統計は語る

全産業活動指数 2020年の出足は好調だが…

建設業は連続低下に歯止め

 
 2020年1月の全産業活動指数は、指数値104.6、前月比0.8%と2か月ぶりの前月比上昇となった。
 このところの動きを振り返ると、2019年10月は東日本大震災の被災月である2011年3月に次ぐ、今基準内(2008年1月~)第2位に位置する大幅低下で、持ち直しの動きのなか拡大してきた活動量は一気に急落した。それ以降の前月比をみると、11月は1%近い上昇、12月は微減と底固めの動きの兆候をみせていた。2020年1月も大きめの前月比上昇となり、このところの動きには、急落した10月からの復調の動きがみられる。
 前月比の「振れ」が大きかった2019年9月、10月をならした平均指数値105.6と比べれば、2020年1月の指数値は1ポイントほど低下しており、活動量はいまだ低い位置にある。ただ、昨年10月時点の指数値は103.0にまで低下し、上述の平均指数値との差分はマイナス2.6ポイントにも及んでいたことから、ここ3か月でおよそ6割以上も挽回したことは評価したい。
 2020年の始まりは、活動水準自体は低位にあるものの、前月比上昇や、低落点からの復調度のことなどを踏まえれば、良いスタートとなったのではないだろうか。

 傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、2019年4月からの上昇傾向から7月に低下方向に舵を切り、一時的に上昇した9月以降の3か月は急落を続けていた。2020年1月は上方方向に転じたことがみてとれるが、低い活動域での戻し幅となっている。

内訳3産業 すべて上昇

 1月の結果を産業別にみると、サービス産業活動は前月比0.8%と2か月ぶりの上昇、鉱工業生産は同1.0%と2か月連続の上昇、建設業活動は0.8%と実に8か月ぶりの上昇となった。3産業すべてが上昇したのは、2019年4月以来のこととなる。全産業活動に対するインパクトは、サービス産業活動が全体の7割を占め最も大きく、以下、鉱工業生産が25%、建設業活動が5%だった。
 先に公表された「生産・出荷・在庫・在庫率指数確報」の生産活動をみると、消費財、生産財は前月比上昇だったが、投資財は低下した。他方、サービス産業活動は、「第3次産業活動指数」をみると、対個人向けサービス、対事業所向けサービスとも上昇だったが、対事業所向けサービスのうち製造業依存型サービスは低調だった2019年10月の指数値を3か月連続で下回るなど、いまだ底がみえない動きになっている。産業横断的にみれば、今年1月は、個人消費関連の動きは順調だったものの、製造業を中心とした事業者間取引関連が伸び悩んだ、といったところだろう。

「民間発注工事」「公共工事」相反する動き

 1月の建設業活動は、前月比0.8%の上昇、指数値は107.2となった。前月比上昇は2019年5月以来のことで、実に8か月ぶりのこととなる。
 2019年6月以降は、前月比マイナスが続き、かつ、マイナス1%を超える大きめの低下幅となることもしばしばあり、結果、昨年末までの7か月間で8ポイントも指数値は下がった。11月には最小限の前月比低下幅に縮小したが、12月は再び大幅な低下と底がみえない状況にあった。年明け1月は、久方ぶりの前月比上昇と連続低下に歯止めがかかったが、指数値は、2015年第4四半期頃の水準にまで低落しており、直近の2019年第4四半期値を0.6ポイント下回っている。
 最近の傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、2019年7月に低下方向に転じ、以降、強い低下方向への動きが続いていることが確認できる。年明け1月では低落の勢いこそ若干弱まったが、低下方向にあることに変化はみられず、直近の傾向値の底となる2018年12月を下回る域にあることもみてとれる。
 これらから判断すると、2019年1月時点の建設業活動全体の基調は、引き続き「弱さがみられる」と評価すべきだろう。

 建設業活動の内訳をみると、民間発注工事が前月比マイナス0.1%と8か月連続の低下、公共工事が同2.3%と2か月ぶりの上昇と、動きは相反するものだった。
 さらにこの内訳をみると、民間発注工事では、土木工事が同2か月ぶりの上昇だったが、住宅建築工事が前月比6か月連続の低下、非住宅建築工事が同9か月連続の低下と、建築工事関連の不調が続いている。
 公共工事は、建築工事が前月比3か月ぶりの上昇、土木工事が同2か月ぶりの上昇と、いずれも上昇だった。ただ、両部門とも前月の低下分を取り戻すことはできず復調には至っていない様相だ。

基調判断「足踏みがみられる」を継続

 2020年1月の内訳3産業は、3産業すべてが前月比上昇だった。各指数の基調判断は、鉱工業生産は「一進一退ながら弱含み」、サービス産業活動は「足踏みがみられる」としている。建設業活動も「弱さがみられる」という状況に変化はみられなかった。
 全産業活動全体では、このところの上昇・低下を繰り返す動きのなか、1月は大きめの前月比上昇となり、急落した10月からの復調の動きがみられる。ただ、9月以前からみれば、まだ活動量は小さくその戻し分としては十分とはいえない事業者間取引関連の復調を含め、引き続き今後のさらなる回復に期待したいところである。
 他方、2月以降の新型コロナウイルス感染症の広がりがもたらす経済的影響も懸念されることもあり、2020年第1四半期通期の動きは不透明で予測しにくいものとなっている。 これらを踏まえ、2020年1月時点の全産業活動の基調は、引き続き「足踏みがみられる」としている。

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全産業活動指数 結果概要