統計は語る

4月の鉱工業出荷 国内向け、輸出向けとも大幅低下

低水準からの需要回復にはなお時間

最低水準を更新

 本年4月の鉱工業出荷は、季節調整済指数で85.0、前月比マイナス8.8%と2か月連続の低下だった。内需(国内向け出荷)は前月比マイナス7.4%の低下、外需(輸出向け出荷)は前月比マイナス12.6%の低下と、ともに2か月連続の低下だった。特に輸出向け出荷は3月に続いての二桁台のマイナスとなり、国内向け・輸出向けとも大幅な低下となった。
 出荷水準をみると、まず国内向け出荷指数については、4月の指数値は87.4となった。国内向け出荷は、昨年10月に大幅に低下し、小幅な回復が続いたものの低い水準で推移し、3月に低下に転じた後、4月は大幅な低下となった。3月に続き、2015年基準の最低水準を更新した。
 輸出向け出荷指数は、4月の指数値は77.7となった。2018年後半以降、低下傾向が続いており、2月は4か月ぶりに上昇に転じたものの、3月、4月と大幅に低下し、国内向け出荷と同様、2015年基準の最低水準を更新した。

国内向け、輸出向けとも輸送機械工業の低下大きく

 4月の国内向け出荷の業種別動向をみると、12業種中11業種が前月比低下した。特に低下寄与が大きかったのは輸送機械工業だった。なかでも乗用車、車体・自動車部品などが低下した。
 それに次ぐ低下寄与をみせたのは鉄鋼・非鉄金属工業だった。なかでも非鉄金属精錬・精製品、非鉄金属鋳物などが低下した。

 4月の輸出向け出荷の業種別動向をみると、12業種中10業種が前月比低下となった。特に低下寄与が大きかったのは輸送機械工業だった。なかでも乗用車、車体・自動車部品などが低下した。
 次いで、汎用・業務用機械工業の低下寄与が大きくなった。なかでもポンプ・圧縮機器、光学機器・レンズなどが低下した。

国内外の生産活動低迷響く

 4月の需要先別用途別分類(財別分類)の国内向け/輸出向け出荷の動きを比較してみる。
 まず、製造業の中間投入となる鉱工業用生産財については、国内向け出荷は前月比マイナス10.8%と2か月連続の低下だった。輸出向け出荷は前月比マイナス10.7%と2か月連続の大幅低下だった。国内・海外ともに鉱工業の生産活動が低迷したこともあり、生産財の出荷も国内向け・海外向けともに大きく低下したようだ。
 設備投資向けとなる資本財(輸送機械を除く)については、国内向け出荷は前月比8.6%と3か月ぶりの上昇だった。輸出向け出荷は、前月比マイナス4.6%と2か月連続の低下となった。
 建設財については、国内向け出荷は前月比マイナス0.7%と2か月連続の低下だった。輸出向け出荷は前月比マイナス8.8%と2か月連続の低下だった。

 消費向けの財では、まず耐久消費財の国内向け出荷は前月比マイナス26.4%と3か月連続の低下となった。輸出向け出荷についても、前月比マイナス46.7%と2か月連続の大幅低下となった。国内向け・輸出向けとも、乗用車の低下寄与が特に大きかったようだ。
 非耐久消費財については、国内向け出荷は前月比マイナス0.9%と2か月連続の低下、輸出向け出荷は前月比7.4%と2か月ぶりの上昇となった。
 国内向け、輸出向けそれぞれの財別の寄与度でいうと、国内向け出荷では資本財(輸送機械を除く)を除くすべての財が低下しており、特に生産財が低下に寄与した。
 輸出向け出荷では非耐久消費財を除くすべての財が低下し、生産財、耐久消費財等が低下に大きく寄与した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大が世界的に企業の生産・販売両面に大きく影響したことも背景にあると考えられる。

中国・韓国向けは上昇だが

 4月の主要仕向け先別の輸出向け出荷の動きをみると、中国、韓国向けは上昇したものの、米国、欧州向けが大幅な低下となっている。中国では経済活動再開の動きもみられたが、欧米では厳しい外出制限などの措置がとられた影響もあると考えられる。米国、欧州向けともに、乗用車が特に低下に寄与したようだ。

輸入は上昇

 一方、輸入の動向をみると、4月は前月比3.1%と2か月連続の上昇となった。2月に前月比マイナス13.5%と大きく低下し、3月にこの低下分を取り戻したあとの上昇となっている。中国からの輸入が上昇に寄与している。
 業種別の動向をみると、13業種中8業種が前月比上昇となった。一方、国産が前月比マイナス7.6%と2か月連続の低下となり、鉱工業総供給も、前月比マイナス4.9%と2か月ぶりの低下となった。
 4月の輸入の上昇は、特に電気・情報通信機械工業が寄与した。電子計算機や情報端末装置などが上昇に寄与した。

 4月の出荷は国内向け・輸出向けともに大幅に低下し、2015年基準で最も低い水準となった。これは、新型コロナウイルスの感染が内外ともに拡大し、国内でも緊急事態宣言が発せられたことにより、国内外で様々な経済活動が制限された影響が大きいと考えられる。5月は諸外国でも経済活動再開の動きがみられるとともに、日本の緊急事態宣言も地域ごとに解除されるなどの動きもあったが、内外の需要回復にはまだしばらく時間がかかるものと考えられ、またサプライチェーンの混乱にも注意が必要だ。5月以降も当面、出荷は国内向け・輸出向けとも低い水準が続くおそれもあり、それぞれどのように推移していくのかが注目される。

【関連情報】

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参考図表集

鉱工業出荷内訳表、総供給(いわゆるバランス表)をちょっとながめてみました