地域で輝く企業

挑戦意欲が育む技術力

梱包資材のカネパッケージ 海外事業も拡大中

「令和」の文字をくり抜いた段ボールの脇に立つ金坂社長


 主に段ボールで梱包材や緩衝材を設計、製造するカネパッケージ。新入社員研修では、最大200メートル上空から落としても中の生卵が割れないよう、梱包・緩衝材を作らせて競わせるなど、ユニークな取り組みでも注目を集めている。実はこの研修、わざわざ空港とヘリコプターをチャーターするなど、相当な費用がかかったそう。それでも金坂良一社長は「挑戦すること、ワクワクすることの面白さを会社が支援しているというメッセージを出したかった」と語り、若手社員の挑戦意欲を後押しする。

「瞬間」捉える探究心

 本社は設計や開発に特化。「中小企業でここまでそろえているのは、そうそうない」(金坂社長)と胸を張る試験室は二重の壁で覆われて音漏れがなく、温度・湿度も一定にできる。室内には最新鋭の振動試験装置や圧縮試験装置、3次元スキャナーなど高価な設備が並ぶ。
 「振動試験ではトラックなどに載せたときの揺れを再現できる。圧縮装置ではある重さの梱包材を何段まで重ねられるか、実際に積み上げなくても把握できる」(金坂社長)といったシミュレーションが可能だ。包装材が壊れたり、つぶれたりする瞬間をとらえるため、毎秒23万コマのハイスピードカメラも備える。

振動試験装置や圧縮試験装置など最新鋭の機器が並ぶ試験室


 海外展開も早く、フィリピンを中心にベトナム、タイ、インドネシア、香港、メキシコに拠点を構える。売上比率は海外が約8割を占める。いち早く進出したフィリピンは7工場を数える最大の事業拠点。人材育成も進んでおり、東南アジア各地の立ち上げを主導したのは、フィリピン人社員だ。2年前に進出したメキシコにも工場長と技術、経理の責任者を派遣した。中でも工場長は何と30代の女性。英語が公用語で仕事へのモチベーションも高く、労務や生産管理にもたけていたため、大抜てきした。
 

フィリピンに最大規模の新工場

 そのフィリピンでは最近、日系電機メーカーの進出が相次いでおり、金坂社長は思い切った施策に打って出る。同社として最大級の新工場建設を決めたのだ。敷地面積2・2万平方メートル、工場の延べ床面積1万平方メートルを誇り、化粧箱なら月20万箱生産できるラインを4基備える予定。2020年4月の稼働を目指す。総投資額は10億円に迫る。「今は外注している工程を内製化し、一貫体制にすることで生産効率を上げる。輸送時に付いてしまうキズも撲滅できるので不良率も劇的に下がる」とその新たな役割に期待する。

進出国との緊密な関係築く

 地域貢献活動やボランティアなどCSR活動にも積極的だ。フィリピンでは10年前からマングローブの植林を続けており、今や約1200万本を数える。2018年5月には在日フィリピン大使館が1000万本突破を記念した式典を開催。次席大使らがその活動を高く評価した。メキシコでは17年9月に大地震が発生した際、社長自ら現地入りし、被災者に直接、支援物資を手渡した。職場を失った地元の市民に、希望すれば自社工場に受け入れることを表明するなど、地域との関係構築に心を砕いている。
【企業情報】
▽所在地=埼玉県入間市南峯1095の15▽社長=金坂良一氏▽創業=1976年▽売上高=約87億円(2018年8月期)