
【万博60秒解説】中国局発:オランダ館で島根県の奥出雲町を発信!~海を渡った仁王の魂~
まもなく開幕する大阪・関西万博。会場内では、海外と日本の間に結ばれた縁や絆をうかがい知ることができる展示やイベントが予定されています。その一つ、オランダと島根県奥出雲町の知られざる深い絆についてご紹介します。それは奥出雲町の山中にいた仁王像から始まる物語です――。
奥出雲町の仁王像とオランダ人彫刻家の出会い

写真左上:国立アムステルダム美術館に展示されている仁王像 写真左下:古刹「岩屋寺」の仁王門(2024年に解体される前) 写真右:地図は奥出雲町観光協会HPより引用
今から12年前の2013年。国立アムステルダム美術館に、日本で作られた二体の仁王像が展示されました。それは、かつて奥出雲町の古刹、岩屋寺にあったもの。その後、様々な人の手に渡る数奇な運命を巡って、ついに海を渡ってオランダにたどり着いたものでした。
この仁王像を美術館で見たのが、アムステルダム在住の彫刻家イェッケさん。彼女は仁王像に深く感動した一方、本来ならば作られた場所で地域のための役割を果たすべき仁王像が、美術品として鑑賞されていることに違和感を覚えます。
仁王像の「魂」だけでも奥出雲町に返したい
2015年になって、イェッケさんは奥出雲町を訪問。その後も幾度となく訪れる中で、長年の間、地域を守ってきた仁王像が消え、地域の人々が喪失感を抱いていることを痛感。そして、「自ら生み出した作品を岩屋寺に展示することで、仁王像の『魂』だけでも奥出雲町にお返ししよう」と考えるに至ります。そして彼女が造り上げた作品が「ブルー仁王」。オランダの伝統技術、デルフトブルータイルによるものです。阿形(あぎょう)像と吽形(うんぎょう)像の二体あり、それぞれ表と裏が制作されています。

仁王像が繋ぐオランダと奥出雲町のつながり
2018年から19年にかけて、「ブルー仁王」を制作する新たなプロジェクトが始動しました。日蘭の住民約400名が参加して絵付けがなされ、「ブルー仁王」は奥出雲町の地域の人々に贈呈されました。これを契機に、日蘭の文化交流イベント「NIO-FESTIVAL」を開始。2025年まで毎年開催されて今に至っています。

そして2025年。「NIO-FESTIVAL」の有終の美を飾るべく、大阪・関西万博のオランダ館で「ブルー仁王」が展示されます。そして、昨年、オランダのマーク総領事が奥出雲町の横田中学校を訪問したことをきっかけに、オランダ館では同中学の生徒たちによる奥出雲町の発信も予定されています。

オランダのマーク総領事とイェッケさんと横田中学校の生徒
「ブルー仁王」が導く、これからの絆
イェッケさんが初めて奥出雲町を訪れた頃、仁王門の周辺は荒れ果てていました。彼女は周辺の土地を手に入れ、自ら整備を始めます。そして「ブルー仁王」は、万博のオランダ館で展示された後、生まれ変わった仁王門に安置される予定です。ただ、きちんと管理を続けるためには、仁王門プロジェクトの支援者や地域住民有志のご厚意によるボランティア活動が欠かせません。長く紡がれてきた奥出雲町×オランダの強い絆。万博をきっかけに、これを未来に向けて繋いでいくためにも、ぜひ各地域の皆様方々にも関心を持っていただき、様々なサポートをいただけると幸いです。

お話を伺った松崎さん。イェッケさんが描いた「ブルー仁王」の下絵と共に
中国経済産業局 産業振興課
流通・サービス産業課
【リンク先】
イェッケさんの財団によるHP(一部写真はここから引用)
大阪・関西万博オランダパビリオンによるX投稿(イェッケさんと奥出雲町長)