ミャクミャクさま光臨! 「そもそもなんで万博をやるの?」とか深~く考えてみた
大阪・関西万博がいよいよ2025年4月13日に開幕します。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに10月13日までの184日間、大阪市の夢洲(ゆめしま)を会場に、世界各国のパビリオンが、多様な文化や最新の情報を発信。160を超える国や国際機関から多くの人が集い、コンサートや多彩なイベントが開催されます。
万博イヤーの2025年。METIジャーナルオンラインも万博の魅力を様々な角度から紹介していきます。初回は、万博担当の浦上健一朗・経済産業省大臣官房審議官を、あの「ふしぎな生き物」が、ふらりと訪ねてきた模様をリポートします。この2人、意外と話が合ったようで、話題はいつしか万博と人類の未来を巡る「深~い話」に……。
聞き手:浦上健一朗・経済産業省大臣官房審議官(国際博覧会担当)
いっぱい旅して、元気いっぱい! 準備バッチリ!
―――ある晴れた師走の昼下がり。経済産業省別館の会議室で椅子に腰かけた役人がひとり。そこに、ドアが開き、「ふしぎな生き物」が入ってくる。
ミャクミャク(以下、ミャク) うらさん(浦上のこと)、元気?
うら ミャクミャク? うわー、本物だ。動いてる!
ミャク はじめまして! ミャクミャクです。大阪から来たよ。
うら 会いたかったよ~。昨年の開幕500日前イベントで初めて言葉を覚えたばかりというのに、すっかり大人っぽくなって・・・(うるうる)。本日は、経済産業省にまで足を運んでくれて、ありがとう。最近は、日本全国を飛び回るだけでなく、海外でも引っ張りだこで、大活躍だね。
ミャク そうなんだよ。知らない場所、いっぱい旅するのは、とってもたのしいよ~
うら 年が明けて、ついに2025年は「万博イヤー」。いよいよ4月13日から大阪・関西万博が開幕だね。日本開催は「愛・地球博」以来、実に20年ぶり。生涯に一度あるか二度あるか、という壮大な一大国際イベントがもうすぐそこまで来ているわけだけど、公式キャラクターとして、準備はどうかな?
ミャク バッチリだよ! ミャクミャクは、いつでも元気いっぱい。このまえ、モリゾーとキッコロ(注:愛・地球博の公式キャラクタ-)からバトンを受け取ったよ。万博、楽しみだよね。ワクワク!
うら おぉ、頼もしい!
ミャク そういえば、「けいさんしょう」って、万博とどういう関係があるの??
うら よくぞ訊いてくれました! 経済産業省は、日本を元気にする役所。世界の人たちがたくさん集まる万博で、いろいろなアイデアを出し合いながら、日本と世界を元気にするのも仕事のうち。万博が盛り上がるよう、一緒に頑張ろう!
ミャク (右手を突き上げて)おー。
世界との「偶然の出会い」が生まれるって大事
うら 全国各地を回っているといろいろな質問を受けると思うけど、「そもそも、なんで万博をやるの?」とか、「オンラインでいつでもどこでも簡単につながれてしまう時代に、なんでわざわざリアルな場を作ろうとするの?」とか、聞かれたりしない?
ミャク うん、よく聞かれるよ。
うら オンラインで簡単につながれるからこそ、逆に、リアルな出会いが大事になる、ていう面はあるんじゃないかな。コロナ禍で社員全員を終日テレワークとしていた会社も、リアル出勤へ戻そうという動きがあったように。
ミャク ミャクミャクは、いつも、たくさんの人とふれあっているよ。大切なのは、ずばり、「セレンディピティ」だね!・・・って、大阪のともだちが言ってた(←ここだけ小声)。
うら 「偶然の出会い」を作るってことだね。万博は、人や知恵が出会って、世界を良くする何かを生み出す場所。なにせ160を越える国や国際機関から、たくさんの人が集まって、いろいろなアイデアや価値観をぶつけ合うわけで。そこから、世界をより良くする新しいアイデアが生まれ、試され、広がっていくんじゃないかな。
ミャク 知らないひと。知らない文化。知らない考え。もっともっと、出会ってほしいな~。ミャクミャクも、もっと知りたいな。
うら 「世界の中の日本」であるはずなのに、コロナ禍後も、日本人には、どこか内向きの気持ちが染み付いたままという印象があって。円安で海外旅行にも気軽に行けないし。そんな今だからこそ、万博会場での「ミニ国際周遊旅行」はとっても価値があるはず。今回の万博会場には、各国が独自に設計・建設したパビリオンが50以上も立ち並ぶのが特徴で、多彩な建物のデザインを見ているだけでも、各国の文化を表現しようという意欲が溢れ出ていることが分かるよね。レストランを併設するところも多いから、世界の食文化も堪能できるよ。
ミャク ひろ―い世界のたくさんの文化やおいしいものにであえるの、たのしみだね!
「万博の目玉」がどれか一つなんて…
うら 「今回の万博の目玉は何か?」という質問もよく訊かれるんじゃないかな。ミャクミャクは、何だと思う?
ミャク ぜんぶ。面白いこと楽しいこと満載で、どれかひとつなんて、選べないよ~。
うら だよね~(笑)。1970年の万博は、アポロ12号が採取した「月の石」とか、岡本太郎さんの「太陽の塔」とか、シンプルに分かりやすい「目玉」と呼べるものがあったけれど、今回は「これこそがthe目玉」というものは無い、と言い切っちゃった方が誤解を生まないと思ってるんだ。もちろん、iPS細胞で作製された脈々と拍動する人工心臓も、火星から数万年以上前に飛来した奇跡の詰まった「火星の石」も、現代の「お宝」と言える貴重な展示だけど、万博で見られるもの、体験できるものは、一つや二つの物で代表して語らせるのは、ちょっと無理がある。
CO2を抑制する技術が社会実装されてカーボンニュートラルが実現した未来社会。ロボットとAI技術が融合したデジタル社会のその先。未来のヘルスケア技術で病や障がいが克服された世の中。万博会場は、そうした多種多様の社会課題が解決されていく、たくさんの未来を先行体験できる「未来社会のショーケース」。だから「今回の万博のエースは、これ」と決めつけたくない。会場では、訪れる人それぞれにとってのかけがえのない唯一無二の万博体験が見つかるはずだから。
ミャク 楽しみ。大屋根リングは、すごい。夕日や夜景がきれいに見えるよ。
うら 一周2キロの大屋根リングは、世界最大の木造建築。上に登って明石海峡や会場を見下ろしても、清水寺の舞台を彷彿させる美しい木組みの構造を下から見上げても、大迫力だよね。夕暮れ時には、光と音とドローンのショーが毎日開催予定。これだけでも来場の価値ありだね。
ミャク パビリオンも、イベントも、楽しみがたくさんあるよ。
うら 万博といえば、パビリオン。海外パビリオンだけじゃなく、企業や政府・自治体の多彩なパビリオンがあって、目移りしちゃうよね。8人のプロデューサーが作るシグネチャー・パビリオンは、「生命の本質とは?」「人間はどう変わっていく?」という深淵な問いに向き合う、世界にここだけでしか体験できない、最先端の8つの実験空間。命が脅かされ、命がテクノロジーで拡張できるという人類史の分岐点で、「いのちの輝き」をテーマにしたことはとってもタイムリーだよね。
ミャク ちょっと難しいけど、未来を想像して、いろいろ考えるのは、楽しいことだね。
いろんな国のイベントが目白押し。出会いにワクワク!
うら 万博のもう一つの柱は、いろいろなところで同時多発的に実施される様々なイベント。開催期間中は、ほぼ毎日がどこかの国のナショナルデーなので、会場中で、その国にちなんだパレードやイベントをやっている。好きな国がある人は、ナショナルデーの日を選んで来場することをオススメしたいし、ふらっと見知らぬ国のパビリオンに立ち寄ってみるのも一興だよ。それから、開幕日のadoさんのコンサートやら、日本のアニメや漫画のコンテンツ、音楽コンサート、日本各地の地域の魅力や伝統文化の体験… とにかく、イベントは数え切れないくらい予定され、すごく盛り上がると思うな。
自分の内側からどういう感情が湧いてくるかといったことも含めて、「偶然の出会い」を楽しんでみてもらいたいなぁ。
ミャク 世界のおまつり、だね。
うら そのとおり。万博期間中は、ナショナルデーに合わせて、海外から民間企業の人たちも、たくさん日本に訪れる予定。日本企業と「ビジネスやろうよ」っていう人たちを結びつけるため、いろいろなサポートも政府としてやっていくよ。
ミャク ビジネスを盛り上げるのも、だいじ。未来との出会いも、世界との出会いも、とってもワクワク。
うら 参加各国の代表が集まる会議をやっていても、万博を盛り上げようという熱気がすごいんだ。万博の場での出会いが生んだ様々なアイデアが広がり、世界をより良く変えていく。そういうレガシーをたくさん作っていきたいね。開幕まであとわずか。一緒に盛り上げていこう。
ミャク がんばろう!
(「はい、収録ここまでです、お疲れさまでした~」とのスタッフの声。)
うら ミャクミャク、今日は、いろいろお話できて、とっても楽しかった。ありがとう。ところで、ずっと疑問に思っていたことを聞いちゃっていいかな? ちょっと不躾だけど、ミャクミャクって、そもそもどういう存在なんだっけ? 総理大臣官邸のエントランスに飾ってある説明文には、「ずっと「変わりたい」と願っていた「細胞」が「清い水」と出会って生まれた、ふしぎな生き物」って書いてあるけど…
ミャク そのとおり、だよ。
うら 「なりたい自分になる—そう願いながら姿を変え、人間をまねたのが今のすがただ」ともあるけど、ということは、ミャクミャクは人間にあこがれて、意思をもってこの姿をしている、ってことだよね。
ミャク そうだよ。人間も生き物もみんなともだち、幸せ。
うら どこかから来た細胞が、なすべきことを記憶していて、人間の形をしている。そして、いま、幸せを語りさえしている。うーむ。ミャクミャクの存在そのものに、どこか詩的な響きがあるよね。先日亡くなった谷川俊太郎さんの詩に、こうしたテーマを描いたものがあった気がするけど。
(スマホ📱を取り出し、その場で検索)あった、これこれ。『芝生』だ。この詩、まさにミャクミャクのことみたいだって思ったんだけど、どうかな・・・あれ、ミャクミャク、どこにいったの?
(気付くと、ミャクミャクは部屋からいなくなっていた。)
うら まだまだ聞きたいことはあったんだけどなぁ…。万博についていろいろ話ができたから、よしとするか。