統計は語る

音楽の一時代を支えたCDやレコードの今。経済指標から見える音楽の楽しみ方の変化


 デジタル化、ネット化の恩恵で、今や音楽は、様々な媒体を通じて楽しむことができる。衰退するメディア、媒体がある一方で、アナログレコードが人気再燃で国内生産再開というニュースも。そこで今回は、音楽の楽しみ方の変化を統計データで可視化して捉えてみる。

定額制サービスが急激な伸び

 現代の音楽の楽しみ方は、CD等のパッケージを購入して専用の再生機器で楽しむというものではなく、ネットを通じた「音楽配信」が主流となりつつあるのは、周知のところ。

 しかし、その音楽配信の状況も、ここ数年の有料音楽配信の売上げ実績のデータを確認すると、様変わりしている。

 最もシェアの大きいパソコンやスマートフォン向けの「従量制音楽配信サービス」の売上げは、2013年から2016年にかけて、約70%から約50%に縮小している。一方、「定額制音楽配信サービス」の売上げは急激な伸びを見せており、2013年からの4年間で6.5%から37.8%と約5倍に拡大している。

 従量制とはダウンロードした曲数・データ数に応じた課金だが、定額制は「1か月いくら」という課金で、音楽を楽しむ方式だ。

 単に、音楽を楽しむデバイス、機械が変わったというだけではなく、あらかじめ聴く楽曲を手元に置くというプロセスがなくなり、また、金額も気にすることなく、より自由な音楽の楽しみ方へと変化している。

   

パッケージ型は激減

 ひと昔前の音楽を楽しむ方法といえば、ミリオンヒットという言葉があるように、CD、カセットテープ、レコードといったパッケージ媒体を専用の再生機で楽しむという方法が一般的だった。こうした昔の音楽事情を支えたCD、カセットテープ等は、現在どのような状況なのだろうか。

 次のグラフでは、CD等の生産実績である「レコード制作業」活動指数の大きさを円(CDの形)とし、横軸を年単位の時間推移、縦軸を「コンテンツ関連産業」に占める「レコード制作業」活動指数の割合として配置した。

 レコード制作業の活動指数は1998年に274.9(2010年=100)だったが、2016年では、75.2と4分の1に縮小している。その低下とともに、コンテンツ関連産業に占めるレコード制作業の存在感も低下し、その構成比も、1998年の2.39%から、2016年には0.79%と約3分の1に大きく縮小している。

                

 パッケージとしての楽曲を買うためのCD等の生産が激減し、さらに音楽配信においても、「楽曲を買う」従量制から、定額制への移行が進んでいる。

CD衰退もレコードは生産再開

 音楽の一時代を極めたCD生産の衰退は少し寂しい感じもするが、その一方でアナログレコードの国内生産が30年ぶりに再開というニュースも飛び込んできた。

 時代の流れとともに、音楽の楽しみ方は、確実に変化を見せているが、同時に昔の媒体の人気再燃という実例もあり、今後も様々な変化を見ることができるのかもしれない。

関連情報
出典元:経済解析室ひと言解説集
http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20170704hitokoto.html