政策特集君は万博を知ってるか? vol.5

舞台は再び日本へ 2025年に何を発信

地元・関西からアイデア続々

万博開催時の夢洲のイメージ


 2025年。万博の舞台が再び日本にやって来る。最先端技術に人々が心躍らせた1970年の大阪万博から55年の時を経て関西の地で開催される万博で、日本は何を発信するのか-。

未来社会の実験場に

 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)は4月から10月にかけて、大阪市此花区、大阪湾内の「夢洲(ゆめしま)」で開催される予定だ。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」が達成される社会の実現を目指す。日本が提唱するスマート社会「Society5.0」につながる技術やアイデアを一堂に集めた「未来社会の実験場」として会場を整備し、訪れた人が、社会課題の解決につながるテクノロジーの力を体感できる祭典を目指している。
 「人類の進歩と調和」をテーマに掲げた1970年の大阪万博は、高度経済成長期の日本を象徴するように、人々が初めて目にする先端技術が会場にあふれた。テレビ電話や温水洗浄便座、動く歩道。未知の世界や技術に心躍らせたのに対し、2025年の大阪・関西万博は、物質的な豊かさだけでなく心の豊かさ、幸せな生き方を問うものとなり、約2800万人の来場を見込む。
 舞台となる「夢洲(ゆめしま)」は大阪湾の中に作られた人工島。一部は物流拠点として活用されているが、大半は広大な埋め立て地。ここがどう変貌していくのか。白地に絵を描くような作業がまさに始まろうとしている。

若者をどう巻き込むか

 「中高年層は70年万博の記憶もあり、2025年に向けてもそれぞれ熱い思いを抱いています。一方で若者は、そもそも万博やパビリオンという言葉を知らないんですね。こうした世代を万博のコンセプトづくりにどうやって巻き込んでいくのかが重要です」。
 こう語るのは、大阪・関西万博の誘致に協力してきたナレッジキャピタル総合プロデューサーの野村卓也さん。ナレッジキャピタルは、大阪の中心地である梅田に作られた技術、文化、アートなどを融合させ新たな価値を生み出す知的創造交流の場。集うのは個人からベンチャー、大企業、大学などさまざまなバックグランドを持つ多彩な人材である。万博に対しても関心が高く、すでにさまざまなアイデアが生まれている。
 ナレッジキャピタルの中で、2000人もの会員を擁するサロンでは、有志が集まり万博で何をするべきか議論を重ねてきた。
 「大阪で開催することの意味を語り合った結果、最終的にまとまったのが『懐(ふところ)万博』という考えでした。懐が深いという言い方があるように、懐には寛容性の意が込められています。関西は古くから異文化を積極的に取り入れ、そこから得たものを自分たちのものにしてきた歴史があります。こうした姿を発信できればと考えています」(野村氏)

ナレッジキャピタルの野村氏

 具体的なプランも提案された。例えば、「廬舎那仏(るしゃなぶつ)の開眼法会の現代版」。天平の時代、奈良・東大寺の大仏(廬舎那仏)の開眼供養は、世界各国からさまざまな音楽や舞踊などの芸能が奉納され、東アジアでは最大級の国際イベントとされる。いにしえに思いを馳せつつ、万博では最新のIT技術で実物大の大仏をつくり、世界の音楽をそこで楽しもうというアイデアである。
 一方、学生発のアイデアは「みんなで作る美術館」。来場者皆でオブジェを作り上げ、万博のレガシー(遺産)として残すという提案だ。ただ見るだけでなく、万博会場に自分の爪痕を残したいという思いが込められている。これらのアイデアは、さまざまな場ですでに紹介されており、「いくつかは実現するかもしれませんよ」(野村氏)と期待を寄せる。
 ナレッジキャピタルはほかにも、世界各国の博覧会で着用されたユニフォームのファッションショーや大阪大学医学部の澤芳樹教授などの有識者がこたつを囲んで話し合う名物イベント「こたつ会議」を通じて、地元での万博開催へ向けた機運醸成に一役買っている。

EXPOファッションショーでは関西の現役女子大生ユニットがモデルに(2019年9月)

来秋にも基本計画策定

 政府は年内に具体的な実施計画を記載した「登録申請書」を博覧会国際事務局(BIE)に提出する予定で、2020年10月から開催されるドバイ万博で各国に正式な参加招請を始める計画である。また、来秋には万博の運営主体である2025年日本国際博覧会協会が会場建設やインフラ整備などの基本計画を策定する見通しだ。

 新たな産業やライフスタイルを生み出し、時代を彩る若い才能を世に送り出してきた万博。2025年を弾みに、どんな社会が到来するのか。次回以降はビジネスと万博との関わりや日本で活躍する海外出身のリーダー、若者世代が思い描く未来社会を紹介します。