どこにゲーム業界とアニメ業界の転換点があったのか?
情報通信業基本調査(注)のデータから、日本の2大コンテンツであるゲームとアニメを支える制作会社の実像について見ると、2010~2011年度をはさんで、各ビジネスのデータに大きな差異が見出された。その「転換点」を機に、ゲーム業界とアニメ業界に何が起きていたのか、確認してみた。
ゲームは大作、アニメは多作志向に
上の棒グラフは1社あたり平均自社開発コンテンツ数、折れ線グラフは1作品あたり平均単価を表している。
左上の棒グラフから、ゲーム会社は2011年度に開発作品数が急増したことがわかる。しかし、その後は減少傾向にある。同時に、折れ線グラフから作品単価が上昇傾向になったことがわかる。すなわち、作品数を絞りつつ大作化する傾向が明確になっている。
右上の棒グラフから、アニメ会社は2010年度に開発作品数が高い水準にあったにもかかわらず、翌2011年度に一旦、作品数が減少し、その後は増加傾向となっていることがわかる。また、折れ線グラフからは、2011年度に一旦単価が急上昇した後、停滞はしているが、単価水準自体は以前の水準を上回っている。
作品増への対応方法でも違いが
ゲームもアニメも人手をかけて作品を制作するビジネスだが、作品数が急増した年に、それぞれどのように対応したのだろうか。上のグラフは、従業者の雇用形態別の構成比だ。
左上のグラフを見ると、ゲーム会社では作品数が急増した2011年度に、パートタイム従業者の割合が急増している。折れ線が示すように、この年は、ゲーム会社で1社あたり従業者数が特異的に上昇した年でもあり、これがパートタイム従業者の増加によるものであったことがわかる。
右上のグラフを見ると、アニメ会社では、作品数が高い水準にあった2010年度に、契約社員の比率が目立って高かったことがわかります。また、アニメ会社はこの年に外部委託率が一時的に高まっており、外部委託も拡大して、業務量の増大をまかなっていたと考えられる(日本の2大コンテンツ、ゲームとアニメの制作企業の実像を比較する(その4);コンテンツ制作の外部委託といっても、ゲームとアニメでは態様が大分異なることがデータから分かる。ゲームは内外分業型で、アニメは一蓮托生型。)。
ゲーム会社は、2012年度に開発本数が減少すると人員を減少さた。減少させた人員の多くはパートタイム従業員のように見える。アニメ会社は、2011年度に開発業務が減少すると、人員を若干減らしているものの契約社員を全て減らしたというのではなく、そのうち何割かを正社員に転じさせ、正社員比率を高めたように見える。
海外志向を強めるゲーム会社
ゲーム会社は、2012年度以降、大作化の傾向を明確にすると同時に、外部委託の在り様も大きく変化させた。上のグラフは、ゲーム会社の「関係会社」への外部委託(金額ベース)を国内外の別に示したものだ。2012年度以降、海外の関係会社への委託が急増しているのがわかる。これは、特に大作ゲームは海外展開することを前提に、最初から海外版の制作を海外の関係会社に委託していることによるものと考えられる。また、先進的なCGレンダリング技術(コンピューター・プログラムを用いて画像・映像・音声などを生成すること)の取り入れに積極的なゲーム会社が海外の技術を買っているという面も考えられる。このように、大作化と同時に海外志向が明確になっている。
アニメ会社は権利志向を強めたが・・
アニメ会社は、制作本数が大きく落ち込んだ2011年度に権利保有に積極的に乗り出した様子が見て取れる。
上のグラフは、アニメ会社の自社開発コンテンツに関する1次利用及び2次利用の権利の保有割合(作品数ベース)を、保有割合のカテゴリー別構成比にしたものだ。2010年度時点では、権利保有がない作品が約8割を占めていましたが、制作作品本数が急低下した2011年度には、一次利用、二次利用の50%以上権利を保有する作品の割合を高めた。特に、アニメ市場は二次市場が大きいので、二次利用権利の確保が収益状況を左右する面があるが、その後は、権利保有割合が減少している。
ゲームとアニメの「転換点」対応の違い
ゲーム会社は2011年度の作品数の一時的な急増を、派遣従業員を確保することで乗り切った後、多作志向と海外との連携強化という方向を進んだ。アニメ会社は、2011年度の作品数の急減と共に生じた単価アップで正社員化を進めつつ、多作化も進め、同時に、権利保有の強化を図ったようだが、こと権利面の状況は維持できなかったようだ。
(注)ゲーム会社とアニメ会社については、当該事業に属する事業所を有する企業のうち、資本金額又は出資金額3,000 万円以上の企業を調査対象としている。
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