統計は語る

4月の鉱工業生産 最低水準を大幅更新

新型コロナの影響 さらに拡大

前月比マイナス9.1% 3か月連続の低下

 本年4月の鉱工業生産は、季節調整済指数87.1、前月比マイナス9.1%と、3か月連続の前月比低下となった。4月当初の企業の生産計画では前月比1.4%上昇、これに含まれる例年のバイアスを補正した試算値では、最頻値で前月比マイナス1.3%(90%レンジでマイナス2.3%~マイナス0.4%)の低下となっていたが、試算値を大幅に下回る、2015年を100とする今基準内でも最大の低下幅となった。
 生産は、2月から新型コロナウイルス感染症の影響が現れ、2月は前月比マイナス0.3%の低下、3月は前月比マイナス3.7%の低下だったが、4月は、低下幅はさらに大きくなり、生産水準も急速に低下している。4月の季節調整済指数87.1は、これに次ぐ2013年1月の指数値94.8と比較しても、群を抜いて低い今基準内で最低の水準まで低下した。

自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業など大幅低下

 4月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、14業種が前月比低下、1業種が前月比上昇という結果だった。
 4月は、自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業、輸送機械工業(自動車工業を除く)をはじめ、幅広い業種で大幅な低下がみられた。

 低下寄与の最も大きかった自動車工業は、前月比マイナス33.3%の低下で、3か月連続での低下となった。低下幅も今基準内で群を抜いて最大となっている。普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品などが低下要因となっている。新型コロナウイルス感染症の影響で、部品供給の遅れや需要の低迷、工場稼働停止などもあり、生産調整が行われたことが低下の要因としてあるようだ。
 低下寄与2位の鉄鋼・非鉄金属工業は、前月比マイナス14.3%の低下で、2か月連続の大幅な低下だった。低下幅も今基準内で最大となっている。ダイカスト、普通鋼鋼帯などが低下要因となっている。新型コロナウイルス感染症の影響で、自動車メーカーも生産調整を行ったことや、その他でも需要の減少があったことが低下の要因としてあるようだ。
 低下寄与3位の輸送機械工業(自動車工業を除く)は、前月比マイナス25.0%の低下で、3か月連続の低下だった。低下幅も今基準内で最大となっている。航空機用発動機部品や航空機用機体部品などが低下要因となっている。新型コロナウイルス感染症の影響で客先の工場が稼働停止したことが低下の要因にあるようだ。

出荷は前月比マイナス8.8%の低下

 4月の鉱工業出荷は、季節調整済指数85.0、前月比マイナス8.8%と、2か月連続の大幅な低下となった。4月の出荷は、生産と同様、大きく低下した。

 業種別にみると、全体15業種のうち、13業種が前月比低下、2業種が前月比上昇と、ほとんどの業種で出荷が低下した。
 低下寄与業種としては、寄与度の大きい順に、自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業、汎用・業務用機械工業などとなった。
 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比マイナス11.0%の低下、最終需要財の出荷は前月比マイナス6.5%の低下だった。
 最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、まず消費財については、出荷は前月比マイナス10.7%、2か月連続の低下となった。特に耐久消費財の出荷が、乗用車の大幅低下の影響が大きく、前月比マイナス31.7%と、3か月連続の低下となった。非耐久消費財の出荷は前月比マイナス0.6%と、2か月連続の低下となった。
 一方、設備投資に使われる財である資本財(除.輸送機械)の出荷は、半導体製造装置などの上昇により、前月比1.9%と上昇し、2か月ぶりの上昇となった。
 また、建設財は、前月比マイナス1.3%の低下となり、2か月連続の低下となった。

在庫は2か月ぶりの低下

 4月の鉱工業在庫は、季節調整済指数106.1、前月比マイナス0.3%と、2か月ぶりの低下となった。業種別にみると、15業種中、5業種が低下、10業種が上昇だった。低下寄与が大きかった業種としては、鉄鋼・非鉄金属工業、生産用機械工業、金属製品工業などが挙げられる。
 在庫については、本年3月に今基準内の最高水準を更新したが、4月は低下した。感染症の影響で国内外の需要は低迷しているが、生産調整が行われていることで、在庫は積み上がらなかったものと考えられる。

基調判断を下方修正

 本年4月の鉱工業生産は、3か月連続の前月比低下となった。新型コロナウイルス感染症の影響は2月から現れ、生産の低下がみられたが、3月、4月とその影響がさらに拡大し、4月は国内外での需要の減少や、部品供給の遅れ、感染拡大防止のための工場の稼働の低下などが生じたことにより、幅広い業種で生産が低下し、低下幅は特に大幅なものとなった。指数値は今基準内での最低値を大幅に更新し、非常に低い水準へと低下している。
 一方、先行きに関しては、企業の生産計画では5月は低下、6月は上昇となっている。これは5月上旬に実施した調査結果の集計であるため、感染症をめぐる緊急事態宣言の解除など、5月上旬以降の新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢変化は十分には織り込まれていると考えにくく、不確実性も多分にあるものの、企業の生産計画に元々含まれている上方バイアスも考えると、5月も低下の可能性は高いと考えられる。
 このように生産は、新型コロナウイルス感染症の影響がさらに拡大し、4月の指数値も特に大きく低下した。今後も不確実性は多分にあるが、5月までは低下が続くものと考えられる。こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の4月の基調判断は、「生産は急速に低下している」と下方修正し、先行きも十分注意してみていきたい。

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マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」