統計は語る

「内食」と「外食」どっちが好調?スタッフの賃金からも検証してみる


「内食」と「外食」について、価格変動と活動指数の動きを比較した。「内食」では、価格上昇と活動低下が見られ、「外食」では、価格上昇と活動量上昇の併存が見られるという大きな違いがあることが分かった。価格が上がって活動量=需要が減るという「内食」の動きは、価格法則に合致した動きだが、「外食」の価格と活動量=需要が共に上昇するという一見不思議な動きが見られた(ちょっと手を出しにくくなったなと思うのは、スーパーの食品?ファミレスのセットメニュー?内食と外食、価格の変化と意外な結果)。そこで、「外食」の活動量である売上の変動要因について、特に、業態間の違いを深掘りしてみたいと思う。

客単価上昇のファーストフード

では、「外食」の両極の業態である「ファーストフード」と「ディナーレストラン」の利用客数と客単価の変化を比較してみる。ともに、消費税率引上げ前の2013年同月比を棒グラフにしている。

まず、利用客数を見ると業態による違いがはっきりと表れた。
ファーストフードは、2016年に入って低下幅の若干の縮小は見られるもの、2013年各月の利用客数を下回る状態が、2017年に至るまで丸3年以上続いていた。
一方、ディナーレストランは、客足が伸びており、2016年第4四半期から、その上昇幅が拡大しているように見える。

次に客単価の変化を比較する。
両業態とも、客単価は上昇しているが、ディナーレトランでは2016年以降、客単価の上昇幅が縮小しているが、ファーストフードでは、むしろその時期に客単価が大きく上昇している。

整理すると、次のようなことが分かる。
・低価格帯業態のファーストフードにおいては、客足は鈍っているが、客単価が上昇しており、高価格商品に需要がシフトしている。
・高価格帯業態のディナーレストランにおいては、客単価の上昇は比較的穏やかで、むしろ水準が少し下がってきているが、客足は伸びている。

ということは、低価格帯業態の客足が、より高価格帯業態であるディナーレストランにシフトしているものと思われる。その結果、ディナーレストランの客足の伸びと、平均となる客単価の水準の低下を生んでいると推測できる。また、ファーストフードに残った客も、その業態内で高価格商品に需要をシフトさせていると推測される。

業況の違いがそのまま…スタッフの賃金水準

業態内、業態間で高価格帯シフトの見られる「外食」と、価格法則の通りに価格上昇、活動量低下となっている「内食」と、業況の異なる2つの産業ですが、それぞれの産業で働く方の賃金に違いはあるのだろうか。
今回は、業況など条件変化が機敏に反映されていると考えられる、パート、アルバイトの平均賃金の、最低賃金を超過する分の時系列変化を比較してみる。「外食」については、飲食店のホールスタッフ、「内食」についてはレジスタッフで代表させてみた。

これをみると、レジスタッフの賃金は最低賃金レベル近くに低下している。勿論、ここ数年、最低賃金が上昇している(全国加重平均最低時給 2012年度749円、2016年度823円)ので、賃金額自体は上昇しているが、この辺りに「内食」が低下基調であることの影響があるのかもしれない。
他方やはり、業況の良いホールスタッフの賃金水準が恒常的にレジスタッフを大きく上回っており、その賃金差も拡大しているようで、業況の違いは、賃金の水準やその動きに明瞭に表れていることが確認できた。

巷では、消費者の「節約志向」に注目が集まるが、その影響は「内食」に如実に表れ、さらにレジスタッフの賃金水準にもその影響が及んでいるようである。他方、こと「外食」の分野については、業態間、そして業態内での高価格帯シフトが生じているように見受けられ、これが「内食」と対照的な推移を見せる「外食」の動きの背景にあるのかもしれない。また、ホールスタッフの賃金にも影響が出ているように見える。

日本のエンゲル係数も上昇しているという。日常的な食費が嵩んでいるということもあるだろうが、外食における高価格帯へのシフトの影響もあるのかも知れない。

関連情報
飲食料品関連産業全体の動向を把握できるよう試算した経済指標「フード・ビジネス・インデックス(FBI)」の最新のミニ経済分析を公表しているので、ぜひご覧ください。
「生産、流通、サービス3業態揃って前期比上昇で大きな前期比上昇を見せたフード・ビジネス;飲食関連産業の動向(FBI 2017年第1四半期)」(2017/5/26ミニ経済分析)