統計は語る

旅行者数は増加なのに海外旅行指数低下のナゾ

第3次産業活動指数から見えてくる構造変化


 今年の秋は、台風にも見舞われているものの、行楽シーズンに入り、休暇には旅行に行くという方も多いのではないだろうか。
 第3次産業活動指数にある旅行業の指数の動向を見ると、国内旅行はほぼ横ばいだが、海外旅行については2017年以降は落ち着いているものの、低下傾向がみられる。

 他方で、海外に出かける人が減った訳ではなく、出国日本人数は2008年で1,599万人、2010年で1,664万人から、2018年は1,895万人へと、過去最多水準まで増加している(法務省「出入国管理統計」)。
 また、海外旅行指数のデータ元となっている統計を見ても、主要旅行業者の海外旅行の取扱額は海外旅行指数ほど低下している訳ではない。

 では、なぜ海外旅行指数は低下傾向を示していたのだろうか。

旅行価格の上昇が押し下げ要因

 第3次産業活動指数は、各産業の活動の活発さを表すため、価格変動の影響を取り除いた実質的な数量変化を表すようにしている。海外旅行指数を作成する際も、海外旅行取扱額からその価格変動分を取り除くため、消費者物価指数(総務省)の外国パック旅行費を価格水準を表す指数(デフレータ)として割り引くことで、旅行業の海外旅行関連活動の実質的な活発さを表すようにしている。
 実はこの外国パック旅行費が2010年から1.5倍に上昇したことが、海外旅行の指数値を押し下げた要因となっている。

 実際に、先ほどの主要旅行業者の旅行取扱状況年度総計(速報)からパック旅行の単価を計算してみても、上昇傾向にあることがわかる。
 この上昇には、ホテル代等海外の物価が上昇していることや、年によって航空運賃に付加される燃油サーチャージが上昇していること、為替レートの変化なども背景にあると考えられる。

販売チャネルの多様化

 パック旅行の単価は上がっているが、一方でパック旅行の利用者数は、実際減少している様子である。主要旅行業者の旅行取扱状況年度総計(速報)(観光庁)を見てみると、年度により主要旅行業者の入れ替わりなどがあることに注意して見る必要があるが、傾向として低下している様子がうかがえる。

 こうした中、国内旅行業者を介した海外旅行でも、パック旅行以外の取扱額は近年増えているが、インターネットの普及により、さらに、国内の旅行業者を通さずに海外のOTA(Online Travel Agent、オンライン旅行会社)や航空会社・ホテルのサイトを通じて、航空チケットや海外のホテルを予約する人も増えている。
 つまり、旅行業の海外旅行指数の低下の要因には、国内旅行業者の海外旅行取扱額が、外国パック旅行費の上昇ほどは伸びていないことがある訳だが、一方では、国内旅行業者にあまり頼らずに海外旅行の予約をする人も増えているため、旅行業の海外旅行関連活動が実質的に低下しているとも考えられる。
 このように、第3次産業活動指数を見ることで、サービス産業の構造変化もうかがい知るきっかけとなる。旅行業以外にもさまざまなサービス業の動向を示す指数を公表しているので、参考にしていただきたい。