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GXを推進するグリーン鉄って何?

GXを推進するグリーン鉄って何?

暮らしの中で、気候変動対策に貢献したい……。これまでは、省エネや3R、再生可能エネルギーの活用といった選択肢が中心でした。これからは、鉄などの素材の選択も重要になってきます。GXを推進するグリーン鉄について解説します。

「高炉」と「電炉」、鉄の二つの生産プロセス

海外から輸入した鉄鉱石と石炭を使って鉄を取り出す「高炉」プロセスでは、高品質の鉄鋼製品が生み出されますが、同時に大量の二酸化炭素が発生します。鉄鋼業は、日本国内の二酸化炭素排出量の1割を排出しています。

鉄スクラップを溶かして鉄を取り出す「電炉」プロセスもありますが、鉄スクラップの供給にも限りがある上に、製品に不純物が混ざりやすい傾向にあります。

図1 製造プロセスによるCO2発生量の違い

国際機関(IEA)は、2050年時点でも、鉄スクラップでは需要の半分しか満たすことができないとしています。カーボンニュートラル社会の実現のためには、GXを通じた「高炉」プロセスからの排出量削減が必要です。

CO2の削減に価値を見いだす

製造時のCO2排出量を従来の鉄より大幅に削減した鉄を「グリーン鉄」と呼びます。高炉プロセスでも、水素の活用などグリーン鉄を生産するいくつかの方法があります。ただし、いずれも莫大な設備投資が必要です。加えて、従来の生産プロセスに比べて、原材料やエネルギーコストも割高になりがちです。

図2 鉄1トンに係る原料・エネルギーコストの試算 ※財務省貿易統計、電力取引報、CCS長期ロードマップ検討会資料、日本鉄リサイクル工業会HP等の原料・エネルギー価格を参照し、原料・エネルギー量の設定にあたっては、日本鉄鋼連盟HP、MFG ROBOTS HP、Worldsteel HP等を参照した

こうした中、GXを推進していくためには、「グリーン鉄」の市場が広がり、割高であっても価値が認められ、需要家から選択してもらえるようになることが必要です。欧州では、蓄電池、自動車、建築物などで、製品の製造時や建物の建設時の二酸化炭素排出量を削減する取り組みが進められており、できるだけグリーン鉄を使用していこうとする動きがあります。

グリーン鉄を選択し脱炭素化に貢献

日本の鉄鋼メーカーは、これまでの技術開発を踏まえて大規模な設備投資を行い、二酸化炭素を削減しようとしています。こうして生み出されたグリーン鉄を活用してもらおうと、政府においてもグリーン購入法やクリーンエネルギー自動車(CEV)補助金の枠組みを用いて最終製品の製造企業にインセンティブを付与する取り組みを、2025年4月から開始しました。

グリーン鉄を使っている最終製品や製造企業の開示が進み、消費者が意思を持って選択することにより産業部門の脱炭素化に貢献できる仕組みが、今、始まろうとしています。

経済産業省 金属課

【リンク先】
「GX推進のためのグリーン鉄研究会」のとりまとめを行いました(METI/経済産業省)