統計は語る

企業の生産計画からみた生産マインドの強気、弱気

アニマルスピリッツ指標から探る


 製造工業生産予測調査では、毎月初旬にその月と翌月の生産計画を、主要製品の主要企業について調査している。今回は、3月初旬に調査した3月と4月の生産計画の状況と、3月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介する。

3月調査の生産計画

 3月の生産計画については、前月比マイナス5.3%の低下を見込むという結果になっている。この計画どおりに実際に生産されれば、3月の鉱工業生産の実績は、2か月連続の前月比低下となる。
 4月の生産計画は、この3月計画から7.5%の上昇という生産計画になっている。
 なお、鉱工業指数は2月確報で2019年分の年間補正を行い、季節調整値も見直されたのに対し、製造工業生産予測調査の3月調査値は2019年分の年間補正前のものであるため、上の数値は元々幅を持って解釈する必要があるが、さらに、今回の調査結果については、3月当初の生産計画に基づくものであるため、3月上旬以降の新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢変化の影響は十分には織り込まれていない。そのことに留意して今回の調査結果をみる必要がある。

リーマンショック時はどうだったか

 そこで、過去に今回の新型コロナウイルス感染症の影響拡大のように予測困難な経済情勢の急激な悪化が生じた場合、生産計画と鉱工業生産にどれだけ乖離が生じたかをみるため、参考としてリーマンショック時の製造工業生産予測調査の結果(翌月見込、当月見込)と鉱工業生産指数の実績を比較してみた。
 前月比でみると、翌月見込の計画ではそれ程大きなマイナスは見込まれていなかった計画も、一月後の調査結果(当月見込)では大きく下振れし、翌月見込の前月比と当月見込の前月比に、大きな乖離が生じている(黒色の折れ線からオレンジ色の折れ線への低下幅;緑色の棒グラフで図示)。さらに、当月見込の計画と鉱工業生産指数の実績値の間でも、前月比は下振れしていることがわかる(オレンジ色の折れ線から青色の折れ線への低下幅;青色の棒グラフで図示)。
 つまり、リーマンショック時においては、企業の予測を超えた経済情勢の急激な悪化が生じたことにより、企業の生産計画における翌月見込前月比は、一月後の調査の当月見込前月比では大きく下方修正され、実際の鉱工業生産指数の前月比ではさらに下振れしたことがわかる。

 当時とは経済情勢や指数を構成する品目なども異なり、また3月は年間補正の影響も加わることから単純には比較できないが、今回、3月初旬の製造工業生産予測調査実施以降も、新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢は急激に変化しているため、鉱工業生産はリーマンショック時のように、3月の前月比は生産計画(マイナス5.3%低下)より下振れし、4月の前月比は生産計画(7.5%上昇)からさらに大きく低下する可能性もあることに注意する必要がある。

生産計画の強気と弱気

 前年実績と生産計画の水準を比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかの一つの目安となる。
 3月の生産計画は、前年同月実績比マイナス4.9%と2か月連続の低下を見込んでおり、弱気の側面がみられる。

 また、生産予測調査は、その調査月と翌月の生産計画を調べているので、同じ月の生産計画を2回調べる仕組みになっている。調査月の生産計画が、前回調査の生産計画からどのくらい変動したのかを予測修正率という。
 3月の予測修正率はマイナス1.4%となり、6か月連続で下方修正されている。予測修正率からも、3月は弱気の側面がみられる結果となっている。

 各社品目ごとに生産計画を上方修正した数と下方修正した数を比較して、その比率の差分を計算した指標を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでおり、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量る指標として活用している。
 3月調査結果では、アニマルスピリッツ指標はマイナス18.2となり、2月調査結果でのマイナス7.2から大幅に低下した。マイナス18.2という水準は、東日本大震災のあった2011年3月のマイナス16.1を下回る水準となっている(最低水準はリーマンショック時の2008年11月マイナス36.2)。
 この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向が見られている。アニマルスピリッツ指標は5か月連続でマイナス5を下回り、月々の上下動をならしたトレンドで見てもマイナス5を下回るなど、生産マインドに弱さがみられる。今後当面は、新型コロナウイルス感染症の影響拡大によりさらなる低下も懸念されるため、今後の動きについて注意して見ていきたい。

 3月調査では、強気の割合が大幅に減少し、弱気の割合は東日本大震災時に近い割合まで増加したことにより、アニマルスピリッツ指標は大幅に低下した。

 3月の調査結果では、前年同月実績比や予測修正率、アニマルスピリッツ指標の動きから生産マインドは弱気な傾向がさらに進む側面がみられる結果となった。
 なお、冒頭で述べたように今回の調査結果には、3月上旬以降の新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢変化の影響は十分織り込まれていない。そのため、今後、例年の傾向以上に生産実績や生産計画が下振れしていく可能性もあることから、生産の先行きや企業のマインドに関しては、引き続き注意深くみていく必要がある。

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