はいまだ低く、今後のさらなる回復が期待されるところだ。

自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業など上昇大きく

 8月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、10業種が前月比上昇、4業種が前月比低下、1業種が横ばいという結果だった。
 8月は、特に自動車工業の上昇寄与が大きく、次いで鉄鋼・非鉄金属工業、電子部品・デバイス工業などが上昇に寄与した。

 上昇寄与の最も大きかった自動車工業は、前月比8.9%の上昇で、3か月連続での大幅な上昇となった。普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品、普通トラックなどが上昇要因となっている。生産水準は依然低いものの、例年よりも7月から8月にかけての生産の減少幅が小さかったことや、新型車の生産開始も上昇の要因としてあるようだ。
 上昇寄与2位の鉄鋼・非鉄金属工業は、前月比6.5%の上昇で、2か月連続の大幅な上昇だった。特殊鋼熱間圧延鋼材や、普通鋼鋼帯等が上昇要因となっている。自動車向けの生産の増加や、翌月の設備修理に向けた生産増などが上昇の要因としてあるようだ。
 上昇寄与3位の電子部品・デバイス工業は、前月比4.6%の上昇で、3か月連続の大幅な上昇だった。モス型半導体集積回路(メモリ)や水晶振動子・フィルタ・複合部品などが上昇要因となっている。モバイル・SSD向けの生産増やアジア向けの生産増が上昇の要因としてあるようだ。

出荷は前月比2.1% 3か月連続の上昇

 8月の鉱工業出荷は、季節調整済指数87.6、前月比2.1%と、3か月連続の上昇となった。国内外での経済活動の再開の動きに伴い、国内外で需要の回復が見られたことが、出荷の上昇につながったものと考えられる。

 業種別にみると、全体15業種のうち、9業種が上昇、6業種が低下となった。
 上昇寄与業種としては、寄与度の大きい順に、自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業、輸送機械工業(自動車工業を除く)などとなった。
 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比3.4%の上昇、最終需要財の出荷は前月比0.1%の上昇だった。
 最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、まず消費財については、出荷は前月比1.3%、3か月連続の上昇となった。特に耐久消費財の出荷が、普通乗用車の大幅上昇の影響が大きく、前月比5.6%と、3か月連続の上昇となった。非耐久消費財の出荷は前月比マイナス1.4%と、3か月ぶりの低下となった。
 一方、設備投資に使われる財である資本財(輸送機械を除く)の出荷は、前月比マイナス8.7%と、2か月連続の低下となった。
 また、建設財は、前月比0.3%と、3か月連続の上昇となった。

在庫は5か月連続低下

 8月の鉱工業在庫は、季節調整済指数97.9、前月比マイナス1.4%と、5か月連続の低下となった。本年4月まで高めの水準が続いていた在庫だが、その後生産調整が進められるなかで、在庫調整も進んでいるようだ。
 業種別にみると、15業種のうち、12業種が低下、3業種が上昇となった。低下寄与が大きかった業種としては、鉄鋼・非鉄金属工業、無機・有機化学工業、電気・情報通信機械工業などが挙げられる。

基調判断は上方修正

 本年8月の鉱工業生産は、3か月連続の前月比上昇となった。生産は、新型コロナウイルス感染症の影響で2月以降、5月まで低下が続いていたが、6月以降、3か月連続ではっきりとした上昇が続いている。
 この背景をみると、5月まで感染症の影響により、自動車工業を始めとして大幅な生産調整が行われていたが、国内外での経済活動再開の動きに伴い、需要の回復なども進んだことで、8月も生産が上昇したと考えられる。一方で、高止まりしていた在庫の低下が続いており、在庫調整も進んできていることが考えられる。
 また、先行きに関しては、企業の生産計画では9月、10月は上昇となっている。特に9月の生産計画は上方修正されており、企業は8月に実現できなかった生産を挽回する、強気の計画となっている。10月の上昇には不確実性もあるにせよ、生産は、当面、上昇が続くことが期待される。
 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の8月の基調判断については、「生産は持ち直している」と上方修正した。他方で、ただ、最近の感染症の感染再拡大の影響等については引き続き注意する必要があり、9月以降の生産の動向についても注視していきたい。

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