統計は語る

鉱工業生産指数(IIP)で振り返る昭和~平成

移り変わる経済成長の牽引役


 近年、人工知能等の新しい技術の登場により第四次産業革命などと言われ産業構造が大きく変わろうとしている。
 日本の鉱工業生産等の全体の動きを示す代表的な指標である鉱工業生産指数(IIP)でも、産業構造の変化に対応した指数を作成するため、2018年11月に品目の入れ替えや業種ウェイトの見直し等の基準の改定を行った。
 ここでは、日本の経済成長を支えてきた生産品目入れ替わりを基準改定から追うことにより、産業の移り変わりをみていきたい。

景気に合わせて変動

 IIPの推移を見ると、高度成長期(1973年頃まで)、バブル景気(1990年頃まで)といった景気拡大期に大きく上昇している。また、リーマンショック後は停滞したあと、足元では緩やかに上昇している。このようにIIPは景気の動きに合わせて変動している。このIIPをそれぞれの期間ごとに構成する産業・品目を確認することによって、日本経済をけん引してきた産業・品目の特徴や、産業構造の移り変わりを見ていきたい。

社会構造の変化映す

 IIPを構成する品目ウェイトは、基準年における当該品目の生産により生み出された付加価値額に基づいて作成されているため、日本の鉱工業の構造を映し出したものといえる。ここでは、これまでの日本の経済成長を担ってきた輸送機械工業、電気機械工業、汎用・生産用・業務用機械工業などの産業や、その構成品目の移り変わりを中心にみていきたい。
 戦後復興期を反映した1955年基準のIIPでは、まだ輸送機械工業や電気機械工業のウェイトは小さく、三輪トラックやラジオ受信機などが生産上位品目となっている。汎用・生産用・業務用機械工業では、ミシンが生産上位品目となっており、繊維工業のウェイトが大きかった時代背景を反映している。また、まだ国内産の石炭等も使われていたことを背景に、鉱業も一定程度のウェイトを占めていた。
 高度経済成長期を反映した1975年基準になると、小型乗用車やカラーテレビが生産上位品目となり各家庭に普及が進んだことがみてとれる。また、電力の普及を背景とした電気を制御する開閉制御装置や、都市開発・インフラの整備を背景としたブルドーザ(装軌式トラクタ)などの土木建設建機が、生産上位品目に上がってきている。
 電子化・情報化の進展を経て、バブル景気まで経済が拡大した1990年基準では、輸送機械工業や汎用・生産用・業務用機械工業のウェイトはそれほど変化がないものの、PC-9800シリーズ等の国産パソコンや大型コンピュータの普及も背景に、電気機械工業のウェイトが高まった。コンピュータやそこで使われる電子部品・集積回路が生産上位品目となっている。
 その後、携帯電話やインターネットの普及により、情報通信機器を含めた電気機械工業はさらに拡大したが、2015年基準では、海外生産シフトなどから電気機械工業のウェイトは低下した。生産上位品目には消費財より、半導体製造装置といった製造設備用の資本財が上がってきている。輸送機械工業は、自動車部品が生産上位品目に上がるなど裾野が広がり、IIPの構成品目でも最大の産業となった。また、輸出自動車の大型化が進んでいることなどを背景に、小型乗用車のウェイトが低下する一方、普通乗用車のウェイトが高まった。

 2018年11月に行ったIIPの2015年基準への改定では、エコカーの普及を背景にハイブリッド自動車等で使われているPMモータ等が新規採用品目に加わった。
 一方で、大人用紙おむつやカメラ(内視鏡用等)といった高齢化を反映した介護や医療に関する品目が追加となった。また、即席麺類といった単身世帯の増加を背景とした品目の追加などもあり、2015年基準改定は、国内の社会構造の変化が、産業構造変化にも影響を及ぼしているような特徴が表れている。

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