統計は語る

4月の生産予測修正率 今基準内最大の下げ幅に

企業、先行き見通せず


 経済産業省では、毎月初旬にその月と翌月の生産計画を、主要製品の主要企業について調査している。今回は、4月初旬に調査した4月と5月の生産計画の状況と、4月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介する。

今後下振れの可能性も

 4月の生産計画については、前月比1.4%の上昇を見込むという結果になっている。この計画どおりに実際に生産されれば、4月の鉱工業生産の実績は、3か月ぶりの前月比上昇となる。
 5月の生産計画は、この4月計画からマイナス1.4%の低下という生産計画になっている。
 ただし、今回の調査結果は、4月当初の生産計画に基づくものだが、4月上旬以降も、新型コロナウイルス感染症の影響は世界的に拡大・継続しているのみならず、日本でも新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が行われ、4月16日には全都道府県が緊急事態措置の対象となるなど、その影響は内外ともに広がっている。そうした情勢変化の影響は十分には織り込まれておらず、また企業も先の見通しを立てることが難しくなっている。そのことに留意して今回の調査結果をみる必要がある。

弱気の側面進む

 調査結果から、企業の生産活動に対するマインドをみる場合、生産計画と前年実績の水準を比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかの一つの目安となる。
 4月の生産計画は、前年同月実績比マイナス6.3%と3か月連続の低下を見込んでおり、弱気の側面がみられる。

 また、生産予測調査は、その調査月と翌月の生産計画を調べているため、同じ月の生産計画を2回調べる仕組みになっている。調査月の生産計画が、前回調査の生産計画からどのくらい変動したのかを予測修正率という。
 4月の予測修正率はマイナス7.1%と大幅なマイナスとなり、7か月連続で下方修正されている。予測修正率のマイナス7.1%は今基準内最大の低下幅で、基準は異なるもののリーマンショック当時最大のマイナス12.1%(2009年1月調査)、東日本大震災当時のマイナス15.9%(2011年4月調査)の予測修正率に次ぐ大幅な低下となっている。
 このように予測修正率からは、4月は弱気の面が急速に進んだ結果となっている。

 各社品目ごとに生産計画を上方修正した数と下方修正した数を比較して、その比率の差分を計算した指標を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでおり、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量る指標として活用している。
 4月調査結果では、3月のマイナス18.2からわずかに上昇したとはいえ、アニマルスピリッツ指標はマイナス17.9となり、3月に引き続き、とても低い水準にとどまっている。
 この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向が見られている。アニマルスピリッツ指標は6か月連続でマイナス5を下回り、月々の上下動をならしたトレンドで見てもマイナス5を大きく下回る傾向がみられるなど、生産マインドに弱さがみられる。
 4月調査以降も新型コロナウイルス感染症の影響は国内外で続いていることから、今後の動きについても注意して見ていきたい。

 4月調査の内訳をみると、強気の割合が21.8%、弱気の割合が39.7%となっている。弱気の割合が、2011年4月調査以来の高い割合となった。

 4月の調査結果では、前年同月実績比や予測修正率、アニマルスピリッツ指標から生産マインドはかなり弱気な面がみられる結果となった。
 なお、冒頭で述べたように今回の調査結果には、新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢変化の影響は十分には織り込まれていない。そのため、今後、例年の傾向以上に生産実績や生産計画が下振れしていく可能性もあることから、生産の先行きや企業のマインドに関しては、引き続き注意深くみていく必要がある。
 
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